草よ、伸びよ
我が胸の内に
人々の胸の内に
その幾人もの胸の土壌に
根よ、根よ、根よ、
張りめぐらされよ・・・!
人と人を結ぶ{ルビ縁=えにし}の糸が
誰かに手を差しのべる
....
以前サカキバラ事件があった時、僕はとりたてて驚かなかった。
あれくらいのことは、やらかす可能性のある子はどこにでもいる。
単にやらないだけだ。僕がそう思うのは、いじめられていて、あくまで僕個人の主 ....
触れればずっと鳴りつづく
触れない気持ちがそぞろに歩く
触れるものなどないはずなのに
気づかぬうちに触れはじめている
隣り合うふたつの窓のひとつに
遠い窓の灯りがとど ....
ぱさぱさと干からびて
色褪せてしまった
大学ノートを
赤い爪先で繰りながら
ため息ひとつ
セピア色と呼べば
聞こえはいいのだけど
少女じみた丸文字の
拙い言葉の羅列が苦 ....
おしまいのひ
がやってきた
おきにいりのふくをきて
しっかりごはんをたべて
にゅうねんにはをみがいて
あたらしいくつをはいて
いってきます
そとへでた
きもちのいいかぜが
ふくた ....
{引用=
ゆつくりと 首を すげかへて
さみしさ を
あなたと わたくしの合間に横たはる、あの さみしさ を
その一端でも 共感しやう
静かなあなた の 夢見言が
わ ....
その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど
無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき
それは
一群れのシロツ ....
かわがながれて
うみにつくのと
ちがながれて
しんぞうにとどくのと
ちきゅうにみちができて
あたらしいちずができるのと
のうがはったつして
しんけいがどんどん
の ....
海には朽ちるということがない
からだのなかに
列車が走っているって
わけのわからないことを
あなたはいうけれど
誰もいない
きっとあふれだしている ....
第三公園にて
子供たちの遊びがバタリと終わり
夕刻が全く遊びではなくなったころ
通称・動物公園、を
理解できずに正しく第三公園と呼んでいたら
わたしの待ち合わせだけが上手くゆかないまま
わ ....
電車にのって知らない街まで
いってみようって決めた朝
駅の売店で
ジャムパンとコーヒー牛乳を買って
その街を流れる川の土手で食べよう
そこにはきっと汚れたソファーが捨て ....
いまは
稲刈りが済んでも
束ねられない藁束が
三十年ほど前には田んぼの隅に
何十と積まれていて
秋には
それが子どもの遊び
それで基地を作った
床を敷いて
階段を作って
壁を囲んで ....
啓示は 下された
女が 死ぬ
男は 海に
自殺を 抱き
生き続ける
足下には 泥
むらがる 蟻は
蝉と 十字架を
運び
凹凸の激しい
排便
排便 そこには
美などなく
....
老人が早起きして
安心して散歩できる朝であれ
空が明けたら
諸悪はすべて潜みなさい
お巡りさん
おまわりなさい自転車
時速15?で
派出所に
パトロール中なんて看板は
意 ....
サツマイモもらった。ついついさっきまで土の中にいたサツマイモだよ
サツマイモ食べるよ。土から掘り出したばかり、今度は体に入れるよ
サツマイモ、アルファー化した澱粉の色かな。きれいなレモン色 ....
空からメスがふってきて、私の体の輪郭をふちどった。夜露をのせた草むらに。誰だと思ったら私の友達だった。友達は私の好きだった人を連れて、空で優しく微笑んでいる。その笑みはまるで一等星のように素敵に光って ....
高い雲 低い雲
右からは見えない左雲
おうおうと鳴き
ふうふうと応え
夕暮れに撒かれる苦海の火
ひい ....
その街では
いつも暖かな懐かしい風が吹いていて
まるで中央アメリカの芳醇な空気のよう
勝手知った家のスキャンダルの扉は
決して開けられることはないので
ぼくのトウモロコシはすくすくと育つのだ ....
中央改札を出たら
階段の手前にいくつかの柱がみえる
その陰にぼんやりと
いつも誰かが待っている
少女だったり、サラリーマンだったり
学生服だったり、主婦だったり
日替わりで、何かを ....
立っているだけで構いませんからと
レジ係を頼まれる
お客さんがカウンターにやって来ても
その言葉を忠実に守り立っているだけにする
約束事のように一人また一人と列に並び始める
お弁当コ ....
フットサル
足元で猿
ボールを蹴りながら
猿回しの猿に
回されてますよ俺
舞わされてますよ俺
華麗なステップ
素敵なトラップ
フィット
チーネの味は
忘れました
あなたがいな ....
残暑が、高らかな色彩吐露を
自ら慎みはじめている
少しでもぶり返せばそれは
奇声、とひとことで片付けられる
薬を拒んでも、夏は引いてゆき
もう夏風邪とは呼べない何かと ....
ようなし
声がしたので
いよいよ来たかと覚悟した
用がないなら帰るよと
帰り支度をしたら
洋梨の皮を剥いている
たくさん貰ったから
お裾分けだといいながら
たくさん剥いてくれる
....
男は目を閉じて
叫び 叫び 抱いた
赤く 揺れる
首の無い 身体
男は気づいていないのだ
首が無いことに
生首は泣いていた
泣き声は男の耳に入 ....
「もも」のような人だった
夏の始まり
胃のあたりにひどい痛みを訴えて
青白くやつれていった
食べものの好みが変わって
「ガン」かもしれないと感じた
不意に 人生の何分の一かを失う と思った ....
風
とまっている
港に静かに
笑いと夜がふってくる
ガラス張りの体のなかに
小さな傷跡が
古い子守り歌を
歌っている
明日を懐かしむ
風の歌
稲穂が揺れて
はずかしそうだ
まるで他人行儀な
挨拶で書き始めたのは
あなたの選んだ便箋が
何だか照れ臭く
上目遣いにさせたから
感情を露にせずとも
温かな文となるようしたためたい
そんな課題 ....
ときどき
取られたような気持ちになって
「わたしを返して」
と
思う
または
「わたしを帰して」
かな
ふわふわが
ふわふわに言います
もっと
ふわふわになる
光が光に目をふせ
渦の生まれを見ます
ふたつ
生まれた
ほつれ
ほどかれる指が
からまわりし ....
三日前、
宇宙から眺めた地球は
星屑を散りばめたように
不幸だった
ふと目が覚めた地球は
一滴の涙を流して、訴えかける
「お父さん、お母さん、こんなとこに置いていかないで」
知生 ....
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