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すべてを失ったはずだった
あれから家に辿りつくまで幾度と無く転んでしまい
死装束にと亡き父に誂えてもらったリクルートスーツ着てきたのに
あちこちに鍵裂きを作ってしまった
死への船出がこ ....
むらさき
むらさき
光の仕草へ
近づく空
歩いてわたる
歩いてわたる
うつぶせの鏡の群れが浮かぶ水
背から背へ 背から背へ
城壁の角
影が空を仰ぎ ....
コップのなかで日常がほほえんだ
ひとときのあいだ
波紋をひろげて
夏の窓辺に
コップのなかで生きる
ちょっとした雨降りにあふれだし
3、4日日照りがつづくと乾いてしまう
コップのなか ....
はざまから土
降りおりる銀
曲がるたびに
冬を巻く道
緑の雨と肋骨の森
作りかけのまま棄てられた街
埋め立て地の午後
低い低い音のつらなり
熱を持たない ....
終わりの淵
よろこびの帽子
光を落とせ
光を下ろせ
滴が降り
葉になり 虫になり
家を巡り
静かに去りゆく声になり
大きく碧いまぶたの浪が
ひらく ....
舌に 歯に
左目の下に 右胸に
一本の糸が離れずに居り
時々隠れ 時々そよぐ
蝶のかたちの毒が来て
糸の行方を告げてゆく
うたのように終わりはじまり
忘れた言 ....
木漏れ陽や影が
昼の星を見ている
羽は
羽から目をそらす
家の裏の沼には
家が沈んでいる
建つものもなく
枠は増える
翳りが
....
燈火のなかに小さな樹があり
燃えることなく
夜を緑に染めている
下からの光 螺旋の影が
まるいかたちを
ゆうるりとつかみ
ゆうるりと離し
くりかえす
耳 ....
二十階建てのアイスが
倒れる夢を見た
だからあなたは
二十分早く出かけなければならない
たくさんの小さな笑顔たちと一緒に
もうひとつのアイスを建てるために
....
途切れた道のその先
坂を上りきった場所の空
曲がり角をすぎてゆく陽
曇と 曇ではないものの午後
暗がりのなかの道標が
なかば暗がりになりながら
暗がりの歩み ....
こがねに遠のくものを見ていた
忘れたままの息がひとつ
足元にかがやき 沈んでいった
冷たいまぼろしが 羽をひろげた
蝶は火のなかに火をそそいでいた
空腹への応 ....
太陽の熱の残る鉄
燃えつづける林を抜け
蜘蛛を殺すことなしに
顔を覆う巣をはらう
日々を
日々を生きるということ
....
地から海へ
多くの雨が歩いてゆく
手足は重なり
音を残す
影降る道に映る姿
沈む光の過去の行き先
まいあがるもの 追う手から
昼の星のように逃れて
....
夢の雨がまだ眼前に在り
音や光をふちどっている
雨のなかの陽 ひとつをひとつに
注ぎ込む陽
空の器械 地の器械
水の外から 降り来る声
緑にふくれ ....
空を鼓のように張り
鳥は屋根を踏み鳴らす
糖蜜の文字
光の名前
爪と半球
蛇行と水源
凍った川をすぎる雨
降る無音 降る無音
午後の光がゆっくり話す ....
割られようとしていた
ひとつの陶器を盗み
よくわからない生きものを大量に殺し
自分で自分の頭皮を傷つけ
蜘蛛をひとり救った
今日も自分は
わがままだった
....
背後の鏡を
窓を割りたい
何かが映る
ただそのことが許せないから
頭のうしろのお偉方を
何度も何度も叩いている
右で左で
平手で拳で
目の前に浮かぶひと ....
降る花 来る花
激しく重なる陽のなかを
昇る道 去る花
むらさきのうた
たどたどしい笑みの端から
午後越える午後 こがねに曲がり
冷たさよりも重く在りながら ....
虹の渦がひとつ
遠くと近く
ふたつの雨を横切った
誰もいない道の終わりに
とめどないものがとまるとき
夜の鴉が一羽増すとき
心は天地の境をひらき
冬のはじ ....
白と黒の路地を進むと
木造の小さな小屋があり
入るとなかでは何十人もの
作業衣を着た婦人たちが
机の前で一心に裁縫をしていた
ふと横を見ると別の入口に
一枚の大きな ....
箪笥と押入れと
鏡台のある部屋で
白髪の老人と決闘した
剣の腕ではかなわないので
ヘアスプレーとオーデコロンを吹きかけ
鏡台の椅子を投げつけた
長い廊下 ....
昇る午後の軌跡には
川のかけらが硬くかがやく
何かが水に降りては飛び去り
音や光を底に残す
冬を作り 夜を作り
誰もいない道を去る
朝の雨を見る
昼の ....
荒んだ目の子が
昼を見ている
風は高い
指は遠い
地にあおむけの空が
上目づかいで地を見つめる
腕ひろげ
見つめる
誰かが見たいと望んだ数だけ
月 ....
草の根元
ひとつかみの声
闇を分ける
指先の青
饐えた氷のにおいがする
ほころび 川岸
小さな小さな穴のむこうに
穴と同じ世界がまたたく
したた ....
言葉に割れる岩道の
ひとつひとつがまたたき並び
空の底へと落ちてゆく
出せずに裂いた手紙のように
曇のほとり
ひとり祈り
この手を焼く火が
この手のみであれ
....
光が花をまね
朝になる
一房一房が
波を追う
雨
丘を昇る霧
向かい合う手
結晶
くちびるの色を
手鏡に塗り
歯は透る{ルビ雷=らい}
透る{ ....
共に在るもの無く
原に立ち
なびいている
夜は赤
骨に収まらない肉
あおむけに 沈む
曇を燃す曇
秘め事の径を解き
川はすぎる
木漏れ ....
草から分かれた空色に
虫は染まり 身じろぎもせず
夜明けの光の逆を見ている
曇りの上の曇りから
水の底の骸へと
緑はさらに緑に降りつむ
闇のなかに闇 ....
黄色くてでかいストローハットを
ふたりでひとつかぶって
お話しをしよう
ほら今は青空だって見てない
ひまわりだって のぞきこまない
僕たちはわかすぎるから
明日までの宿題も
占いとか ....
ふりかえるこども
うれしいこども
こそばゆいこども
うたうこども
己れの行方
曇の行方
同じこども
雪の手のこども
夏には夏の
陰のこども
....
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