すべてのおすすめ
黒い羽が
夕刻をはたいた
振り向くことなく
飛び去った
傷は付かなかった
あたたかさは奪われなかった
家に至る
二本の径
選ぶまでもない戸惑いのなか ....
百貨店の前で
手相を見ているおばちゃんがいる
人の手の皺の数に
虫眼鏡を当てて
その人の人生まで
当ててしまうのだそうだ
いっぺんだけ
占いの店に行ったことがある
女とだ
....
荒地の隅の
暗がりの
花火のように遠い花
すぐに見えなくなる
上を向いた眼
何も映さない眼
見えない何かが
のぞきこんでは過ぎてゆく
うたがひとつ
消 ....
虫と花を行き来する羽
雪に重なることなく降りつづき
ひとりの食卓に積もりゆく
線の笑みに埋もれる部屋
まばたきのはざまの火と光
冬からあふれる冬の息
五人の ....
夜が飛ぶという
鳥が飛ぶという
何も飛ばぬという
石の灯だという
鉄柵の窓だという
誰も知らぬという
紙に埋もれた言葉を
砂に埋もれた言葉を
....
一月の波を 波を照らす陽を
信じぬほうがよい
言葉への畏れを知らずに言葉を書くものの喉を
すべてすべて 掻き切ろうとしているのだから
....
霧のなかの火を取り
むらさきの足跡を照らす
海の風が運ぶ白
夜へ夜へ向かう径
白壁に描かれた窓も
やがて異なる白に消えてゆく
虹が折りたたまれ 灰曇になり
夜 ....
だれもいない街を
自転車で帰ってくる
僕は寒かった
親もおらず 少し寂しい
明日からまた
食肉加工工場で
働かなければならないわけだが
なかなか 仕事は辛かった
この休みで得ら ....
世界がひとつの終末へ向かって集約されて往く時代
世界はひとりの詩人の透明多面性により屈折分散する
時空を超えた鳥瞰図は迷える自我を慰めても
空腹に泣く赤子ひとり救えはしない
言葉は時に力 ....
人指し指
中指の息
硝子の欠片
それぞれの目に
異なる子のうた
うなじから背へ
ひろがる岩
空へ還る痛み
怒り 苛立ち
羽から心へ過ぎてゆくふるえ
....
あなたのポッケに手をすべりこませると
もれなくあなたの手もついてくる
ぱんぱん 幸せ ぱんぱん
海のなかの
窪みはあふれる
浪は押し寄せ
押し寄せ 吹き上げ
幾度も幾度も
空に溺れる
雨が雨の甲を握り
指の隙間を光に満たす
重なる雨 震える雨
雨の上 ....
二つの都市
二つの身体
帆船は消え去り
影が残る
壁だけが
いつまでも熱い
切っても切っても
生えてくる爪の羽
ぬくもりの終わり
雨の終わり
寒さの培養 ....
鉄が踊る
影は遅れる
枝が踊る
血を流す
花のような葉の
血を流す
器からあふれ出る熱
頬と野外の違いから
不明の土の窪みから
壁と炎が立ち上がるのを見る
....
絵の具のにおいの
血の味の白湯に
夜を映して呑みつづけている
光の奥にあるものに
触れたとたんに移動する
人のものではない矜持がある
熱すぎて近づけない
翼と ....
扉をあけると影が廻る
壁を舐める火が径を揺らす
空が巡り 落ちてゆく場所
行方と行方が重なる場所
冬の帽子
両腕をひろげ
花を呼んだ
名前ではなく
かた ....
その壱
1(1)……大きな段ボール紙を用意する
(2)……段ボール紙を壁に立て掛ける
壁に立て掛けたら絵の具を用意する
(3)絵の具を取り出したらまずその上を黒で適当に ....
洪水の後の濁った水に
どこからか虹がそそがれる
十一月の坂を
十一月の海を
去ってゆく影
灯りのはざま
肺の宇宙
咳き込むたびに
色を失くす径
焦 ....
弱い光のひとつひとつが
羽になり また花になり
触れることなく消えてゆくとき
熱を終えた鉄のような
緑の音を降らすとき
歪んだ金に ふちどられた声
ほどけひろが ....
真夜中の
狭い径で
首をまわし
何事かを騙りながら
空の明るさを
隠す四ッ足
日々の渇き
別の轍
水に堕ちて
再び昇る目
静止したものが
見えない目
....
枝の影
蜘蛛の影
午後から夜への
庭を噛む影
わずかに斜めの
旅をしてきた
骨に沈む目の
まばたきを数えた
うるおいを はばたきを
置き去りにして ....
「在宅のみとり講習会」という見出しが眼にはいった時
「のみとり?」と思ってしまった
ペットの蚤でも発生しているんだろうか・・と
普通に思ってしまった
記事をよく読むと
「在宅のみとりに必要な ....
雨のなかの無言
港の夜の終わり
藻の緑の昼と午後
霧は凍る
岸を摑む
埠頭の音が曇に映り
やがて粉と降りそそぎ
常に宙に消えてゆく
影さえ土に ....
音のにおいが喉を荒らす
けして呑み干しはせぬ光
壁を越える羽
耳元で話しかけられる
洪水の日のはじまり
砂に突き立てられた羽
あらゆる風に揺るがぬ羽
進めば進むほ ....
器の底の浅い水
光が光を斬る暮れの揺れ
冷たく置かれた広い空地
誰もいない空と空
手を離し
曇は落ち
再び昇る
撲つ音 撲つ音
光の端の
花ちらす音
....
恋して 弱くなりました
愛して 強くなりました
向き合って 真実を得ました
母親らしき人が秋を告げた
秋の町は、
くれないのさざなみ
思い出はずっと乾いていた
ポケットのなかの木の葉
あのひとからはもらい損ねた
微笑みの匂いがする
きみと帰る ....
空に向かって融けてゆく
指のかたちの切る花
切る花
空に向かってかがやく花
鏡に映る 名前の無いもの
欲めると同時に満たされるもの
すぐに消える言葉の背を
長い長 ....
なにが入っていたのやら
わからないのだけれど
綺麗な包装紙や箱
おふくろが
いただきものの
高島屋なんかの包装紙なんぞを
ていねいに折ってあるものが
押し入れの隅からときどき ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157