黒川排除 (oldsoup)

子供の頃のいたずらの跡がまだ 障子に残っているから ぼくは床に伏したままでも透視することが出来る 空は曇っていて 北と南で濃淡が違う あの人は傘を持っている カラスは濡れても構わない あるいは飛び立ってしまいたい 打たれるんだ打たれるんだ それがぼくであってほしい
金物は感電する 高いところにあるものは感電する 避雷針は感電する 恋をした人たちは感電する 悩んでいる人はいつか必ず感電する 閃きといういかづちに打たれて感電する 不穏な空気を感電する 濡れた手で感電する ひとたび感電した人は皆求めるように感電する
まず強い閃光が走る 稲光はそっと地上を撫でていく 遠くではサイレンの音も聞こえる きっと落雷とは無関係に家が燃えている 乾燥した空気 とりとめなく開いたり閉まったりする戸 隣の家で電話が鳴り続ける ひょっとしたらテレビの音かも知れない ドタバタとせわしなく動き回るような音や もういいと言って家を出るような音 そして実際出てきた少女を窓越しに見る その手にはコンセントが握られている 静電気に取り込まれる少女 放電する家屋 感電する網膜の鮮やかな模様 ついに百年の余韻は終わり ぼくは汚い言葉を口にする 薄墨を塗り重ねた空は 横隔膜のように幾重にも重なりながらふるえている


自由詩Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2004-07-28 22:02:05
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