表にも裏にも
鏡のついた手鏡を
ふたつの指で廻しながら
光ははじまりと終わりを行き来している
横の波が
縦に重なり窓を覆う
外の冬を隠すように
布の鳥の羽音が積も ....
夜は絶え間なくやって来るこころの襞に
おとことおんなは何時もばらばらで
それは覚束ない幼児のあゆみのようで
ときに滑稽を誘うものかもしれない
きのうの残骸からきょうが算出されるわけでも ....
氷の針が心臓に突き刺さって苦しいと思うとき 海から全ての海水が巻き上げられてぼくの口へ吸入器のように入れられるとき きっときみはひとつの歌を口ずさむ ひとつの祈りを口ずさむ、ひとつの海の駅名を口ずさむ ....
夜が明けるまえ車を出した
帰る道がわからなかった
なのにライトが道を照らしていた
タバコを求めるためだけに酒場にはいった
おととい加齢臭のおとこに7時間拘束された
む ....
マジで庭に
スミレが咲いて居た頃の
記憶が自由に蘇る
ラーと言う太陽神が
ピラミッドを連れて
でも先端部分だけは取れて居たので
先端部分は
スミレで間に合わせた
田圃に遺灰を撒いて
....
俺は朝から何も食べていない、
ひたすら吐き気の塊だった
静けさに沈む
何もない
静けさに沈む
足場を欠く
俺の肉体と意識は解離したまま、
春の芳香をひたすら嗅いでいた
それ ....
父の背中
53年の背中
もう隙間がないくらい
父の背中
背番号53の背中
数字がぎっしり埋まっている
その背中を擦ると
数字がぎしぎし唸り出す
私が石鹸で流せる ....
大切だ、ぐらいでいいのに
それ以上の気持ちになるなんて
それはまるで
憎むひとを
殺すチャンスを与えられてしまうようなものだ
想像することもおかしい、ぐらいなら
押 ....
黄金の虫が
炎に包まれ
檻の中から
飛び立った
見学していた
子供達の間から
歓声が上がった
黄金の虫は
ドーム状の
天井近くまで
舞い上がり
ふらふら堪え揺れ
すっと力尽 ....
こどもたちは みな せなかをまるめて
せなかをまるめていないのは みみずのこどもくらいです
どのこも せなかをまるめて 卵やおなかの中で すごします
拡張現実を手に入れた にんげんのこどもも
....
音楽は子供組が舐める風邪シロップみたいなものなんだって
遠い昔にいた偉い人がそう言ったんだって
いつかのあなたがぶっきらぼうに教えてくれた
わたしは中古の楽器を担ぐあなたについてまわ ....
睡眠ぐ城に通って
かれこれ数十年になろうとしているが
欲望の肥満体質はいっこうに変わらないようだ
むしゃ修行も必要とやってはみるが
腹の虫はなかなか剣に収まらず
相手に具の音も出ない ....
遠くの情景に
ひとまず別れを告げて
内なる心象に目を向ければ
喜怒哀楽と
それらに紐ずけられたものどもが
溢れてくる
それらは、別々に現れるのではなく
万華鏡で回し見するみたいに
....
今日は。
昨日の。
明日ではない。
明日は。
永遠に。
やってこない。
時の果て。
まあるい。
星の。
いのちは。
今日を生きる。
だけ。
あの日を。
越えて。
....
地球の音がする
自転の音がする
それは公転の音かも知れない
触りたい
影響をあたえたい
おなじことをして欲しい
厳しい寒さからあなたを護りたい
破片からも ....
夢のなか昏い洞窟のしたたり落ちる水滴と
森の朝の露が合成されてぼくらは生まれた
やがて酒場のにぎやかで気怠いピアノの鍵盤を踏んで
自分が誰だか気づきはじめるか忘れ去ってしまうかの
どちらか ....
あやとりを繰り返す
かたちを変えながら
手首を噛むと涙があふれた
哀しみ
届かない星々の煌めきの際
かたちを作りながら
あやとりを繰り返す
並木道
....
椅子取りゲームに負けた冬が
白い涙たくさんこぼしてわめいている
おうちはどこ
おかあさんどこいった
おとうさんどこにもいない
ふきのとうが
可哀想にと探してくれ ....
生まれたら
かならず死はやってくる
苦しくても
痛くても
恐れることはない
再生される生命に
大きな夢を抱き
それを知ったなら
幸せはやってくる
一人で生まれ
一人で死んで ....
絡めあうゆび
傷だらけのたましい
ふたりぼっち
ビルと家々との間に
はんぶんの月
体重かけていいですか
あなたは軋むかも知れない
熱と匂いを吸わせて下さい ....
ブラックホールに吸い込まれた
星雲は
真新しい宇宙に出現し
新世界を構成する
ぼくは永遠列車に座り
真っ赤なリンゴを抱え
星巡りの歌を歌い
失われた友を待つ
ぼくが来世に生まれ ....
あなたのせいという
急速な風に吹かれて
青葉がつぎつぎと落ちるように
暦が落ちてゆきました
あなたのせいという
見えない伝書鳩が
ひと息いれる暇もなく
夏の星座の下を行き交いまし ....
大きな箱だった
膝を抱えてすっぽり隠れられるほど
そんな立方体を展開図にして
悲しみの正体や理由
いちいち解説してくれるけど
「まったくなぐさめにならない」 そう言うと
《なぐさ ....
はる地球の回転が速まるせいか
わたしは立ちくらみして
光は速さをなくしたみたいになる
だからかはる 風が軽くなりすぎて
わたしの姿は光をうまく受けれなくなり
わたしの影はどこかへい ....
最終連は
とうに終わっていても
締められた言葉は
いっこうに完結するようすもなくて
視線は
空を漂う余韻の行き先を
見つめている
その時
一羽の冬燕が目の前を横切るも
地面に落ち ....
なきたいときはなきなさい
なにもがまんするひつようはないんだよ
じぶんでじぶんをだきしめて
つよくつよくだきしめて
ひとりでなくのはわるいことじゃない
だれかがこういっていた
なみだは ....
インスタントラーメンと目玉焼きぐらいしかつくれなかったが
いつしか肉ジャガが美味しくつくれるようになってしまった
かぼちゃの煮物と筑前煮と筍の土佐煮にきんぴら
変化は世の常ではあるが妻と離別 ....
幼いおんなのおなかにシワが走ると
年老いたおとこのおしりにはシワがはいる
そんなことはまるでついでのことで
ただ大切にするという約束を果たすだけだ
人肌のきゅうりは爽やかで ....
流れ来る流れ去る
流れ去る流れ来る
巨大な光の樹幹、
廻り続け
外形が崩れてゆく
すみやかに なすすべなく
俺の呼び声が聴こえるか?
憂鬱な一日、東京は晴れ続けて
外形が創られ ....
腰が痛くて歩けなくなっても、
恐怖にすくんで脂汗かいても、
手が訳もなく震え続けても、
全てを失い意気阻喪しても、
大丈夫、大丈夫だよ
生き抜く意志さえ失わなければ
全てを学ぶ機会と受け止 ....
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