糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木
ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
....
恋の映画を観なさい
恋の本を読みなさい
恋の音楽を聴きなさい
そして
恋する瞳で世界を見なさい
そうすれば世界は少しばかり
マシに見えるかもしれない
もちろん
そうする ....
踏み出さないと
見えなくなるよ
こころ
身体
ばらばらになる
もう一度
逢いたいなって
それは
そんなに
悪いことなの
爆破したり
乱射したり
私は
張り裂けそうにな ....
マッサージにいってスーパー銭湯にいって
老廃物をだして
リンパをながして血のめぐりをよくして
古本屋によって
古本屋はさいきん
漫画やハードカバーのコーナーがちいさくなっ ....
【悲しい酔っ払い】
呑んで呑みまくって酔っぱらう
ひどく酔っ払って空を飛ぶ
夜を食らってゆめうつつ
寂しいこと悲しいこと
寂しく悲しいけど全てを忘れて
明日はたぶんまっさらな気持ち
無垢 ....
白く燃えている
白く
詩の言葉のなか
わたしはもはや
この世の物ではなく
白く燃えている
白く
純白の壁取り囲む
純白の壁走る
純白の耳鳴り
純白に総毛立ち
体が空だ ....
過ぎていった季節を常夜灯のように思う
わたしは揺り椅子の二つの脚に停留の錨を下ろし
アンテナの代わりに
机のうえの海に花瓶と丈高い花を置いて
自分のなかの未知なる惑星を探りだす
(わたしは丈 ....
冬至を過ぎたとはいえ
まだ夕暮れはとても早い
午後と思ってでかけたが
歩き出してほどなく
雲は彩られ
見る間に
黒い塊として
光の名残に縁取られていく
これが
最後の日没だろう ....
毛受(めんじょ)の火災は壮大だった
宇宙戦艦ヤマトが突っ込んで来た結果の
大火に宅建業者も沢山見物に繰り出して
「火事」は冬の季語ではないのかと
喧(かまびす)しい
上野動物園のパンダまでや ....
息が落ち着かない
頭痛がする
もう2週間ぐらい続いている
真夜中頭痛で目をさました
病院へと車を走らせることにした
居住エリアを入れて脳神経外科、急患、夜間で検索し
....
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
タイムマシンについて瞳を輝かせ話せるような大人でありたい
元旦にストップウォッチを押しましたそれぞれの時にあだ名をつけて
たくさんの涙が流れた夜が明け四百七年目の朝が来る
殺されることもなく
太陽に照らされて椅子から転げ
ぼくは仔犬に看取られた
妻と踊ったワルツ
娘に教えたワルツ
甥に継がせた椅子
この島の太陽は
けなげな生 ....
金木犀の花を瓶に入れ ホワイトリカーを注ぐ
ひと月ほどして 香りも色も酒に移った頃
金木犀の花を引き上げる
その酒は 甘い香りをたぎらせ 口に含むとふくよかな広がりを持つものの まだ ....
汚れきったダイヤモンドを
土の中に隠し持って
ひたすら澄ましていた
ずっと澄ましていた
不自然な清らかな微笑みを
見抜かれぬよう
震えていた長い冬
誰かがきっと待っていたのだろう
無条 ....
胃が強い前田は
葛西と対決するために
山道へ向かった
ロバを乗りこなしても
山道は遠かった
前田のルーツは鰓で
魚かもしれなかった
渋い顔をしながら
葛西と対決するために
ロバに乗っ ....
幼い頃から
ぼくは時計が大好きで
何時も秒針を眺めては
朝日に光る産毛の中に
満足を覚えていた
117の電話を聴いて
今も正確さに
その美しさを享受している
多分ぼくは前世にお ....
私は中学を出て、友人の家を転々としながら生きていた。時たま家に帰ったけれど、親は何も言わない。マンションの台所のテーブルやそこらには、たっぷりの食事やおやつが大量に何日もそのまま置かれ、腐って匂いを ....
孤立
は
死病
だ
人は人と
繋がらなければ
生きていけない
のに
金を持って
いないと
キリストだけ
を信じて
いないと
健康で
いないと
胃ナイト
クエネェシ ....
マーガレット色の街灯が
午前三時の路上で
墜ちた月のように佇んでいる
ジンの酔いは
俺のこめかみを
左から右へ真っ直ぐに射貫いて
思考がそこから全部漏れていく
....
Ⅰ
私は人間ではない
生物でさえない
生きているのに
Ⅱ
私は一本の直線だった
貴方のことを知りたくて三角形となった
私のことを知りたくて四角形になった
いくら角が増えても角(つの ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
....
「笹舟」
ほそくふるえる茎をくわえて吹いてみた
ちいさいころの夕焼けが鳴った
{ルビ百日紅=さるすべり}のあった空き地
少年探偵団のぼくが落とした時間
材木屋のある路地は行き止まり
ふ ....
真白な画面に
昨日の出し物が思い出された
ワイルドな田圃での
豊年祝い
裸踊りに酒がふるまわれ
私は控えめに生中だけを飲む
飲食店のストライキは
ストップした
これで心置きなく
少年 ....
土佐の海辺の村で
毎日毎夜薄暗い電灯の
野外畳の上にでんと座り
鍋に茹でられた貝という貝
爪楊枝でほじくり出して
それぞれに違う味覚
食い喰らい喰らい食い
瞑黙ひたすらに
味わい味わい ....
口笛のような
オカリナのような
電子音楽のような
みらいのような
懐かしい時代のような
内なる世界へ
校長がこの文化祭に掲げたスローガンだった
先輩とふた ....
まっ白で
海の波とうねりに
磨かれた貝の
欠片を集めて
ぼくはオルゴールを
つくった
貝でつくったオルゴールが
奏でる音色は
聞いたことのないメロディー
なのだけれども
ど ....
霜降りた田園のあとかたに
朝日の残滓が
それは早すぎる追憶
天涯より撃ちつけられる萎び
もう戻れない日々のなかにいる
最初からなければ良かった原発
誰にでもある ....
断崖絶壁を前にして
落石も気に掛けながら
桃太郎の里を目指す
空手の達人ヤンスエは
桃にかじりつきながら
相棒のEvaに微笑みかける
すばしっこい蜂に刺されても
ノアの大洪水で込み合って ....
障がい者が殺された
19人も殺された
殺人の理由がひどい
そんな理由なら
世界は俺をいらない
それでも泣きながら
歯でも食いしばりながら
誰かのために生き ....
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