あなたの微笑み
落ち葉を踏みしだく音のよう
深まるほどに
冷たくなって
高くポプラの梢を揺らす風
渡らなかった深くない川のせせらぎ
なにかが去って往く
色鮮やかな痛みを灯して ....
ヒビキ音塊トナッテハ解体サレ
捻られ屈曲し伸びる音
歌い出す語り出す
踊りながら
飛び跳ねながら
黒光りする縁をナゾリ
時の窪みを穿ちエグリ
耳壁を突き破る
五感の縛り突き破る
燃え ....
眠れなくて
眠れなくて彷徨う廊下を
深海魚のように
喫煙室で夜が明けるのを待ち
ぬるい珈琲を啜りながら
紫煙を燻らせ
刹那の夢に溺れては
覚醒の痛みを繰り返す
孤独という麻薬は ....
あらかじめ充たされた{ルビ紅葉=こうよう}の場所は
ただ ここに ある
風に吹かれていることにとらわれず
枯れ葉になることにとらわれず
ただ ここに ある
蛇口をひねれば水がでる
その ....
深い
深い水底に
白骨と化した彼は
舵輪を握り締め
遠くを見据えながら佇んでいた
時折深海魚が目の前をゆらゆらと通り過ぎ
彼の頭蓋骨が優しく頬笑む
艦長は静かに椅子に座り
今は ....
空が教えてくれるはず
いのち本来のあり方を
だからこんな穏やかな秋の日には
青く輝くひかりの空へと
いっそ身投げしてみたい
わたしはそう、思うのです
秋の蛇口をひねると
空虚がぽとりと落ちてくる
管は水平に都市の闇を這い
水源地は{ルビ紅葉=こうよう}で充たされている
空虚で顔を洗うと
頬がすこし紅くなる
正直な肉の反応に
つ ....
誰かを探す
竹林の静謐に
池袋の喧騒に
アラワレナイ
現れはしない
のか、
もう二度と
洗われたいんだ
その見守る微笑みに
ホッと ホッとして
冷気に目醒て息しながら
な ....
あかい傘ななめに濡れた路をながれ
雨音のつめたさに背中を欹てながら
遠景へ漕ぎ出して傍の違和をぼかす
迷い鳩に差し伸べた手の仕草の嘘を
街路樹の間から無言のまま見つめる
おんなの ....
夜の帳おり
扉が開いていく
次々と開いていく
が、
何もない
真っ白な虚、真っ白な虚
みっしり充満するばかりだ
俺は恐怖に襲われ
恐慌の際の際で
時の矢となり
疾駆疾走しながら
....
雲は汲む
雲は汲み溜める
雲は零す
晴レル。
雲だから汲む
雲だから汲み溜める
雲だからか?零す
晴レル。
そして雲が汲んだ
....
鼻毛というものは
不思議なものだ
どんな美人でもイケメンでも
鼻毛一本で幻滅してしまう
みんな鼻毛だけは
気をつけないといけない
男は口では
女にかなわない
男は言えないのではなく
いちいち言いたくないだけだ
そういうことも知らずに
調子に乗って「なんでえ?なんでえ?」
と追い詰めていくと
思わぬところで手が出る足 ....
通り過ぎてゆく人々
通り過ぎていった人達
何なのだろう、何だったのだろう?
あれらこれらの出来事が
今は嘘みたいに消え去って
僕は嘘みたいに落ち着いて
ただ目を閉じる、ただ目を閉じる
あ ....
広い邸宅など要らない
ベッドは
身体を横に出来るスペースがあれば良い
食卓には
茶碗の置ける隙間があれば飯は食える
とうそぶいて
新聞が 雑誌が 広告が
テーブルに積み重なり
ベ ....
溢れる海の{ルビ思想=おもい}を
透いた生命の鼓動にのせて
ぼくはきみに語りたい
{ルビ灼=あつ}い 熱い視線の息吹に恋い焦がれ
ひとり 沈んでいった人たちのことを
ふるえる ....
大切な人が死んだとき
勿論、ぼくは生 ....
そろそろ すとーぶだしてよ ともいわない
きみは けなげだね
ねどこでほんをよみだすと
かならずわけありがおでじゃまをする
うるさいけど にくめない
たまに てつがくしゃのように
あおのさ ....
そんな月夜のある晩に、私はいたたまれなくなって外に出たのだった
月はぼんやりと白く輝き、雲がかかっているのがはっきり分かる
「月に叢雲かぁー」 あたりはしんしんとして
電信柱さえ太い生きた樹々の ....
沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けたまま
難破船のようにふかく朽ちていく
沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てをむなしくも夢みて
....
心臓に張巡らされた無数の血管のように
言いたいことがあるのに
それが言葉にならないって
きのう電話できみに話したね
勿論、お互いの苦悩や孤独のこととか
きみへの愛や関係性とかい ....
深刻ではなく 淋しい瞳をもった
サーカスのピエロ
ぼく きっと 透きとおった
この時代の住民にちがいない
古代マンモスのふかい皺をもった
象たちが踊り 踊らされる
過 ....
円錐形の反射が
カーテンの隙間から潜り込む
あれは外灯だろうか
あまりにも揺れていて
息づいているようだ
南に居る嵐のせいで
むせかえる夜中だ
はりついたシャツを ....
秋の花火/湿気る前に
秋の花火/湿気る前に
引き出しに入っていた
夏に使い切れなかった花火
力を持て余してるのに
発散する場所を知らない若者のように
袋の隅で数 ....
幼い日
ふたりで日向ぼっこをしながら
影をみていた
ぼくの黒い指先が
少女の頬に触れようとする
と 触れるその直前で
影だけがふやっと膨らんで
ぼくより先 少女に ....
砂漠の向こうでランボーが
蜃気楼に投網を打っている
やつめうなぎが川底ではぜ
永遠の焦げる臭いがすこしする
酸素漂白濾紙をおりまげて
にがい液体にわたしを落とし ....
胸奥に
オドロキ襲えば
世界は在る
在る世界
気力の萎えて
色褪せる
魂の
震えは麻痺し
狭間に立つ
狭間に立ち
眺める界は
遠く近く
キズケル ....
峰と峰とのつなぎ目に鞍部があり、南北の分水嶺となっている
古い大葉菩提樹の木がさわさわと風を漂わせる
峠には旅人が茶化して作った神木と、一合入れの酒の殻が置いてある
岩窟があり、苔や羊歯が入り口 ....
一篇の詩をつづりながら
多くの迷い道を選びきれないでいる
夜 飼い猫の眼が光る
かれも ぼくをみつめている
散乱した独りずまいの部屋に
椅子がない
神棚のみずが ....
まだ生きていた蝉オングストローム
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