規則的に並んだ 長方形の、
石の上に横たわる
やわらかな、暗室
腕をまっすぐ 前に伸ばして
星座の距離をはかる
おや指とひとさし指で足りるほどの
遠さで
わたしを見下ろしている


 ....
終わりのないテロと戦う

戦闘機も白い雲の中では
機械の目を頼りに
電波系の学問を頼りに
地上の幽霊
フラダンスを踊る
踊り狂ったフラダンス
地雷原を
吹っ飛ばすように ....
昨日 切り捨てられた廃線の
駅 構内には
まだ暖かな気が
そこら中に点々と赤味を帯びて
揺れ立っているというのに


朝に 幕
夜には 鉛の月影が
ゆっくりと光りを奪っていくのだと
 ....
来るはずのないものを待つ
冬の蜘蛛のように
終わることを知らないひとつの季節と
同じ永さのなかでふるえる


汚緑の湖に打ち寄せるオーロラ
波の奥から
太陽を手にし ....
皮膚を、
へだてているのは同じではないか、その
頂へ
ゆっくりと
のぼりつめるさま
あるいは
交わってなにひとつ溶け合わない、交わりは
交わりのまま皮膚の
上にしんしんと塗布
さ ....
この とろけ 加減は

世界を 平和に する

かも しれない
二月の冷たい雨が降る午後
近所の喫茶店でお茶を飲みに
愛読書を鞄に入れ ビニール傘を差し
家の門を出て川沿いの道を歩いた 

川の流れる{ルビ辺=ほとり}の土に
一羽の{ルビ白鷺=しらさぎ ....
あの日の筆圧で
定着したインクが
原稿用紙の余白に
青くにじんでいた

その万年筆の字体は
水性の化石だった
硬質のにじみの層は
幾重にも連なったブレストーン

そこでは私の声もに ....
君と出会いしこの坂に
金襴緞子の晴姿
内掛け姿の君の名を
誰が鳴かずにいらりょうか


袖振り合うも多生の縁と
交わす会釈もいとほしく
生まれし定めは違えども
つのる恋と咲き乱るる
 ....
私が生まれるより前に
戦地に赴き病んで帰って来て間もなく
若い妻と二人の子供を残して世を去った
祖父の無念の想いがあった
 
私が生まれるより前に
借家の外に浮かぶ月を見上げて
寝息を立 ....
1999年8月某日

午前七時起床
朝食後、心理テスト
当てはまると思うものを○で囲む
それからこのテストを作った奴が俺よりちゃんと世界を観ているのか
どうかということが一時間に一度くらい ....
キリストはキリスト教を作ったりしなかった
彼はただの愛に溢れた大工であった
キリストはよく遅刻したし、仕事にこない日もあった
彼はそんな風に頻繁に約束を破ったが
生まれたての子どもが誰彼と隔て ....
 {引用=昨日からしていた 予感は

 たしか ・ ・ ・  

  足音はしなかったな。



   ちがう空気の流れは今日、

     全てを置き去りにしたまま

 すり ....
カレンダーを一枚めくり
二月の出かける日に ○ をつける

数秒瞳を閉じる間に過ぎてしまう
早足な{ルビ一月=ひとつき}の流れ

数日前話した八十過ぎの老婆の言葉

「 あんた三十歳? ....
スパイスきょうじゅ
スパイクはいた
スパイクはいて
スパイスのんだ
いちめん ひろがる 
じゃがいもばたけ
おくさんうめたの
だれでしょう

*

あさ うたたねをしていたら ....
夜に呼ばれ、
風に身を浸す。

月に影を渡し、
光脈を流れ。

響明。

光は響き、
すべて満たす。
夕焼けが差し込むような窓を見る 背中に回るのは反則と思う


くちびるが声を発することをやめ ただ感触が伝わるだけの


指を組むようにあなたの腕を脚を 隙間なく組み近くへもっと


 ....
黄昏時に 影が伸び
逢魔が時に まどろむと
冷たい風にさらされた

まかりいでたる 紅マント
不気味に微笑む白面に
口をふさがれ さらわれて
茜の空に 舞い上がる

夕焼け雲か 蜃気 ....
君が 死んだら
僕は 死を 沢山 生むだろう

あの日 泣きながら
僕に 自殺を 迫った
君の この世で 一番 醜い顔

ニューヨークでも
ハノイでも
どっかの 町でも

君は  ....
惚れるひとつ。
溺れるふたつ。

ここにひとつ影。
ふたつ追憶に溺れる。

果てる波みっつ。
東京は
私たちの隠れ家だった

誰も私たちを知る人などない街で
なにもかもを忘れたふりをして
ただのオトコとオンナになるための
狭くて大きな隠れ家だった

東京タワーも水族館も
 ....
{ルビ香辛料=スパイス}という宇宙なのです
すべてを包括していく宇宙なのです
包み込んでいくのです
溶かし込んでいくのです

カレーに国境はありません
たとえば、カレーまん
インドの ....
私の底に滴るのは
暗い砂だ

私が歩んでいるのは階段だ
いつも
上っているのか下りているのか
どうしてもわからなくなる階段だ

記憶の中には
私の指たちが仄白く棲息している
それら ....
地図の上に 雪は ない
天の上は 雪を知らない

火を
かざして 求めるのに

土に
よごれて かきむしるのに

足りないものばかり 
足せないものばかり

凍らせなさいと ひ ....
この子への あいのかたち
辿りながら 夢へ誘う
眠れ 眠れや
明日は晴れる
夢に見るのは
月の舟

耳に聴いて こもりうた
包んだその手 もみじのように
眠れ 眠れや
雨の降る夜も ....
ひろければひろいほど
わたしはひとりで
つまり

ひろければひろいほど
あなたも
ひとり


あの日
真っ白なゲレンデで
わたしは
ひとつになりたいと強く願った
ゆるやかにカ ....
ずいぶん前からネットでダイアリとか書いているけれど、プライベートなことはほとんど書いてない。これはもう、はっきりとフィルターかけています。今はミクシもやってて、そっちのほうでは10センチくらいフィルタ .... 切り取って
もう少し違うかたちに

貼り詰めて
色硝子の欠片たち

鏡に映った髪が
指先でもつれて
ささくれた爪が
余計に乱暴になるから

ひび割れが目立たぬよう
綺麗なステン ....
海辺で 死んだ 妻を見た
反転の 余暇  途端
妻は  私になった

狐が 化かすというので
海辺の 遠くを 見た

見える
亡くなった 祖母が 
流れてくる 何体も

天秤の中 ....
狂おしく 狂おしきままに
待ちわびて
結ぶ太鼓に散る花は
夢見の果てとあおぎみて


流れゆく 流るるままに
時すぎて
契りし思いに散る花は
あれは逢瀬とかえりみる


帰らぬ ....
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