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アジサイは盛りを過ぎて残影をあでやかならずや花の生涯
赤い花ガルシンの書を思いいず夕暮の庭妻の花壇に
色彩と吹きわたる風雀きて心なぐさむ夕暮の家
月隠れからかう如く蛙鳴く
遠く鳴く蛙の声と麦酒の夜
妻の手が肩を叩きて夏の夜
終日を妻と働きあせを拭く
玄関の椅子に座りて黙すればまた空しさを思いみるなり
鳩の居る庭の紅葉に目を移しわれが空しき鳩なおむなし
雛にえさ与うる鳩の姿にも生きる力を見出さむとしては
日日に緑深まる狭庭辺に今朝は蛙の鳴き声がする
さきほども小雨降りいた表通り人の声して雀飛び交う
グリーグのペール・ギュントを聴きつつも紫陽花の絵をじっと見るとき
また鳩が一声 ....
心より一切の欲消え去りて青き紅葉の葉は揺れており
水無月に外郎を求め与えてし母の眼鏡の顔浮かびくる
さえずりの混じりて聞こゆ玄関の机に田山花袋を読む
赤子ガ洗われているいたいたしく流る湯白い看護婦帽子
道の辺に山椿二輪咲きにけり如月の午後のひとときは過ぐ
立ち上がりふらふらとして考えけり私の信仰死ぬとどうなる
妻がすしを奢 ....
建国の日に初老の夫婦と共ゆきて京洛の地に遊びたり
戦前戦中戦後、家族で暮らしし家今は喫茶店となる
両手に掴めば幼子のごと妻の裸足はほのつめたきかな
水鳥は冷たき水に群つどい湖のほとりの枯れ草の宿
一日を二人過ごして今宵また妻は聖書に読みふけるなり
絵に描くか詩によむか玄関の雲間草可愛ゆく咲く