海岸で拾った貝の殻。
繋いだ父の手の温もり。
ぽつぽつ交わした言葉の端々が、
青いボトルに詰められている。
隣の茶色い瓶の中には、
初めて隣になった席。
染めるたび明るくなる髪の毛。
友 ....
夜は朝を育む揺りかご
夜のなかで
寝ているのは朝
朝は朝寝坊
夜の寝心地はとてもいい
いつまでも朝が起きないと
いつまでも夜なので
夜は思いきって朝を起こす
朝、起きて
朝、 ....
妻目覚め今朝は咲かずと朝顔が
ゆう暮れのふたりで麦酒の快楽
夜は更けて蟠りなきすずしき日
裾を引きずって階段をのぼる
踊り場がすきなの
どこにもいかない
ちゅうぶらりん
冬と冬の木とさざんかの赤色
窓 窓
手のひらをつけると
とてもつめたい
誰かになって ....
括られた紐は
私を食べて
箱型の実をつける
月光から逃げる為
風が吹いたら
ざあん ざあんと
ちぎれて旅立つ
泡立つ床の波の中
落ちた箱は
或いは開き波を染めて
固く閉じた ....
草海原にて獣とむかいあう。
草色の肌の若者、弓を手にして。
大いなる探索の途上、
もうひとりの自分を見る。
若者は行く、
草海原より、かなたへ。
若者は草海原に
戻ってくるのだろ ....
彼女の身体は垂直の中心線の半分から後、
背中側が透けて見える。
それは実際に透けているからだ
濡れて下がる前髪が呼ぶ、
下がる前髪が濡れて
呼ぶ、声の下がる前髪の濡れ ....
2008年7月5日、小説家の古井由吉さん主催の朗読会に行ってきた。実を言う
とゲストの平出隆さんを一目見るために。3串の現代詩コミュで情報を偶然見
かけて、それで出掛ける一大決心をしたのだった。 ....
夏の日差しがあたしの肉体を削いでいきます
決して痩せるわけでもなく、潤いを蒸発させていくのです
それはあたしだけではなく、すべての老若男女に恵みを与え代償にするのです
....
内に向かって壊れた胸から
水がわずかに滲み出している
うすい陽の声
穴の数の息
草が逆に波打つ
濡れた色になる
夜の風のなか
渇いた音のなか渇きを疑う
....
巻き上がる
泥
揺れる
水草
そんなに
慌てて
逃げなくったっていいじゃぁないか
なんもしやしねぇよ
こっちゃ
お前さんに構ってられる時間なんざないんだ
自意識過剰はや ....
小学生のとき
誰よりも早く、九九を覚えたのは
僕が頑張ったからだ
まわりのみんなが
甘過ぎて吐きそうなラブソングを聴くのは
みんなが単純だからだ
....
うなじの寒さ
ひとつはばたき
去るものひとつ
来るものは無く
風が
糸のようにわずらわしい
抄い 抄いつづけても
言葉は砕け 言葉は消える
さまよい ....
人間は青い空がいつでもそこにあるような気でいるけれどもそれは違う
空はいつも降ってきている
降り続けているのになくなってしまわないのは
絶えず生まれ続けている ....
一滴、こぼれて/少女であったこと/一滴、こぼれて
かつてわたしが少女であったころ
セーラー服のリボンを結ぶときに
いつも
一滴ずつしたたってた
結ぶたび気づかぬうちに
青 ....
原野の指
水と稲妻のあいだの子
空になる 花になる
うたにも うた以上にもなる
鉄の筒を風が通る
鉄の籠を轍が揺する
予兆の上の光が吹かれ
石の路地に鳥となる
....
チリチリ、
チリチリ、
私ヲ通ッテイッタモノ、
出掛ケニ魔除ケノ鈴ヲツケ、
帰レバオ清メノ塩ヲ撒キ、
ソンナ日々ガしばらくハ
続イテ
チリチリ、
チリチリ、
遠ザカル ....
十年前、通っていた英会話学校のパーティで彼は気さくに声をかけてきた。とあるミャンマー人との出会いであった。三十代半ば、日本人よりもやや健康的に焼けた肌をし、そのぶん白い歯が印象に残るその紳士は、人懐っ ....
「世界がもし百人の村だったら」の中で語られている「6人が全世界の富の59%を所有し、その6人ともがアメリカ国籍」という一文を知って以来、その富の定義やその6人の具体的素性などに興味をもった。
....
きみと
きみときみを囲む白い壁と
きみの大層な毛皮がよく見える
首が痛くなるまで星を観測し
今はまだ冬至、これからこうなって
ああなって
こういう風に動いたらあたたかくなるのさ ....
きみがいたところ、そこには
いまでは
言葉がある、
あるはずだった言葉に
ついて、話していた
夜をすぎて、きみはどんどん重くなっていった
この夜は
これまでのどの夜よりも
きみ ....
それいゆは 金ぴかの花をにぎったまま
道草 食べて暮らせば どこにもたどり着かないで済むと言った
それを言うは 他にはもはやだれもいなくなった
世界は枯れてしまった ....
裂いたスカートの行方は
右の親指だけが知っている
布を食卓に磔刑して
右手に
左手に絡めて引き裂く
これが誰かの髪であったら
どんなにかいいだろう
ちりぢりになった悲鳴の
....
{引用=刻む秒針の 大時計の音が気になるので
夜中の階段を昇るのだ
光る猫や人形の目を避けるように
しずかに しずかに 足音たてず
針はとまる
真夜中に僕の亡霊は 音のないダ ....
地球テスト
蓄積、蓄積、一気に出した大地の声
竜門山の断層帯で地球がテストする
恐竜時代からずっと活動していたから
知られていないとか
ただ気付いていないとか
....
真っ白きタイルの床に落したる黒きメガネのこちらを向きぬ
その鏡に映るのは私だが
その姿はあまりにも美しい
十六歳の私は扉を開け
そして二度と戻らなかった
その姿はいまだ保存されているが
その言葉はあまりにも醜い
あざらかな夕映えは
....
闇のなか駆けゆく闇の静寂にもうひとすじの闇が寄り添う
戦友よ焼けつく火花の森を越え君とたどり着きたい場所がある
ふっとうしている
ね
ふっとうしている
で
しょう
ね
ね
ね
木が
そこから
俺のような
声がする
黙るな
それ以上黙るな
息をしてろ
ふう ....
お好きでしょう?
と、高みから言い下ろす、雨の
密かな祈りは
花と花の陰へ、葉と葉の陰へ
しと、しと、黙られてゆく。
紫陽花から立つ水の匂い。
後戻りできない蝸牛の渦巻 ....
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