金色の髪を巻き上げた君のこと
小さい頃から好きだったんだよ
一緒にいた時の思い出はみんな
素敵なものばかりだったはずさ
カール 君がいなくなるなんて…
カール 君がいなくなるなんて…
....
明日は長男の誕生日だ
生きていれば十一歳だ
たぶん生きていると思うが
確かなことは言えない
離婚した妻が家族ごと夜逃げしたのは四年半程前のことだった
離婚するに当たって当時高二だった ....
おい、みんなあ
声なき声をきいてるかあ
悲しかったり
つまらなかったり
みじめだったり
苦しかったり
そんなとき
みんなあ、声なき声をきいてるかあ
....
高架下に流れ込む
川は
いつも後ろ姿
追い越したくても余地はなく
一定の速度を保持し
行列を維持して
たどたどしく
けれど確実に
進んでいく
迷いながら
躊躇い ....
静けさ
ちょこんと
夜底に
座っていた
剥き出しの界、像なき界
それは決して混沌ではなく
何かを伝え何かを造形している
響き木霊し無限の力の生動する
もう一つの界、 ....
よく晴れた初夏の午後
家の庭で、ダウン症児の息子に
青い帽子を被せる
まだ{ルビ喋=しゃべ}れない5才の息子は
うわあっ!と
帽子を脱ぎ捨てる
部屋の中にはBGMの
ロックが流れ ....
かくも生きづらかった
彼らの声を聞く
声さえ出せなかった
彼らの文字をたどる
文字さえ綴れなかった
彼らの沈黙を察する
自我はもはや
虫の息
消えてゆくのは
超え ....
白い景色の中で回るメリーゴーランドに人はいない。
何かの気配を感じる朝はいつもより濃い目の珈琲を飲む。
人工的な村は閑散として涼しげだ。
そして私は今日もまた何かに迫られて過ごすのだ ....
雨が降っている
間断なく
なぜ 雨を物悲しく感じるのだろう
たとえば 勢い良く降る驟雨は 元気で精悍ささえ感じる
まっすぐで 常に潔い
でも 夜になり 家のなかで ひ ....
淡い知覚の海に
ふと あたたかな弾力
戸惑いながらも知らぬ間に
綻んで往く 原初の蕾
声音と面差しは波のよう
外から内へ 内から外へ
柔らかい殻を脈動させながら
会得して往く ....
薄く なまめかしい生を 朧にたずさえて
キミは 呼吸している
しみじみ キミは 黒曜石だ
意識する外界に ぶしゅと 放出させたものは
どんなにか甘美な夢でしょうか
キ ....
検収金額を改竄して不正経理処理
極秘図面は取り決めた場所以外の所に置きっぱなしだ
もちろんお客様キーマンから嫌われ
仕入先様からもまったく人気がなく
出張報告書は督促を経理から ....
いくつもの門を通り
いくつもの問を越え
理解と誤解をなだらかに重ねては
綴り合わせる 欲望の道すがら
まるで古い雑誌の切り抜きや色紙を
ぺらぺら捲るような 陽気な悲しみ
目深に被り直して
....
そんたく、かあ
雰囲気づくり
出たとこ勝負
なるようになるさ
神様は人間、だ
ホースで花や葉をかきわけ
土に水をさしていく
庭のお花に水をやる
ちい ....
咲いた翌日から続く
低温と
強風にも耐え
寄り添って直立を支えあう
ある日訪れる真夏の陽気に
結束は緩み
感熱性の花びらは
ひた隠してきた
雌しべ雄しべの位置をも露に
くろぐろと ....
ところどころ染みがあったり
生活のほつれを永遠に修復の終わらない遺跡のように身体に
こびりつけたまま時に非日常の夢を見る
晴れときどき詩人みたいな気がする日には
あえて蛙の被り物を棄てて芋 ....
ミモザかなレンギョウじゃなしなんだっけ
エニシダの花あふるるデイケアの窓
施術台ホットパックして昼寝して
デイケアで居残りをしてバカンスや
お帰りの体操曲は白樺だって
さぶちゃんに白樺って曲 ....
生きていくことの
ぬかるみにはまったの?
それで そこから
君の繊細な驚きに充ちた
生き生きとした漆黒の瞳は
何処まで持ち堪たえられるかな?
欺瞞に充ちたこの社会で
只忙しく生命が消 ....
優しく 優しく 優しくしたいのに ごめんね
電話の相手は不具合で私の灯火の余裕が吹き消されそう
テーブルの横でつかまり立ちを口を尖がらせて練習する弟
そしてやがて3歳になるお兄ちゃん ....
あなたをおもえなくなるような、
とばりが欲しい。
母を、父を、兄を、姉を、妹を、弟を、友を、師を、
家族という家族、親類社会たぐいの繋がりを、いったん綴じましょう。
....
貴女は秋のあの日、
夜明け前の碧い天蓋に
独り揺らめき身を投げた
硬く冷たい肉体を現に残し
何処までも独り遠く逃れ去り
貴女という魂は私の中で生き
私という魂は貴女の中で生き
何度と ....
きみのいた四ッ谷の町に
ぼくだけが今もいるよ
気持ちが津波にやられる
思い出作るしか出来ない
ぼくだけが一人いるよ
きみのいた四ッ谷の町に
優しいピアノでケンケ ....
流出する
わたしが
あなたの中に
あなたの温かな肉に
包み込まれ開放され
蕩けていく溶けていき
突き抜ける意識の脱落こそ
私という生きた魂の露呈
[響き澄んで 、 澄んで響き]
....
私はゴミに選ばれなかったが
ゴミを選んだ
主体的な目覚めに
鐘が付属する土曜日
二度寝の朦朧とした頭で
昼餉を食べる
午前中と午後の雨に
夕暮れには止んでいた雨
牛丼を食べる夕餉に
....
曇り空を見ていた
コンビニのベンチで
缶コーヒーを飲みながら
部屋に篭っていると
自らの身体の痛みに
意識が集中してしまうから
近所のコンビニのベンチで
ずっと空を見て座っていた ....
ツツジが溝にたくさん落ちてる
ハワイの楽譜みたいだ
橋から上流を見つめる
登山者たちとすれ違う
かわいた光の匂いかぐ
埃っぽいのはきっと汗
百年後も人は生きてるのか ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
心配していることなんてきっと
うんざりするほど感じているだろうから
心配してますアピールなんてしない
幸せを願っていることなんて
どうせ痛いほど感じているだろうから
言わないでおく
心配 ....
とっくに終わったよと
あきれ顔で南の国に言われそうだが
待ちに待った開花だ
長かった冬に別れを告げる合図だ
こんにちは
思い出を咲かせる
友よ
――黄金が憎いのだ
魅入られ 争い奪い合う 不動の価値が
金の卵を生む鶏は腹を裂かれて殺された
その輝きが飼い主を愚かにした
鳥でも蛇でもおよそ卵には天性の美のフォルムがある
それは新たな命 ....
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