あの紅葉に燃える木の下にいってみよう
あのみどり深い木の下にいってみよう
あの石橋の向こうの赤い屋根の家の窓から
ひょいと顔を出して、世界を眺めてみよう
戻ってきたら、石橋の(絵の中心 ....
いつか交わる平行線がある
し ご と を し の ぎ
こ こ ろ こ か げ に
み え ぬ わ き み ち
と き が と け だ し
美しく病んだ六月の背中で
僕らは夢か ....
あたたかく降り積もった雪の下に埋めた
女になってしまう前の、
何でも言葉に出来ていた少女のわたしを
女になるというのは
自分が一番遠い他人のように感じる生き物に
なる事なのだ
女になっ ....
薄い日常の積み重ね
毎日毎日の積み重ね
ほんの数ミリでも
五〇年過ぎれば一八〇〇ミリ以上
厚みを持って人を越える
人知の及ぶ範囲。
一八〇センチの人の高みは
薄い日常の積み重ね
....
奈落の底から 天上世界にまで突き抜ける滝が
私の体の中に 降りてゆく
これまで
沈鬱がわたしを咥えたまま 離そうとしなかった 私の目の前に
ただ黙って耐えていた私に 滝が現れたわ ....
君が
はじめて私の手を離し
自分の羽根で
よちよちと
はばたいていった日のことを
母は忘れることができない
君はとうに
逞しい翼をひろげ
上空の風に乗り
母には見ることもできない ....
{引用=
街は、いつも
こぶしを振り上げる 動乱のような
非日常を 人の心にやどす
ちいさなネオンの明かりに立つ少女
夜を踏む女の ピン・ヒールの 短い天使の影
....
遠のいた六歳の背丈からのまなざしはもう
わたしだけが知っていて
本当の潮風を忘れ
たやすく唄われる海の風景だけはいつまでも
地球はあおい星だから
その歌たちはたぶん続くのだと
確信して ....
浴槽の栓を抜く
しばらくは何事も変わらない水面
さざ波のそぶりさえない
今 渦中では
見えない引力に導かれ
出口へと
まさに水が
わあわあ殺到しているというのに
ことの始まりは
....
まだボケる余力がある
人生において僕は様々な役を求められて来た今もね
もちろん卒なくこなせる人間ではもちろんないその対極だろう
何かと何かをアジャストすることで随分磨り減ってしまった感性を想う
アウトサイダーにな ....
ひかり草がきょうは青紫を纏い
インク花はそれが気に入らないらしく
いつもより繁殖している
間違えるなと言わんばかり
ひかり草は気がついて少しピンク色を帯びた
あくびを一つしたのはそれは
....
ほら そっと後ろを振り向いてごらん。
どこから続いているのか
ずっとずっと遠くから
足跡がね 道になってる。
時には寄り道もしたし 時には深い川も渡ったけれど
そ ....
開いて
閉じて
開き直る
胸のちょうつがいを
ギシギシ言わせて
自分の扉を開け放つ
隅から隅までよく見てみやがれと
立ち塞がった戸口の後ろで
気弱な本体が震えている
....
からだが重たくなった
体重が増えたからではない
筋骨の硬化・退行が増した だけなんだ
こころがうつろになった
ゆめを無くしたからではない
虹色の四次元が喪失した ....
ある日クローゼットを開けると
床の上に散らばったネクタイの塊が
視界に飛び込んできた
どうしたものか…?と一瞬迷ったが、
とりあえずそのまま扉を閉めた
数日経って再びクローゼットを開ける ....
踏切の横の空き地は草ぼうぼう
傾いた陽光が
影と日なたに草はらを分ける
通り抜けるものの風圧と
しつこい音の点滅にせかされ
ひとあし 踏み出そうとする
幼時の一瞬に接続しそうな時間の震 ....
遠くやって来た風が吹いていた涙が流れた
言葉を失ってさまよっていた時は流れて君に会えない
僕は風の中の塵涙が流れる君は遠い思い出
世界は今日も廻ってゆく音もなくね
時間はなんのため ....
耳のなかに
あらぶる海波が音をたてて打ちよせる
波うちぎわがあって
すぐにきえる影をつくって
雲の列車がゆく
武器をにぎりしめている
ビルのうえには
どこにも ....
窒息する女性
孤立した母親は、子どもに手のかからない
母親側からの子どもの自立を願う
それは自然になされるように見えて
子どもは、家族のために、と自分の気持ちを殺す
泣きたい ....
おみやげの賞味期限切れてた
手賀沼の畔
今、道の駅があるあたり
河童が一匹人を待つ
臆病河童の三太郎
道祖神の裏に隠れて人を待つ
手賀沼の畔
大きな椨(たぶのき)の影で
臆病河童の三太郎 ....
しずかな つばさの抑揚に
呼吸を あわしながら歩きます
しろさの きわだつ蝶を
追うとき わたしの 肩甲骨も
空を感じてました
「おたんぽぽしてるの
ふうてん とばそ」
....
俺は
俺以上でも
俺以下でも
無い
みじめな俺も、俺。
時折かっこイイ俺も、俺。
どちらも、俺。
ならば?
悩みの全ては外面上の(夢)であり
俺は俺として、俺を背負 ....
ゆくすえは
どこまで見まもることが
できるのだろう
吃音のことで
それほど悩んでいたなんて
知らなかったけれど
親は子の悩みを
まるごと肩代わりすることはできないし
してあげたいけ ....
瑠璃色の夜明けの空や時鳥
ああいうふうにはもうできないね
春の去り際
白いスカート
透明に固まっていく桜の樹液
陽が沈んでから
夜が訪れるまで
うす青紫に浸された世界
君の眼差しが
ふるえるように未来を ....
湿の音が始まった 毎時 初めたい新鮮に
こだま雨音 サイレンの様に感知する
湿の知らせ
虫の知らせは近寄らない 誰も無言で死んだりしない
そう 信じたい
湿の音が美しく そう ....
{引用=
目をさます
{ルビ灯火=ともしび}に光りをともす
夜の帳をとく
忘れれば 万物の命を病めさせる
部屋に家具ひとつなく
静寂に そこは
音という概念すらありもぜず
....
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