あの夏の指は
空き地の夏草で切れ
薄っすら汗滲む指紋にぽつ、と赤く
劇的に熟してゆく果実を携えたように


あの夏の指は
空き地の夏草で切れ
何処にも行かないという約束 ....
七面鳥は醜い
青くなったり赤くなったりしながら
肉瘤を伸ばしたり縮めたりする
肉瘤は強さの象徴
弱そうな雄鳥をみつけては
目一杯に伸ばした肉瘤をみせつけてやる

今夜は久しぶりのお食事会 ....
呼ばれていく
わたしの行く場所は
今はもうない
小さな平屋の家
家々の裏をすり抜けるように駆け抜け
小さなコンクリートの階段を上がると
カラカラと音がするサッシの引き戸
薄いガラスが嵌め ....
炎は水平に走る
午後の郵便物は垂直に落ちていく
右の翼が少し小さい奇形の鳩は斜め四十五度に飛んでいく

それを
観測者は地球上の任意の点Aに立って
ずっと観測し続けている

月をほんの ....
あなたのみみたぶのゆめをみて
そのあとにあたしは
みしらぬ土地にいた
花の咲かない土壌にまみれた
春の匂いのする かわら


あなたはかぜをひいたといって
うすくらいへやで
ゆるやか ....
奇妙な 絵だ
首を くくった
二人が 見つめっている

頭はなく
手足もなく
腹から ヒマワリが 咲いている

私の中での 上官
二人 私の 上司

裏寂れた 絵画展の 主は
 ....
閃光と爆音が果てしなくつづく
長い長い夜だった

終戦前夜の静かな港町に
これが最後とばかりに
ありったけの爆弾が落とされて
夜空はまるで夕焼けのように
真っ赤に染まったという

 ....
編集担当のデスクに、どんどん山が出来ていく
原稿、取材メモ、伝言、領収書、手紙、新聞
未読書類、読んだけど理解できない資料
カロリーメイト、ネクタイ、靴下かたっぽ
煙草のヤニとコーヒーによって ....
俺は「ありがとう」と言った。

朝起きてからずっと目の焦点が合わなくて俺は窓を開けて空は高曇りで
ノーテンキに雀が鳴いていて医者に電話をかけたら予約がいっぱいでど
うしてくれるんだ何か起きたら ....
日本の子供たちの思いやりが込められた
膨大な量の千羽鶴が海を渡った
あばら骨の浮き出た子供たちは
弱々しく 震える手で
ひとつひとつ 千羽鶴を開けた

何も入っていなかった

     ....
サイレン高らかに
救急車が交差点を横滑りしながら
すっ飛んでいく

コンビニの棚には
毎日のように見たこともないお菓子が
現れては消え
三日前に買い逃した新製品のガムは
たぶんもう二度 ....
パラフィンを溶かすセロハン
精液の寒気ハンバーガーサーキットshort-circuit反対者解剖学ショーは油がそれ
を捜すどんなカラー爆発マニアックの午後の昨日の機能停止の気が狂った協会が
剥き ....
ふと気付けば夜の闇
棒のような足を動かし
やっと山から出た

そこには町があった
町は不気味なほど静まりかえっている
町を歩き回ってる時にこんな声が聞こえてくる

「ようこ ....
パクッと食いつく
鼻の下と上唇の間に
何か鋭利な物が貫通したのを
僕は確かに感じるんだ
この水よりも遥に冷い何かを


魚には痛覚神経がないという
心地よく泳いでいてふと目 ....
溺死者は死にたかったの 思想の瀞





歯の痛みわがものとせず皿を噛む

ねむれないひるまを足掻きようもなく

切ればゴミ髪も小指も恋人も

狙われた記憶もなくて行方不明
 ....
その駅のトイレには
便所童が住んでいる

とても疲れて寂しい夜
わたしは酔っ払って
その駅のトイレに寄る

3つある個室の真ん中に入ると
そのうち
両脇から
声が聞こえてくる

 ....
かいつぶり 片目瞑って 飛んで行け

そらにはヒカリ 地には蜘蛛 食われる獣 食わない死人

みんなみんな大きくなった 伸びた顎髭 剃ってみろ

胡瓜の佃煮食べてみる 甘酸っぱくて ....
 
川の向こうに
痛みが待っている
少女の姿をして
けだものの背にもたれて


得られないもののように笑い
届かないもののように立ち
詩わないもののように腕をからめる
 ....
僕はドイツの肉屋の息子
来る日も来る日もホルモン刻み
父ちゃん変態血まみれレバー
逃げた母ちゃん弁護士探す

僕と父ちゃん血まみれ厨房
来る日も来る日もホルモン洗い
排水溝には白いカス
 ....
今夜
おれは冷めたグリーンカレーを
丁寧に温めなおして
ひとり寂しく食べたよ

白い腕輪のことを考えながら
クーラーの効いた部屋で
ビールを飲みながら
グリーンカレーを食べたよ

 ....
雨がしとど降る夕方にさえ
その図書館は
虹のなないろよりも多くの色彩にあふれているのでした

花はバラ色
空は空色
木々は緑

図書館に住む少女たちは
童話の勇気ある少女のように
 ....
「はい、田村さんは最初シュレッダーで書類を裁断していたんです。
 叫び声がしたので見ると、ネクタイが引き込まれていたんです」
「いいえ、そうじゃありません。すぐにシュレッダーは止めたので、
 そ ....
「なになに、なんか書いてあるぞ。えーっと
 まず柵を乗り越えて端まで行き、どれどれ
 身をのり出して下を覗きますと、ふむふむ
 転落しますので、ご注、わーーーー----___...」

   ....
風呂場で、さっき
久しぶりに短くした髪の、切れ端を
洗い流そうと、シャワー浴びてて
思ったの
あなたにはそっちの方を呼んで欲しい
夜の名前みたいで、16くらいから嫌いだったし
周りは親とか ....
じいさんが
あの世へいってからずっと
8ミリを回すと
青鬼が映る
8ミリを映写し
妻や子供との暗い部屋で
(僕だけが斜め下におり)
青鬼を見る
木や鳥居の影などに
七五三だというのに ....
ふりつもる夜の殻が
ふみしめるたび
かわいた音を立てて
砕ける
名前を思い出せない花の香りが
密度を増した湿度となって呼吸を
奪う
夜の果てにたどりつく
手っ取り早い方法は
眠りなの ....
しっぽしっぽしっぽしっぽ

おまえはしっぽ

俺は
おまえの意志に全く従わないそのしっぽを
ぎゅって掴んでやるぜ

しっぽしっぽしっぽしっぽ

おまえはしっぽ
しっぽという名
 ....
駅を出たら
あれあれ
困ったぞ
駅前のコーヒーショップは目一杯
こりゃダメだ
ハイヒール蹴立てて
走れ走れ
歩いて8分の道のり
すぐにバテました
なんでこんなことしちゃったんだろうな ....
左足が捨てられた砂浜
ずっと目を合わせられなかった砂浜
砂浜を演じていた砂浜
腐らない写真を捨てた日
うしろめたさが熱い砂浜

足音が引きずられる地瀝青
焦げた靴にうんざりした人の
叫 ....
私は夏雲のあるこの空に
人差し指を差し込んで
この青空の
その底にある
人肌の群青に触れようとする
そのぬくもりは昔日の
小さなおまえのぬくもりに似て
あわあわと崩れそうにゆれる
いつ ....
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