夏に濡れている
Rin.

夏、それは
裏とおもてのある季節
裏道はどこへも
繋がってはいない

向日葵、それは
追いかけていた肩甲骨の高さで咲いて
自転車で踏んでしまった蝉の音で枯れた

波、それは
壊れたラジオからこぼれて
体内に戻ってゆく

ほたる、それは
無言の挽歌
たましいではなく

絵日記、それは
手紙のようなもの
本当の日記なら
鍵をかけておくのだから

せかい、それは
わたしがいてもいなくても
あおいのだとおもう
ひとり、海をみている

ふうりん、それは
この夏を点景にする
朝顔の鉢、すだれの影、打ち水の虹石塀の角

遠雷、そらの
海鳴りという
短い雨を連れて行く頃

ゆうやけ、それは警鐘
どちらかが先に帰ること
だけは確かである

あつさ、それは
次々にわたしを汚して
やがて雨になる

ありがとう、それで
許される気がしていた
これで最後と思わないまま
夏はゆくのだろう
















自由詩 夏に濡れている Copyright Rin. 2012-08-25 01:59:28
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