「世界中が雨だね」って
きみが言うから
手相占いみたいに
てのひらを差し出して
白いサンダルを気にして
ひとつの傘でふたりで濡れながら
「世界中が雨だね」って
きみが言うから
....
どの君も覚えていよう桟橋にやけに激しい風が吹いてる
僕だけを乗せぬ列車のわすれものやけに激しい風が吹いてる
無名指で前髪を除けきみは言う「やけに激しい風が吹いてる」 ....
傘をさす手を奪われるほど
僕は何かを持ちすぎてはいない
縦書きの雨
カーテンの雨
通話中を知らせる音の雨
改行の雨
鉄柵の雨
液晶に、雨
こんなにも雨にまみれた世界 ....
【閂は開かれる】
閉ざされた記憶の門のかんぬきが
思いがけない方法で開かれることを 私は知った
たとえば 少女の髪にあったリボンが
ほどかれた瞬間に急に大人び
何かを失ったかのような遠い ....
血潮、とノートに書いて貝殻のなかにたしかに海があったと
隣席のヘッドフォンから砂の音が聴き分けられる夏の江ノ電
ふたりで海を見たのは一度 いつまで、と互いに決められないままいた ....
夏、それは
裏とおもてのある季節
裏道はどこへも
繋がってはいない
向日葵、それは
追いかけていた肩甲骨の高さで咲いて
自転車で踏んでしまった蝉の音で枯れた
波、それは
壊れた ....
駆け抜けてしまえないのがもどかしい屋上だった8号館は
まばたきをするたび更新されている影あり春の日は万華鏡
「ガイブセイ?」「うん、外部生。」
かんたんに友がつくれてし ....
気合もろとも
弾ける
空に
バッタとは
よく名付けてくれたものだ
宙に跳ぶ瞬間を
実に巧く音に写しているではないか
気合もろとも
爆ぜる
空に
この細い脚だから
気合 ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=259343
ゆうるりとただゆうるりとそそがれる刃から青とどろく夕べ
五の橋も四の橋もまた傾きぬ異なる生の軋みあう街
壁ひとつ扉のひとつも越えられぬこ ....
淡雪は炎のように降りつもりきみの素肌の灼熱を知る
凍蝶の滑り落ちゆく黒髪にかかる吐息は結晶化して
性愛の天を凌いで伸びる蔓 凌霄花は空にまみれ ....
静かの海
ここはどこまでも静寂な 砂がさらさらと、
乾いた想いを落としていく
初めて出会った日を思い出しては
ナトリウムの大気に
耳をすませる
小さな部屋で聞いた
パステルの紙を走る ....
眠らないバスにのった
眠れないぼくは
あの野性化した雲といっしょに
あかるい夏の海辺をどこへむかっていたのだろう
写真でみただけの
マリアナ諸島の鮮やかなブル ....
発声練習ですと
飛べない鳥が鳴いている
それがまるで哀れにきこえるのは
わたしの中に在る冷酷さです
もしかしたら本当に
飛べない鳥は哀れに鳴いて
飛べないことを嘆いていても
わたしはきっ ....
頂点を仄青く明滅させる三角形が
部屋の片隅に居る
銀のお手玉をしながら
華奢なアルルカンが宙を歩いて過ぎる
星のいくつかが
音符に変わり また戻る
硝子瓶がひとりでに傾き
グ ....
きのう手紙がとどきました。ふるさとのこころの箪笥から。
【前略 私は あなたの本当の母です。あなたは 親に「橋の下でひろってきた」と言われると喜んで、高貴な産まれを夢想するような娘でしたね。卵が先 ....
汗ばんでためらう肌の距離をよみ 計らうようにつよい夕立
ため息を晴天に変え 風鈴のちらりと鳴れば緑濃く揺れ
ひと筋の汗がもたらす扇動に僕の背中は夏より暑く
アジサイは盛りを過ぎて残影をあでやかならずや花の生涯
赤い花ガルシンの書を思いいず夕暮の庭妻の花壇に
色彩と吹きわたる風雀きて心なぐさむ夕暮の家
産まれ生き苦しみそして死んでゆく
たった一行闘病短歌
日赤の病棟入り口掲示板
嘆歌とあって朝顔も書く
これからは口語短歌の詩人です
出来損ないの痛みを堪え
銀色に輝け外科 ....
私がとても遠いのだと思っていた人は
すぐ目の前にありました
なぜならその人は海だったのです
必要とあれば向こうから
そうでなければひいていきます
私がどんなに駿足でも
どれだけ望みを握 ....
そら
おそろしい
しずけさ
ふくらむ
むねに
雷霆ひびき冴えかえる
雲
たれこめて
いずれふって来る
私の上に
見つめあえる
傘は
無用であります
そういったものは
そ ....
今日もまたキミとつなぐ手 昨日とは違ううるおい指のからまり
森の奥 お月さまだけ聴いている 貝をあわせるキミとの唄を
忘れたよ 花を散らせたその罪も キミの瞳の星が許した
「お腹の中 ....
吹く風よ微笑む人の面影よネム絶え間なく船出の風情
朝ごとにアサガオその名に天国を青さに空を映して地上に
花、柘榴。タコさんウィンナ血の味を実に成す前に朱色地に散る
鬼の木は{ルビ ....
わたしたち たぶん
ふたりとも
相手のひくつさを感じるところに
身を置くことが ....
みず玉の瓶のむこうの夕立と 風をとおした君の目元と
君は右僕は左を濡らしつつ ちいさな傘をでようとはせず
ためいきを午睡の風に結び付け生温いまま季節交わる
水溜りにかがんだ君のう ....
夕方の水が巡って夜前につぼみのたががひとひら外れた
ひとつふたつ互いに互いの花びらが外れてそしてそりかえって咲く
カサブランカ自分で咲いたね信じてはいたけどつぼみに手が出そうだった
....
{引用=頂点はさらに、高さを増す。塔の上に塔を
重ね、そのようにして時代はいつも、賑や
かに葬られていく。足元には、無数のメタ
セコイアが植えられ、手をのばして、空を
仰いでいる。道は、休むこ ....
陽だまりの光をあつめて
手のひらですくうようにしたら
伝わってくる温もりが
静かにあふれていた
あなたはいつも
そんな仕草を当たり前のように
僕に見せてくれる
見えないものを見えるよ ....
どれほどの痛みの上に
咲いてしまうのだろう
あふれるほどきれいに
屈託なくわらう、あなたに恋をした
語彙をふりはらい
あなたに愛を告げる
どんな勇敢な姿になれただろう
わたしはことばを
....
ベットソファ
枕元のくずかごに
ティッシュを捨ててしまったので
熱射病気味のわたしは
ひと晩中、このかおりの
林をさまよう夢の中でした
不器用に明るい下草を踏みしめると
やわらか ....
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