宵の衣の澄む空に
水を含んだ
月浮かぶ
果てを映したせせらぎに
火照る裸体を浸します
夢に染まった
つめたさが
しずかに狂って微笑した
(すわ)
終りにそなえて 花が咲く
胸がないので
胸をください
ぴったりとこのおもいや
ことばがおさまるような
ひきだしのたくさんついた
おちついた形の
胸がほしいのです
ごめんなさい
たったいま売れてしまいまし ....
世界で一番輝いているもの
それは夏の太陽でもなく
北風に瞬く冬の星空でもなくて
君が捨てようとしたもの
君がいらないと思っているもの
世界で一番輝いているもの
それはブルガリの ....
失礼します
残された時間はどれくらい
切りそろえた髪も伸びて薫った
(生きる?)と問うたが最後
もどらないもどせない
生きなければいけない
どこへいけない?
暗黒?
宣告 落果 ....
そのひとは
ひっそりと
木漏れ日の中にいた
何かおこりそうな空だこと。
そういえば、このあいだの鳥は、
どうしたかしら。
陽にひらめいて、
虹を食べて、
七色になって、
空へと消 ....
#81
おなかのなかに
憂鬱のカタマリがある
ちょっと熱めのコーヒーを
ゆっくり飲んで
そいつを溶かしてゆく
夜はこれからだ
時間はいくらでもあるさ
....
見慣れない肌の子供が立っていて
おまえは苦しんで死ぬと囁くものだから
そんなもの
首を絞めたっていいじゃないか
結局のところ
君たちは知らないんだ
君たちは知らずに転げる
転げている、ろ ....
すき。
つらつらと
窓硝子に透明な静脈
いつしかの雨
ちいさな胸にけむり
せつなさ響くぬけ殻の
透過する自殺
すき。
その精神
クシャグシャにくずれそうな
物理的に映らず視覚さ ....
最後の赤を脱ぎ捨てた
紅葉の合間から冬の声が届くと
過ぎた年月は
あどけない写真に
痛々しく画鋲の痕をつけながら
かなしみを、ときめきを、
なつかしさのオブラートに包み込む
....
ゆうるりと朝が来る
顔の群れは消えてゆく
ゆうるりがゆうるりと
いくつかのゆうるりを摘み取って吸い
ゆうるりと朝に満ちてゆく
波の光を背にして座り
髪は音にひたされてゆ ....
ひっそりとした雨で
灰色に染まる
視線までも
{ルビ一色=ひといろ}に濡れる
雨垂れに
声が
くっきりと響く
そっと
ちらつく姿に重さを重ね
落ちる雫に映りこむ
吐息は熱く
....
じんわり汗ばむ首筋を
ハンカチーフでそっとふき
夕陰草をみつめる手許
無風の文字は ただれてしまい
あてどなくもたれかかる
夕影の一輪挿し
やがて雨薫り
境界 薄く煙る
雲の流 ....
懐かしい天国への途上で
思い出されるのはあなたのこと
いや むしろ気がかりなこと
あなたによって
傷ついた額から血が流れるのは
これで二度目だ
茨の冠で傷ついた額は
最初に頭を打 ....
黒髪の視線が伸びてゆき
瞳が羽化をすれば
艶やかに空を含み
風と交わる
{引用=さぼりぐせのある小学生でした
うそつきでした
さんかくじょうぎが さみしくて
青の奥
散らかってゆく雲
君がつくえに立ってふざける
ちいさな教室
きいろい ....
聖書という名の
己の真実を映し出す鏡と向かい合い、
祈りという名の
彫刻等で己の魂の形をととのえつつ
終わりのない日々をおくり
やがて精神に異常をきたし、自分の名前も知らず、
自分が ....
まぼろしの重さと
重さのまぼろし
戸惑いと迷いと
緑のはざま
きらきらときらきらと
取りもどせないものの列
手のひらに 手のひらに
降り来るものたち
むらさきが
....
擦り切れたブランケットを放せない子供みたいね 君依存症
ねぇわたし、あの娘がしているマフラーが欲しいの。はやく盗ってちょうだい
陽だまりのように私をなだめてよ パールなんか ....
朝の
冬の
わたしだけの酸素分子が
冷たく、サラサラと
肺に触れてくれわたしは
震えました
少しの日のぬくさにも圧され
再び惰眠の目つきで
食卓に傾斜してゆく
....
彩るうたを{ルビ口遊=くちずさ}む
こんな命があるかしら
{ルビ水=み}の{ルビ面=も}に蝶が浮いている
ちらともせずに浮いている
こんな命があるかしら
あすを知りえず浮いている
....
ピュウピュウ北風吹けば
寒くて唇が乾くので
つい唇を舐めてしまう
舐めるうちにカサカサになって
赤く腫れ上がった
僕のたらこ
リップクリームを塗ったら
気にしないのが一番
だけ ....
きみが目を閉じても風は草原を夜空を海を旅してまはる
涸れてゆく泉にきみの瑠璃色の絶唱とわに不滅の予感
雨の駅、雨のバス停、雨の庭。きみが ....
私は海になる
ただひとり あなたのために私は
自分を分解して個体の部分をすべてぬき取り
液体だけで構成された海になる
父になることしか出来ない性の宿命
それでもかまわず
私は母のような海に ....
遠い冬に生まれた夏が、またこの冬に巡る
僕はあなたの手にそっと触れ、
けれど
僕はあなたに触れることができたのだろうか
夏が 自ずからの素晴らしさに耐え切れず
崩れてゆく幾つもの午後 ....
冷たい雪の降る夜に
わたしのからだは凍えてゆくから
わたしのからだは
小さくなる
わたしはわたしを抱き締める
冷たい雪の降る夜に
わたしのことを
わたしのほかに
....
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
青ざめてゆく風のなか
声も無く笑った
雨の夢は白らかに咲く
虹のもと影ろふ立ち姿
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
....
得た と思うと同時に失う
林檎の皮を剥いていく
螺旋が皿に垂れていく
果物ナイフに映る甘いかおりに
私は涙を告げる
何も動揺することはない
唇はかすかに震えているが
芯は蜜を湛え ....
思いも無いのに思いどおりの
見てはいけない夢からさめて
終わり はじまるわたしがあり
気づけば朝を歩いている
かがやきやたかなりを
しあわせと呼ぶことに
ためらいく ....
どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した
頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れる ....
此の地面は
匂いも、何も
残らない性質です
此処にいることを示せず
湧き上がること溢れることを戒めてゆく動作が
結果的には
瞬きです
此の地面は
風へと ....
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