僕は速読かつ多読家だ。
故に、短編と詩を好む。
いや、好まざるを得ない。
朝と夜の電車に揺られる1時間強を駆使した所で、ドストエフスキーを消化することは難しいからだ。
愛書の筆頭に上がるの ....
たまたま人からもらって一度だけ食べたお菓子の味が忘れられないのに、どこのなんというお菓子なのかさっぱりわからない。しかも、その人とは音信普通になってしまって、もはやそのお菓子を探す手がかりが何もない ....
自動販売機の陰の
真っ黒な塊がゴソリと動いて
よく見るとそれは
汚れた分厚い毛布に包まった人だった
たとえば
ここが砂漠で
水も食料もなく困っている人と出遭ったのなら
ぼくはいくらか ....
澤木耕太郎の『深夜特急』。
昔、テレビで大沢たかおが実写でやっていた。アジア篇しか見ていない。でも、スゲー憧れた。一年前の僕は今頃、東南アジアにいるはずだった。貧乏で、ごちゃごちゃしてて、不 ....
ゲリラ兵に捕らえられた僕は
若きリーダーの男に
カラシニコフ銃を渡され
「お前の最も憎い者を打て」と
命ぜられ
超高層ビルの展望台に昇り
望遠鏡にコインを投じ
小さな人達を鳥瞰
タ ....
白から白へと響きわたり
限りあるかたちに届くのは
ほんのわずかしか続かない
どこにでもある小さな高まり
次々とほどける空気の結び目
とめどなくひろがるひろがりの
三つの遠い華や ....
君が言わせたがる言葉を
どうしても言えず
唇をかむ
うながされ
催促されて
思わず口からこぼれそうになる言葉を
唇の裏側で
なんとか押し留める感触
口腔器官が発熱している
....
きのうの僕はつらかった
きのうの僕はかなしかった
だけど めざめたばかりの僕は
一枚の白い画用紙
つらい色をぬらないでおくれ
かなしい色をぬらないでおくれ
....
駆け抜けろ!今の奇跡を
唸る肉体に熱いボディを載せて
光るうねりの中
喝采はまだまだ早い
スタートダッシュが決まれば
後は走り抜けるだけ
煌めきを乗せて突き進む
嬌声をあげて突き進む ....
平坦な場所
何も いない
みていた空
置いてきぼり
かかわる 擦り傷
ぺろりと なめ
居場所は
歩いたっきり
ひきさく 日常の中
道なりの 花 乞い
....
10年くらい前「ウォーリーをさがせ!」(マーティン ハンドフォード著 フレーベル館)という絵本が流行った。ストーリーはなく、見開きいっぱいに描かれたたくさんの人の中から、縞々シャツのウォーリーを探し ....
街は、宣伝する車の謳い文句と、気にも止めない通行人を生贄にして
せり上がる暑さよりも、乾いた空虚さを従えていたので
僕等は、長い橋の上からきらめく水面を眺めている。
そこにありもしない目印を探し ....
ねえおとうさん、
おとなになるってどういうこと?
つらいかなしいことを知るということ?
ねえおかあさん、
生きていくっていうのは、
つらいこと?
おかあさん、
おやすみを言うたびに
....
世の中には、ウソとホントウがあるっていうこと
あたしはいつごろ知ったんだろう
嘘を吐くっていうことを
あたしはいつごろ覚えたんだろ
世の中のすべてが真実だったころが
あたしにもきっと、あ ....
貝殻を気取る私は
捕獲されるのを警戒する
辺りが静かになった頃
深い深い、おそらく他人には不快と思われる
夜の底にて
ようやく貝は口を開く
ポロポロと子守歌
誰にも与えら ....
薄闇の映画館の中
鴨川のことを思っていた
土手にしがみつこうとする亀
にぶいオオサンショウウオ
蚊のような蛍
ヒトは思い入れる
かくいう私も
彼らを出汁に
女を口説いたり
狩猟の真似 ....
ビーズをつないでたテグスが
ぷちん、と切れた
こう、だから好き
こう、だから嫌い
そんな風によのなかを
ふたつに分けることが出来なくて
ひとつぶひとつぶ拾い集めては
かなしくて
....
あけらかんと
ゆみをいだいて
まひるのつきを
ねらいうつ
とどくどくろは
笑みをたやさず
かすれたくもに
キスしてる
リネンきろくの
ひるまのゆめ ....
空に穴が空いて
向こう側と こちら側が
つながってしまった
上っ面だけ良い青空の
向こう側から流れ出す
途方もない負のエネルギーは
夜に咲く花のように
渦を巻いて 開く 開く
....
真夜中に笛を吹くと蛇が来るよ
死んだお婆ちゃんは
いつもそう言っていたけど
んじゃ
真夜中にディジュリドゥ吹いたら
一体何がくるんだろう
試しに吹いてみたら
隣の家のダンナさんが ....
失われた約束が
気づかぬうちにふたたびつらなり
忘れられたはじまりを
さざめくように呼び覚ます
降り積もるなか見えてくるもの
わたしを明るくかきむしるもの
願いを終えた ....
明日の朝まだ日が昇る前に
わたしのアパートまで
迎えに来てください
最新型のスポーツカーで
あの角をゆっくりと曲がって
わたしのアパートの前で
静かにエンジンを切ったら
わたしは小さなバ ....
ドーナツの真ん中の穴から友人のAさんが訪ねてきた
「どうもどうも」
いやなに ちょっと暇だったもんだから
Aさんはドーナツの真ん中の穴から
ずかずか部屋に上がってきた
時々こうやって突然 ....
全国から観光客がえっさほいさとやってくる
そんな地元の夏祭り
北の短い夏だからこそエネルギー爆発!
なんていうキャッチフレーズ
どうなのかなあ
どうだっていいけど最近ずいぶん積雪量も減りまし ....
2.4インチの覗き窓から
フォーラムの様子を覗くと
姿かたちは一切弾き飛ばされて
創ろうとする心模様が
際立って見えてくる
格好なんか気にしない
生まれたて ....
別格で、ほとんど崇拝に近いほど好きな岡崎京子だが、完全読破はしていない。『うたかたの日々』と『愛の生活』で躓いている。もう「年単位」の躓きだ。どちらもすでにラックで鎮座しているのだけれど。
そ ....
オレンジ色の光が長い影を作って
ひび割れたアスファルトに 残る
赤いランドセルが自慢
こんなに綺麗に使っていたのは私だけだったから
なのに もうこんなに汚れてしまったのね
引っ掻 ....
夥しい夥しい直射日光で
アスファルトの明度が振り切れ
真昼は真っ白い暴力だ
私は激しい夢うつつに陥り
液化してゆくアイスキャンディを見下ろしても
何を思えばいいのか何も何もわ ....
ずっと
胸のエンブレムを隠して生きてきた
正義のヒーローが
ひとりいた
今どき分りやすい悪なんて
そこらそんじょに転がってるもんじゃないし
ギターが弾けたらよかったのに
古 ....
海に近い砂の丘から
無数の骨が突き出している
かつてここで倒れた巨大な生き物の上に
浪に運ばれたものが積み重なり
石でできた枯れ木のような
蒼白い骨の森を造った
海からの風に ....
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