静かの海
月乃助

静かの海
ここはどこまでも静寂な 砂がさらさらと、
乾いた想いを落としていく
初めて出会った日を思い出しては
ナトリウムの大気に
耳をすませる

小さな部屋で聞いた
パステルの紙を走る音
あの頃
未来という言葉が恐くて
満たされていることが、つらかった

この降るほどの星たちの
どれもが願いを背負いながら
生きている
それを一つ、二つと数えては、

36万キロの中空がどうして
こんなにも近くに感じるのは、
テラの残照に目を細めては、見つめる
そこにあるのは、水色に染まる
まっすぐに向かってくる想いのせいかもしれない

正直に伝えたくて
明日がいつものようにやってくるのを
忘れていた
誓っても 言葉など足りないと
私たちはどちらも、46億年もの昔に生まれたはず
その奇跡を信じて良いのなら
二人でいてもひとつだと、約束を交わした

時の海辺に佇み
たった一人を忘れられずにいる
いつか
誕生日さえ 忘れ去る日がくるまで、
その時がやってくるまで

今宵
瞳に映る地球の色が、
それがためにか ここからは、
あまりにも青く、澄み
美しい






自由詩 静かの海 Copyright 月乃助 2010-07-24 05:21:33
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