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川でひろった
この石は
世界でたったひとつの石
と 田中正造が新田サチに語った後いく枚の暦がめくられただろう
古典的ロマン主義と反駁しても意味はないが
世界にはたくさんの川
たくさんの川原 ....
都心に雪がふると
もう あともどりができない
地方都市は
いよいよ寡黙になる
川を
はさんで
魚たちは遡及する
ときおり鋭利な水性植物になって川底でひかる
風 ....
凪いだ水面のしずかさで
花のように老いてゆく
女がいる
さくら
と よばれた
ひとりの女は
ひとりの男の
妹で
おまえのよろこぶような
....
あの日は
特別ではない日
アニバーサルではない
だれもが気にもとめない
ただやりすごしてゆくだけの日
デモ
だれも触れない
端折られた日なんてあるだろうか
端 ....
これは きのう
こっちは きょう
どうしてこんなにささくれが多いのだろう
ぼくの
サキソホンから
そんな
ぼやきの声がきこえてくる
*
....
トランプやサイコロをさっと取りだす
マジックのように風景
という手ごたえのない空間をてのひらにのせて
ひぐちさんは
ほら
ここよ
この部分が大好きなの
といって頬 ....
枯色の空洞をのぞく
と、もうひとつ空洞があって
にげてゆく
母国には顔がない
まぼろしの、川がない
オルガンの音がひびく鍵盤の荒野でこごえた兵隊が
身をよせあ ....
耳のなかに
あらぶる海波が音をたてて打ちよせる
波うちぎわがあって
すぐにきえる影をつくって
雲の列車がゆく
武器をにぎりしめている
ビルのうえには
どこにも ....
気難しい顔で、本を読んでいた
犬が
ニッと笑った。
――それには訳がある。
犬の気難しさより
笑いの
その意味の落差のほうが
カクッと おもしろかったのであり
....
しぬなんておもいもしなかった
ひとが
海をみていた
くっきりカゲを増した
夕映えの
不知火干潟で
たぶん夢中で
ファインダーをのぞいていたにちがいない
もえのこる ....