ギトギトの君を、
ギトギトでヌメヌメの君と、
ギトギトでヌメヌメでベトベトの君が、
好きすぎて近寄りたくない気持ちを
恋と呼んでいいものか悩むから
もう夏だ
私は赤いニットのカットソーを握 ....
恥ずかしい生命
僕はこれから全ての季節を殺しに行く
ようやく開いた花弁を
飛び交う鳥の嘴や羽根を
丁寧に剥ぎ時には乱暴に毟り取る
地面を這う影を燃やし
壁に貼られたポスターを破り
....
二千十年一月二十一日木曜日執筆開始
その日攝津は午前三時半に目覚めた。少し早過ぎる起床であるが、前日床に就くのが早過ぎたので、丁度良いのだろうと思っている。昨日欠勤してしまったが、今日は出勤出 ....
こんにゃくはふと
ひとのからだの中を流れてみた
あたたかく
なるたけさらさらの血になって
それはとても
こんにゃくいち
もとはといえば
こんにゃくは食べ物なのだが
焼きものや揚 ....
あかい花、血の滲みただかなしくて
唇ぬすみ逃げる夕焼け
あかい花、きれいだねってつぶやいた
水に落ちればいつか見た夢
あかい花、口にしたなら消えてゆく
....
その建築はどこか役所のような正義風を吹かしている。それでいながらその建築は、人が、その全体を意識の最も深い谷にまでひっかけ、その細部を感情の織りなす水にからめとるとき、その均衡と博愛とを顕わにし、聡 ....
だれの悲しみも
きっと癒せない
アルファベットは知ってはいても
心をうつ
その言葉の意味をわかって
この言葉は生まれないの
だれかのために
うたうことはない
そうだと 言ってしまっ ....
台風の季節は
内川の水かさが増えて
びゅんびゅん橋が流されていく
毎年流されていく
助手席に深く座って
国道11号線のヘッドライトを目で追う
期待や倦怠で満ちた車内を
MJQ ....
死者たちが投げつけてくる
雪片、昨日と
よばれるもの
のように、わたしは遅れ
ている、写真の
写真の写
真のきみ、死者の─
雪片。
息絶えていくものに通じている
雪の
におい、冷光。
きみたちはもう
立っていない、
これまでの歳月、ひとつの
ことばと
それに
つけくわえられるもう
ひとつのことば。 ....
1
「無風を狙って、あの鳥は飛び出した
籠から、あの人の隙を狙って、青空
へ飛んだ。傷付いた羽根で、ぼくは
風を感じる事が出来る。とうめいな
翼で、とうめいな空を、感じること
が ....
疲れた、ああ、疲れたね
誰にも聴こえない会話がぽつり交わされ
冬は足音のひとつも立てずに今年もやってきた
わたしはそれ以上言うこともなく自ずからそのかいなへ身を預ける
呼気や落ち葉 ....
製本工場に着くと
まず掲示板の自分の名札を見た。
忙しい時期は学生のバイトのやつらが
掲示板の前に群がった。
若い女の声と声。
キムラって誰。話したこともないよ。
どう ....
窓の外は真っ暗で、では部屋の中はどうかというと、これまた深淵のような、重力が不自然に働いているような錯覚がおきる場所だった
だからテレビが一日中つきっぱなしで、わたしの視野がますます狭くなる ....
あたしは都会に行ったことがない
友達のえりあしは屈託がなく、溜息は山並みに同化する
おんぼろな校舎の3階からは特に何も見えない
はるか彼方に水平線が5cmほど臨めるが、
手垢だらけの教室内のほ ....
左手の傷癒えし迄一週間疝痛に堪へ消毒をせし
どこか遠くで朝が鳴らされ
どこか向こう側でカーテンが開けられ
窓枠の内側で
いくつもの頽廃が木枯らしに舞う
部屋
ありとあらゆる醜 ....
声とは
思えない、そのような
声。
響き、
沈黙の、
うたえる
歌が、あるのは
むこう、
声じゃない
声、
の
かなたが
電話をかけてきて、
....
きみが
名づけるにいたったもの、反
宿命の、それ
は
繰り返すことができないもののはず
だった、それでも車輪は回る、夜
に、人知れず
帰郷した、きみを運んでいる
もの、それも
....
木漏れ陽や影が
昼の星を見ている
羽は
羽から目をそらす
家の裏の沼には
家が沈んでいる
建つものもなく
枠は増える
翳りが
....
エスペランサ、希望という名の覆輪のピンクの薔薇は超巨大輪
新顔の虫ミニバラを食害中。今度のやつはちょっと嫌いだ。
颯と薫る風を前にして満開はまだといわれても引き返せるか
天高く薔薇肥 ....
(この世界にうまれなかったすべての記号たちに
琥珀色した光りが届いたなら――)
/星が瞬きも忘れて
/死を視ている
世界の空が薄い琥珀のように潤み始めた頃には残された ....
わたしの名はサラ
サラ・リーマン
ミシガン州は
デトロイト
モーターシティ出身の
ドイツ系アメリカ人
日本企業で働いていたの
自動車部品のカンパニー
資材調達がわたしの役目 ....
生まれなかった椅子の名前が
ずっと心の中にある
さやかちゃんとそよこちゃん
椅子を作るひとはいても
椅子を産むひとはいないので
今生、出会ってきた椅子たちの
面影は今も憶えてる
青い ....
まれびとのように
悲しみが訪れるものならば
まれびとのように出迎えて
また送り出すこともできように
けれども海ででもあるかのように
満ちたりひいたりするものなので
月を数えながら今日は ....
踏切をこえて
タバコを買いに行く
徒歩15分のコンビニエンス
ああここは○○君の家だっけ
まだあるのかな
公文の教室
小学校
遊具の数が減っていて
擦り傷つくら ....
この鞄には仕事の道具1(商品見本)が入っています
この鞄には仕事の道具2(料金表)が入っています
この鞄には古い電池が入っています
この鞄には子供の写真が入っています
この鞄には貰った御守りが ....
きみの見るものは
すぐさま
毀されて、光があった、光が
あった、光
ただそれだけが
あった
かみさま ほとけさま
ジーザス・クライスト
わたしは明日退院します。
あなたがたの名前を呼ぶからといって、
今までの人生の懺悔や反省をするつもりは毛頭なく、
わたしが幸せになるこ ....
夢の雨がまだ眼前に在り
音や光をふちどっている
雨のなかの陽 ひとつをひとつに
注ぎ込む陽
空の器械 地の器械
水の外から 降り来る声
緑にふくれ ....
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