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バス停まりエンジン止まり無言かな 季なし
暑さにも耐えて文月のペン習字
水撒きて二人腰掛け書を読めり
緑葉の風に揺れいてつよき陽よ
風鈴のカタカタ鳴りて見回せり
汗ばみて紅葉のもとに坐り居り
真昼なり俳句を六っ ....
妻目覚め今朝は咲かずと朝顔が
ゆう暮れのふたりで麦酒の快楽
夜は更けて蟠りなきすずしき日
梅雨入りや紅葉の木陰秋海堂
二人してボランテァーや沙羅双樹
庭べにはさまざまな六月の花
青葉の日プロコフィエフ午後一時
詩が好きで詩学が好きでもみじ緑
近江富士まさおな琵琶湖子と共に
種を蒔く思想なき者蔑視つつ
復活祭たばねし少女の髪揺るる
春の雨車窓の少年頬冷やす
ペダル踏む春野に轍を刻みこみ
青麦に大人になりたく包まるる
すれ違うモノみな思い出桜餅
日の透くる椿の花の別れかな
寒雀九羽が十羽になりにけり
玄冬の砥石を濡らす太き指
{引用=一九九五年一一月二二日}
大根や何をする気もおこらない
{ルビ欅枯=けやきか}る{ルビ七光台=ななこうだい}というところ
まる子みて二度泣く秋の夜は澄み
金槌の音ふたつみつ暮れの秋
{ルビ欅=けやき}葉の道の向こうへ落ちにけり
葡萄つまみ雨をながむる女かな
一つ二つ三つヒガンバナ咲き出した
一輪の一つ二つ三つだけ咲いている
ヒガンバナ一輪に足りぬ彼岸花
青白い茎まっすぐなヒガンバナ
指を開くように此岸を数えてる
爪の先を割って真っ赤な花 ....
そうめんを茹でる音聞く{ルビ夕立=ゆだち}あと
あの人もこの人も濡れ{ルビ夕立=ゆだち}かな
美しき雷光の射す手紙かな
霧雨が運ぶは遠い音ばかり
我が水の薄さに萎える羽虫かな
触れるたび遠去かる音日々の音
ゆらぐ道ゆらぐ光の水の声
水もとめ{ルビ背=せ ....
人ひとりとどめてありぬ夏の山
暑き日を背に静寂の真鯉かな
ねむりたい頭のうえの冬蜜柑
渚なきからだ横たえ冬を聴く
白髪に月がふたつの冬夜空
斃れるはきさまだと知れ雪つぶて
おのれこそ ....
なき母に 「帰りが遅い」と こぼす父
溺死者は死にたかったの 思想の瀞
歯の痛みわがものとせず皿を噛む
ねむれないひるまを足掻きようもなく
切ればゴミ髪も小指も恋人も
狙われた記憶もなくて行方不明
....
母と云ふ字は嫌ひ苺も嫌ひ
忘れな君いまここにあるこの菫
オランダの苺囓れば昼間の月
たそがれに水星の見え{ルビ土筆=つくし}生え
春枕翼を持たぬ鳥が飛ぶ ....
騙されたくて朧月夜を散歩する
踏まれて香る芽紫蘇の死
液体化するわたし 麗らかで
春眠の教室窓から光こぼれる
米が汗をかいている
汗のようにおちる言葉
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