あなたが
中古
静かに軋む二輪車の
匂い
角を曲がる
何かを思い出し
もう一度角を曲がる
イニシャルを失ったまま
あの縄跳びもまた
どこかへ行くの
駆け込み乗車は
錆びて
....
藤の実が剣のようだ
ものすごい湿気とものすごい気温の中
藤棚の下で目を閉じて
何も見ない
藤の実が剣のようだ
おそらく
噴水の前を通り過ぎる自転車のベルも
風鈴のようだが
でもそれはも ....
この手には限りがあることを
渋々から卒業をして
潔く
承知出来るようになったんだ
五本の指は五本でひとつ
二本の腕は二本でひとつ
一生懸命になるのではなくて
一生懸命にならざ ....
富山から鎌倉へ帰る旅の終わりの朝
旅の宿を貸してくれた
姉が作ってくれた目玉焼きを食べながら
居間の床に座る3歳の{ルビ姪=めい}が
赤いリボンを頭につけたキティーちゃんのぬいぐるみに
話し ....
優等生のシンデレラは
舞踏会には行かなかったの
臆病な眠り姫は
北の搭の扉を開ける事はなかった
慎重な白雪姫は
林檎を口にしなかったし
人魚姫は王子様より
歌 ....
あたし達は多分
できかけのべっこうあめみたいに
ぐにゃ、ぐにゃ、してる
べっこう色、
きれいな固い肌も
もってないし
白い上白糖の、
さらさらした柔らかさも
なくしちゃったし
....
ハーブの浴槽を
かき混ぜて
えらいねえらいねって
かき混ぜて
わたし、泣いてはいませんでしたか。
いいえ、それでも笑っていたんだと思います。
はらはらとこぼれていくのです。
あの小さ ....
白紙に色をのせるよに
言葉をぺたぺた並べていくと
彩に戸惑いうかびあがるは
像を結ばぬ心の調べ
淡にまぶされきわに立つのは
濃さに瞑れたきおくの階
筆に馴染んだ絵の ....
いつの間にか二人は
会話なんてとっくに忘れてしまい
漂流船のようにあてもなく走り続けて
疲れきった二人がたどり着いたのは
霧に煙る高原のラブホテル
その名はフォギーヒル
黒いシルエット ....
坂道の途中にある小さな花屋で
何度か花束を買った
買わない日の方が多いのに
そのことはあまり覚えてない
上り終えるあたりから見えてくるピアノがあって
軟式野球部員のカヂさんがよく曲を ....
「私のひと押し詩人」というテーマでの依頼。
ひと押しというか、好きな詩人は、
1.有名で今さら紹介する必要もない人
2.ひっそりと書いていて紹介なんかされたくない人
だいたいこ ....
また、ここに夏がやってくる
僕の広げた手のひらの内側
少しうつむきがちな背中にも
広げた葉っぱのトンネル
その先の坂道は空へ消えていく
青い青い夏、遠い遠い世界
少しずつこの街からは何かが ....
1988年の秋に、私はそれまでの詩のかき方を精算すべく、個人詩誌「風羅坊」を創刊しました。コンセプトは、短く、平明で、身辺的であること。そこにはそれ以前に親しんできた現代詩的な構文への反発がありました ....
生きるも勝手
死ぬも勝手
上司と情死
不倫の果てに
手に手を取って
思い出めぐる
片道切符
湯上り浴衣
抱き合って写した写真
を形見に
海波
砕ける断崖から
身を投げる
....
昼寝から目覚めるとぐるり真っ青になっていて
真っ青になっていてでんぐりがえった僕の眼球
眼球から涙は流れず一滴の血もこぼれない
かなしみ
僕は何しているんだろう?何もしていない僕のほころび ....
社長なのオマエ? しばらく見ないうちにエロくなったなー
大きい玉手箱か小さい玉手箱か、好きなほうをエロびなさい
乗ってみたい車? んー、ロータス エロン
原子番号69? んー、エロジウム
好き ....
敷き詰められた雨降り電車の中は
屠殺場へ運ばれる家畜を乗せた荷馬車
人間達が呼吸を繰り返すが
浄化する緑はなくて
二酸化炭素が充満し
悪しき空気は思考司る脳髄蝕み
乗車続行の男の短絡的な機 ....
みんみん島のミンミン
みかん好き
頭にみかん乗っけてる
風が吹いてもみかんは無事よ
ミンミンみかん頂戴
やよ
みんみん島のミンミン
ミシン好き
手作りのお洋服とバッ ....
ウェスタンブーツで
アスファルト蹴りあげて
伝票整理も経費精算も明日にして
スカートの裾ひるがえしながら
カウガールみたいにタクシー飛び乗って
とりあえずどっかに逃げちゃえよ
ほら
ビル ....
そっと
なぞる
なぞ る
影
つみかさなった
夕べの
夕日の
赤
重さの
重みの
重なり
心の
芯の
息
構築されてゆく
{ルビ恋恋 ....
遠い飛行機のような音を立てる
夜の、曇天
その鳴動、鳴動、鳴動、
大気は夜を続けるも
わたしは仰向けの形、ひっそりと静まり返り
暗く目を開けるだけで
何かを促す性能はな ....
森のかなたへ
碧をたどる
濡れた黒髪
指でなぞる
空をそのまま
うつしたような
蒼のしずく
ぽとり
ぽとりと
堕ちてゆく
ふかい水路へ
そこから生 ....
バスルームの飾り棚に
置き去りにされていた
JAZZの香
蓋を開けた刹那に
よみがえる記憶
ああそれは
一年も前のことで
そういえば私は
まだ泣いてもいなかった
夏を告げる鐘が鳴ると
少年たちの中で 天国が走り出す
光源のない白い光に満ちた中を
球や三角錐や立方体の闇が
行進する
思考線をよぎる空中魚族
(この椅子に坐るといつも
感応しようとしすぎてneuroticになるんだ)
その視軸 ....
3歳の{ルビ姪=めい}が
遠視矯正めがねを初めてかけて
鏡に映る見慣れない顔とにらめっこ
「似合うよ」
後ろから見守るママが言うと
にっ と{ルビ微笑=ほほえ}む君の目は
人よりも ....
夏休み
街から人はいなくなった
窓という窓
木陰という木陰
ベンチというベンチ
そのいたるところから
少しの匂いと
体温を残して
静寂、というには
まだわずかばかりの音 ....
いまだキルトを綴るという
針の動き、
広がる愛を不安と呼んだ彼女よ!
違う!僕はそう思わないよ
歓楽通りを歩いていると、
後をつけてくるとかいう例の老人がやって来て、
不眠症の男に地図 ....
梅雨の夜風に混じり込む体臭の湿気
雲にまいた砂混じりの渇いたため息
無気力にぽっかりあいた満月の
光子すらはらんで
みな本当の風を知らない
それらをすっかり失われた
古代の技術で精製し ....
美しいものを見ると
なぜか哀しくなる
そう言ったあの人は
ときどき
儚さに目をそむけて
今日も人を殴る
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