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輪と輪
夜のみどりの音がしている
鳴らない鈴のなかを
くぐってゆく
月の満ち欠け
柱の内周
どこまでも
砂の色
光は降りて
枝を揺らす
土につく間に ....
いつも七時二十四分発の各駅停車
難波行き二両目のいつもの扉の列で
君を待つのがボクの日課だった
布施までの短い時間の満員電車の距離が
ドキドキする未来の始まりだと信じて
アルバイトが早く ....
窓を開けて
春の風が入ってきて
ピアノの鍵盤ひとつ
押して消えてく
そんな嘘のような
ことがあったなら
それはきっと君の
優しさのせい
窓を開けて
流れ星が入って ....
きみが
見送りつづけたあのバスを
撮ることなんて
出来なかったけど
きみが
待ちつづけた
あのバス停とベンチとを
ぼくは撮ったよ
現像なんかしないけど
捨てたりもしな ....
全部全部ネットの上にあるなんて思うのは大間違いだ
本当に伝えたいことはこんな画面の中にはないのだ
夕暮れの空の色がグラディエーションで変わっていく美しさを
言葉で表現することはどだい無理なのだ
....
蝉の鳴き声が止んで
鬼ごっこしていた子供達が
みんな消えてしまった
木陰の小さな窪みには風が休んでいて
小さなため息を一つついている
じっと息を潜めていると
いつの間にか違う世界に
....
あの日、きみと
秘密の場所に埋めた
玩具のクハ103は
地下鉄になって
今ごろどの辺りを
走っているのだろう
お腹の弱いきみと
意気地なしのぼく
二人を乗せたままで
....
きょうもいくつか裏切られ
それでもきょうは平穏だった
この夏スーツで通した俺じゃないか
たとえ悪意があろうとも
悪気はないんだ仕方がないんだ
日々の試されに
逃げず ....
咲いたあとのしなびたアサガオ
ひらひらとゆれる紫のスカート
ただ今はパンをたべる
わたしは夜が明けたのでたべる
すー とする空気
誰かのたんじょうび
そのことばのままに
手を ....
悪い癖だと叱られた
食べてすぐ横になると牛になると言われたが
病人は食べてすぐ横になっても
牛にはならなかった
子ども心に不思議に思った
病人は注射を打っているか ....
幾世紀もの家族がつながった半島の先端
岬はいつもそこにあって
空と海の高さを測り
見知らぬ明日の水平線を描いてきた
海を渉る鳥たちのために
半島に帰る人びとのために
灯りの落ちた ....
君がまだ小さい頃
仕事が一段落すると
すこし秋めいた アスファルトを歩いたっけ
まだ うまく喋れない君の
小さな手を引きながら
やっと歩くことのできる君にあわせ
二人で歩いていた
あたり ....
思い返せば、
みじかい言葉でした
苛立ちも
かげぐちも
願いでさえも
今となっては
レンズのない顕微鏡のような
役立たない、とは
言わないけれど
言えないけれ ....
可視化したものだけを残して、後は全部切り捨て、無常という薄い備えを敷いて重なろうとしている。男と女は、言葉ではなく、重ねた肌の温もりでもなく、濡れた余韻でもなく、汗ばむほどに不安なのだ。
二 ....
止まっている
と言われた
アルバムの狭間で色褪せていく夕日だ
と言われた
食べかけたパスタの山麓で
僕は唇を噛み締めた
進め!
滞っている
と言われた
だまし絵の ....
この頃はパソコンを筆の代わりにしている
指先だけが大きく成長して脳の一部は退化してしまったが
それでも老いの防止にはなるからと
漢字などの変換機能に思考の一部を委ねている
....
ろうそくの寿命を
保たせたいのなら
使わないこと
点けても
すぐ消すこと
大事に
大事に
しているうちに
なくしてしまう
こともある
けれど
(おまえは
....
秋刀魚の焼く匂いに誘われて野良猫がやってきて
こんにちはと挨拶するわけではないのですが
いつの間にか油ののった秋刀魚を口一杯に頬張って
一緒に秋の味覚を楽しんだものです
七輪という魔法 ....
か弱いものでも生きてゆける
それが人間らしさってこと
それなのに時には誰かを押しのけては前に進み出て
この一歩が生死を分けるのよね
なんて言い訳をする
※
世の中は悲し ....
夕食の支度をする
そう言って彼女は
地下鉄に乗り込み
買い物に出かける
何となく僕は
ビールが飲みたくて
反対のホームから
地下鉄に乗る
笑っている人
泣いている ....
それを動かせば
すべてが動く
山の裏の光
みどりの
光
冷たい鉱
白は触れる
空とまばたき
つぶらな音
獣を追う声
壁に消える背
夜の径を
透る ....
描かなくなった人の家
しあわせな闇
そこで良い人は
良くなってゆく
記憶に刺され
死にながら歩く
美しいとは
死んでも言わない
近づくと冬
離れると冬 ....
人の死が一層悲しくなる季節がやってきた
他人には聴こえない声が生まれてくる
とすれば 私は私の記憶に疑心を残したまま
季節を飛び越えなくてはならない
夏が終わって秋が始まるという一小節は
....
あなたに
似合う季節は
どれとは言いがたいので
あなたへおくる言葉はすべて
どうやらいまも
なりゆき
です
探しものは箱の中
箱という名に閉じこめられた
とても ....
あまり器用ではない指先で黄昏時の風景を繕い始めると
粗野な一日が少しずつ整理されて見え隠れしてきます
落穂拾いのように身を屈めた姿勢は屈折した姿 ....
ほら
やわらかな終わりがきたよ
やさしい
天使の顔をして
私は
急に思うのだ
三途の川の水面にも
低く高く
トンボの群れが
乾いた
秋を告げるだろうか
ワシは
車を ....
くもらぬ声で
ささやく物語が、愛
結末は
かなしくても
信じるしかなかった
瞬きの間が、愛
傷んだものは
そのままにしておくことが、愛
差しのべる手も、愛
叫ぼう ....
僕の自転車が
僕から離れて
砂漠を横断する
暑くないように
ハンドルに括りつけておいた
涼しい模様の日傘を
ボロボロにして
それでも自転車は
たった一台で
砂漠を横断し続 ....
前に出る
その一歩に躊躇している
エスカレータは音もなく上ってくる
そして何事もなかったように
音もなく下りていく
その一瞬だけ誰にも気づかれず
時間の中に取り残されていく
どんと老いの ....
友へ
こころを寄せて
手紙をしたためています
わたしのうしろで書かれないものたちが
茶化して耳をくすぐります
フェルメールの筆は光の代用
ずっと見ていたかったのに
わたしは弁明しなけ ....
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