残業もそこそこに
今夜もいそいそと帰ってきた
玄関のすぐ脇の部屋で
かつて母だった生き物が
また呻いている
父の三回忌を済ませた頃から
母は溶け始めた
ビデオテープのように過去を ....
拘束して拘束して拘束してよ、ずっとずっと目に見えるところに置いておいてよその芳香をずっと感じて痛いよ棘が刺さったけどほったらかしたら私のアソコがひーらいた。
なりふりかまわず駆けずり回って坊主はだん ....
昼飯を買いに会社を出たら
むっとする暑さが僕を襲う
じりじりと肌が焦げる音を探しながら
君と海に行きたいなぁと思う
会社に戻ったら
人工的な冷気が僕の熱を奪っていく
粟立った肌 ....
花壇のマリーゴールドは
みごとにおひさまの色
おひさまを
いっぱいに吸いこんで
ハナムグリのベッドは
おひさま色の花粉
ハナムグリのごちそうは
おひさま色の花粉
夜なんか知らな ....
プラムがとけてゆく
手のひら
手首に甘露
肘まで蛇行
頬をくすぐる
芳香する湿気の下流
踏み潰しても
てのひらに残る
両手を頭の上であわせて
踊る方のリズム
おい、しゃ ....
恋だとか愛だとか
そんなモノの無い日々の中で
意味不明のマボロシに 戸惑いたくは無いのに
裏切られたSEWEETがヨミガエル
裏切ったSWEETがヨミガエル
名前も姿も別なカタチで
....
熱を嫌う
冬の午前十時
錆びた手すりに
もたれて
こめかみを撃ち抜く
動物園に火をつける
噴水は枯れた
飼育員の首吊り死体
食らいつく ....
君はいつも真っ白なスニーカ
光らせて
空に
原始の青を連れてくる
じりじり世界を焼くね
無垢でフレッシュな笑顔で
蚯蚓が道端で黒焦げているけど
そんな ....
煙草を灰にするように
死に体の鴉たちが一斉に飛び立ったので
空が夜みたい
狭い空ばかり見ていたから
わからなくなるのです
こんなとき
天井がもうきついそうなので
僕は唾を飲み込んで
君 ....
こいさんや
もうちょい静かにでけへんか
そら、
お母ちゃんに買うてもうた チェーンソー
ごっつぅ気に入ってんのは
ようわかるんやけどな
あんまり振り回しよったら
しまいに壁、穴 ....
子供の頃のいたずらの跡がまだ 障子に残っているから ぼくは床に伏したままでも透視することが出来る 空は曇っていて 北と南で濃淡が違う あの人は傘を持っている カラスは濡れても構わない あるいは飛び立っ ....
わたしは肋骨だ
肋骨はあなたを心から慕い
肋骨はあなたの心臓を守る
あなたの胸を打ち鳴らすものを
至近距離から呪いながら
肋骨はあなたの胸 ....
エアコンのない、
中途半端に古い家にいるものだから、
ほんとに蒸し暑くってかなわない。
料理なんかする気力ないし、
食欲ないし、
おまけに、
部屋のなかがへんになまぐさい。
生ゴミが腐っ ....
物書きでもないのに
書くことをしたいと思いつつ 想いつつ..
日は暮れ 夜は深まり
そして朝は
あっという間に昼になる
ほら
もう時計の針は90度になった
....
魚が手紙のようなものをくわえたまま
道の真ん中で力尽きているのを
少年は見つけました
水を泳ぐ魚にとって
ポストはあまりに遠かったのでしょう
少年は手紙のようなものを
代わりに投函しました ....
なな きり の むこう
ささ ゆめ も せいて
ほり ふかまる ゆびに
つげる さめた なつび
こしかけた おお いし
なぞられる ほし よる
かた に おちる ....
冷凍庫から取り出した氷の
溶けていく音が響いている
ちりちり ちりちり
静かな部屋に染み渡っている
窓の中では雲の
輪郭と輪郭とが
混ざり合いながら変化している
終わらない終われない ....
発車を告げる笛がとつぜん響き渡る
いつの間に電車が到着していたんだろう
みんな一斉にホームに駆け出す
ぼくも駆け出す
階段で足がもつれて転びそうになる
転んでいる人もいる
閉まりかけた ....
職場で黙々と仕事に励む
ふと気が付くと誰もいない
みんなどこへ行ったんだろう
サイレンが鳴っている
煙に包まれている
僕は取り残されたみたいだ
....
梅雨明けの午後3時、
高架化成った西武池袋線桜台駅。
昼飯食いそびれた背広姿のサラリーマン(俺)が
ベンチにて団子3串にかぶりつく。
頭ン中にはお気楽な音楽。
「カリフォルニア、 ....
家族と走った8万キロ
一人で走った1万5千キロ
家族に内緒の5千キロのうちわけは
君だけが知っている
私には顔がない
のぶちゃんはグルグル包帯の
ミイラ男みたいな顔持ってた たしか
と、思っている
水鏡にもお尻を向けられた
私 やっぱり顔がない
手鏡捨てた
三面鏡割った
別にいいや ....
白いシーツにくるまって
裸の足を少しのぞかせながら
「帰るところがないのぉ」って
まるでローティーンの家出少女みたいな
口調でさ
そう言ってみな
きみの横に滑りこんだぼくは
不器用に ....
傲慢な蒼さに
突き刺されて肌が痛い
高揚とするのが
負けたようで憎い
潮が照り返す午後
子供は競う
空の青さは海を
上手に飼いならしている
渚は囁きを止めない
無意識 ....
ロックグラスの淵をふさぐ手の平
中身は空っぽに満たされて
そっと僕の息を閉じ込めた
3月 せっかちな不結合のチリは
町の中を撫で歩き
時折、見せてくれる隙間に ....
ばらばらに散らばっていた いろんな言葉が
ひょんな瞬間体に まとわりついてくるんだけど
でも
知らない女の舌が
僕の肌をすっと すべっただけで
またそれはすぐに ばらばらになって消えてしまう ....
私たちは秘密の恋をしているから
今、この左右の本棚たちが倒れて私たちに襲いかかってきても
文句はいえぬ
指と指をわずかにからませ
古ぼけた本のカバーが少し破けて
顔を見合わせて、笑う
....
短い話の夢でした
ひらがなばかりの
セリフであって
半袖ばかりの
人と逢って
ところどころは
知る場所なのに
どこか遠くへ
運ばれて
目覚めたところの
この家の ....
はねられるときは
不意にやってくるから
はねられるときは
自由でありたいものだ
まずお気に入りの
ポシェットを身につけて
交差点を
まったくの無防備に
横切っていると
真横から
真 ....
人生に失敗したので爆弾を作った
場所はカフェがいいな
とりあえず街に出かけた
中世の面影を残す門をくぐったとき、
刻まれた紋章が俺の勲章に見えた
足の裏に石畳がズンズン響く
目の前 ....
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