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片方の指の半分が
いつまでもいつまでも濡れている
むらさきの
二重の光
そっと頁の上をおさえる
小さなけものの前足が
沼のような暗さを湛え
土を少しだけ歪めている
....
その時、理由(いわれ)のない衝撃に狂うわたしのために
あらゆる風景が恐怖の紐で吊るされていた
だが、わたしは風景の風景たらしめる骨格なのだ
わたしの印象なら壁にそってどこまでも落ちていった
....
強く握るまぶたから
銀の行方が放たれる
透る 透る
遅い光
縦の雷雲
縦の午後
器を追われた
鉱の音
夜を向いて咲く花が
幾つも冬の秘名をこぼし
径 ....
川をのぞきこむ灯が
映る自身から目をそらし
むこう岸を照らし
河口を見つめる
重なる橋が落とす影
金属の網が降らす色
霧へ 霧へ
傾く夜
雨上がりの ....
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人は他人無しには存在できない
自分だけで自立しているように見えて
他人の評価を気にして生きている
自分の生き方も定まらず自信を失 ....
土を穿つ夜の影
かたちにかたちを閉ざす影
底の見えない
水のような影
径をふちどる暗い静脈
聞こえないものを包みながら
風から風を奪いながら
ゆらゆらとゆらゆ ....
白い建物 白い迷路
扉も天井もない部屋で
頻繁に行われる白い取引
誰も出口を
知りたがらない
{画像=140526015311.jpg}
サラリーマンとして
骨を埋めるところを探していた
降り積もった雪の中から
首を出す古木のように
少しの隙間を残して
雪に埋まり
冷 ....
あたいは泣かない
全身全霊をもって感情を押し殺す
空が泣くまで、ぜったい泣いてやらない
コーヒーカップを持ち上げただけで走る衝撃
要はこんな時にも陰で働いていたのか?
くしゃみでもしようものなら
まるで電気ショック
要は体中に回線を這わせて
あらゆる身体活動を統率していたの ....
華やかな街が
あなたの眼のなかで壊れていく
そのなかでだけ それは 死なされていく
小さく硬いなにかが振り回されている
大きく脆いなにかが燃やされている
咲き ....
億年の
静かな回廊に光が満ちる
瞬間を孕んだ風が吹き渡る緑野
なにか山巓を降りてくるものを待つ
待つあいだにも自分の意志とか
わからないものに軽く触っている
風化した海図では
....
小林峠の近くで
狐が轢かれて死んでいた
珍しいことではない
狐も 狸も 猫だって
だけど道路の端の方で
轢かれたばかりらしく
まだ そのままの姿で
顏だけが歪んで血まみれで
瞬間の ....
止まぬ言葉が
ちりぢりに降り
器からこぼれ
鳴りつづけている
瞳の痛みが
舌を浮かし
別の舌をもとめさせる
細く小さく
なぞるように
厚い泡が水面に浮 ....
そんなに力を入れなくとも
自然につむればいいのだから
おまえはおまえの片目くらいは
ちゃんと面倒みなきゃならない
病みながら旅する道にたんぼぽ咲いている
ふたたびが
ふたたびをくりかえし
起こる風が
花を揺らす
ふと 指が
虫の羽の陰をすぎる
そのあいだは
切り落とされたように感覚が無い
季節を剥がし ....
街を知らず
けだものを知らず
街という名の
けだものと交わる
汚されているのではなく
汚しているのだ
尾の根元まで
いま
こうしているあいだにも
....
下を向いて
話していた時の顔が
他人のような顔に思えて
それが辛いのに その時は笑っていた
笑ったことが一番辛かった
日々 からっぽになっていく
なぜかそんなふうに感じている
か ....
ノアの方舟に穴あけている
雨から出て不味いタバコの煙
ほんの少しの
夜のふくらみ
匂いの粉が
ふちどるかたち
奥に向かい
手をひらく
ひとつは土に
ひとつは空に
夜のうろこ
夜をすぎ
行方はひかり
....
ぎっしりとデスクの並んだ職場で、社員たちは互いに協力しながらてんでに仕事をしていた。データを入力したり、書類を作成したり、文書を印刷したり、メールを確認したり、同僚と打ち合わせたり。私は職 ....
ふにふにヘッドに ぷにぷにボディー
世界平和は無理だけど
守ってみせるぜ 家内安全 どすこいどすこい
生産工場などで適用されてきた
トヨタ生産方式を
日々の生活に適用したらどうなるのか
ジャストインタイムで
買いだめなどはなるべくせず
必要なものを現在の必要に応じて調達する
無在庫主義 ....
青く青く山が迷っている
くちびるに触れる鈴の粉
遠雷 器
雫と滴が
すれちがう径
ひとつのなかの無は増して
響きはさらに高くなる
窓の鉛 壁の銀
水の淵を照らす粉
分かれる前の ....
隔離されなければならない 家族から 仲間から 社会から 世界から その場を乱したりするわけではなく 逆にその場に適合しすぎて その場を栄えさせ過ぎてしまうから この社会の網の目が勢いよく不気味に成長し ....
楽しさは
長い時の間に流れていく
今が濃縮し
一つの一つの細かい瞬間を 忘れさせる
本当に明日になったらまた会うことになるんだろうか
不信な音が鳴っているのに小さく耳を塞いだ
まだまだ ....
横浜の姉に電話する。
料理や家事のことでわからないことがあると
姉にきいてみるのだが。
姉もだんだん逝った母に似て
話が長くなってきつつあるようだ。
煮ると焼くしかない僕のレパートリ ....
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