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石畳の街は寒かった
空は灰色でお天気は気紛れ
でも陽気な彼らの笑顔に
身体も心も解き解されたよ
瞳が出会ったら
ボンジョルノと囁いてごらん
きっと誰かが答えてくれる
手回しオルガンと
水の入った ....
削がれてゆく草の根
プランターの土
余すことなく張り巡らされた
夏草の根はまるで
灰褐色の空を駆け落ちる雷雨
蔓枯れて
実の膨らみは停滞し
宿命を終えた姿見は
生きながら生命線を断 ....
浴槽に
すだちを浮かべ
涙を肩位置に溜めて
点火
点灯せず
湯冷め浴
果汁の混濁
吐息の白靄
曇りゆく記憶
湯上り
底へ伸ばす腕
栓を引いたなら
渦描いて消えゆく
悲 ....
目の前の僕に
メールを送る君
いつしか
筆跡も足跡も思い出せなくなる
誠の微笑みより
丸かっこの笑いが欲しくなる
場所の概念が失われる
北海道だろうが
ヴェネツィアだろうが
....
妖精が見えるという
塗り薬を瞼に塗って
赤から黒に濁りゆく
暮れの森へ出かけた
不可視
青年の瞳が捉えたのは
影絵の集合
寂しい墨色の森
ざわざわざわ
木の間を流れる風が
....
ジャラビーヤの白
照りつける太陽 光る肌の黒
ウード掻き撫でる指先
広がる琴の音 一面に重厚な肉声
アッサラ・メ・スー
ガンダラ・ダル・スー
農村の倉に
うず高く積まれた白砂糖
....
空気のように横切る帰宅の人へ
男は一心に叫んでいる
お眠り前の
交差点ビルの酒場の前で
来訪の度に変化する店の看板
割れたガラスボードの中
雨で劣化したポスター
煌びやかな羽衣の女の ....
ニュートラルへ辿り着けず
吹聴される思想は両耳を左右する
ニュートラルは遠ざかる
簡易な影響力は汎存種から発生
ニュートラルを隔離された
少年は他者に先導されて生きる
生まれたての感情は野 ....
支配者の心は氷塊
循環する血液は白く
混ざりけない美しさを放つ
民は揃って彼を真似た
鉄火の情熱冷まし
鋼鉄 心に鍛え
血管 オイル注入
血肉 硬質プラスティック
メカニカルな構成 ....
オアシスに刺さった
鋼鉄のストローの先端で
砂塵に揺れる
ユニオン・ジャック 星条旗 トリコロール
日の丸 五星紅旗も仲間入り
乾いた大地 唯一の至宝
石油を果てまで吸い尽くす
終わ ....
超高層の120階に呼び出された
社長室までの道のりは
美人の秘書と共に在る
淡い恋とは別種の鼓動
「明日から来なくていいよ」
最悪のビジネスパターン
妻と子の笑顔が遠ざかる空想
「落ち込むことはない ....
駅前のタクシープールに
老いた男と猫が
向かい合わせに座っている
餌の缶詰を猫が喰い
空き缶は物乞いの貯金箱となる
毛刈り前の羊のような
油色の毛を
肢体しならせ
舐める猫
....
目覚めたら
僕の部屋に同室者が現れた
両親と暮らしているが
生活パターンが違い
机上の英和辞典よりも顔を合わせなかったから
友達ができたみたいで嬉くなる
彼は僕とまるっきり正反対で ....
僕は速読かつ多読家だ。
故に、短編と詩を好む。
いや、好まざるを得ない。
朝と夜の電車に揺られる1時間強を駆使した所で、ドストエフスキーを消化することは難しいからだ。
愛書の筆頭に上がるの ....
ゲリラ兵に捕らえられた僕は
若きリーダーの男に
カラシニコフ銃を渡され
「お前の最も憎い者を打て」と
命ぜられ
超高層ビルの展望台に昇り
望遠鏡にコインを投じ
小さな人達を鳥瞰
タ ....
敷き詰められた雨降り電車の中は
屠殺場へ運ばれる家畜を乗せた荷馬車
人間達が呼吸を繰り返すが
浄化する緑はなくて
二酸化炭素が充満し
悪しき空気は思考司る脳髄蝕み
乗車続行の男の短絡的な機 ....