五円玉に麻紐を通したペンダント。
母に馬鹿にされ、小さな家出、幼き夕方。
どぶ川に浮かんで漂う人間のクズ
何処かで殺害されてから深夜に運ばれて川に投げ込まれた
と推察された
男には相応しい死に様だった 誰からも同情されないだろう
寧ろ犯人は称賛されるに違いなかった
....
不在にだって好奇心はありますよ
「植物たちの呼吸が羨ましい」
はじまりはその程度だったと思います
その程度のはじまりから
この身体にはひとりでに不在に返る約束が
しっかりとあるのです
....
大地に濡れ
人を買った経済よ
お前はただ無限に略取されればいい
海の押し寄せる血管に
人の声は明け渡され
法規の群れが押し寄せる窓辺に
季節はその最後の一塊を溶かす
ほろ、ほろと
耕さ ....
行き方を聞いても
なかなか辿り着けないくらい
街の入り組んだ場所にある
何十年も前からこの場所で
良い香りを漂わせている
初めて来た時
何度も道に迷ってしまい
通りすがりの人に聞 ....
オーケストラの調律は
音程の不安定なオーボエが担うという
理由はただオーボエの音が大きいからだ
その440HzのAの音によって
オーケストラのすべての楽器は調律されるが
そのAの音が正確 ....
呑み込もうとする強風に生きてきた今までが夕闇の中へ広がって胸に湧く蛆虫が首筋を通り冷えていく死体の裂いた腹の中にマッチを差し入れて今朝クーラーボックスの中で俺と握手をして別れた
月の夜にはからすが舞う
かけたままの心には蟋蟀が鳴いている
無垢な地図帳には地番がない
条件は
いつだって
みたされないものだ
要件は大概なおざりにされ
描き続けること
想 ....
お互いが同じ快楽共有す
凸と凹男と女の関係は
失敗を何度か重ね性交し
テクはないただがむしゃらにいたすだけ
営みがいとなまれる夜雨も降り
人だって発情期には会うたびに
....
自殺を図った午前四時
私はいよいよとうとう死ぬのである
遠のいていく意識の中
私は私の叫びを聞く
私は必死に呼吸を続けていた
脈は、心臓の鼓動は、
確かに続いていた
私はなお ....
ありがとう。
むきだしになって。
きみはだれかをまもっている。
ありがとう。
こころにかわって。
きみがかわりにうけてくれている。
紅葉は、紅くなるんじゃない ....
松川の
駅に到着した方の
きらめく白刃陽光を受け
変わらない
昔を思い出す癖は
スプーンを使って流し込むだけ
次の人
捜す力も気もなくて
悪人だと知るただれる月夜 ....
ああ、窓ガラス越し
物凄い空の青が広がって
自分が何処に居るのか
わからなくなる
地球、いや宇宙
そうだ、此処は地球という
宇宙に浮かぶ場所なんだ
まぁるく回る星なんだ
それにして ....
天空を白雲が流れていく
非常な速度で陽を受けて
地上では彼岸花が鮮やかに
赤く揺れて咲いている
一輪、二輪、三輪と
用水路沿いに咲いている
人々は歩いていく
いつもと変わらず ....
頑張って冗談を言うから笑ってよ。
右上5番の銀歯、僕に見つかっちゃいなよ。
いつか消える
いつか消える
そのいつかが果てしなく
遠いと思われて
早く消えたい
と うたってみた
月日は流れ
そのいつかが
もうすぐそこにまで
迫っていると感じる時
....
窓ガラスを伝う雨
樹木は滲み油絵のよう
秘密を漏らすまいと
ずぶ濡れで走り続けた
若き日のあなた
尖った顎
靴の中の砂粒を取る間も惜しみ
聞えない声を聴くために
人々から遠ざかり
た ....
地面で眠る古い足
死なない兵隊に花束を
積み上げる双葉の
匂いに酔っている
花束がどうしても見つからず
ガソリンに指を浸している
うるせえ、亡霊
うるせえ、亡霊
うるせ ....
一日の終わり、日めくりカレンダーをビリッと。
その紙を正方形に整えて、今日は今日の鶴を折る。
ビルとビルの間に
空が四角にくり貫かれている
青だ、真っ青な青
向かいの串カツ屋は今日も元気に営業している
提灯が赤、黄、赤、黄、
呼び込みの兄ちゃんが一人
風が吹いている、大きな ....
郵便受けの側に男が立っていた
誰なのか聞くと
まぼろしです、と言う
最近のまぼろしは良く出来たもんだ
そう感心しながら
差し出された朝刊の尋ね人欄を見る
今日も僕は
行方知れずら ....
緑の木葉が揺れている
私は大きく息をする
一人の孤独なわたくしが
初秋の大気を思い切り
吸い込み、黄金の日輪のなか
自らの不安定さをのりこなす
よすがを必死に探している
広がる雄大な ....
震えが止まったから
詩を書こう
今日は雄大な青空が広がっているから
その素敵な一瞬の光の下
年老いていく日々残余を祝福し
孤独死すら受け容れる
そういう人に私はなりたい
....
なんにもない
なんでもない
ぽかんとあおぞらひろがりまして
しずかなかぜがふいている
むおんのかぜがふいている
なんにもないわたくしは
まちのけんそうのただなかで
たいこのお ....
西陽が射し込むイートインで
コーヒーを飲んでいるわたくしに
黄金に染まる街並みが
光溢れさせ迫って来る
その瞬間瞬間の美しさ
この星の大きな優しさに
包まれ私は法悦となる
地球の青と ....
通り過ぎていく物売りの声が
私を非難したのかと
過敏になる窓の隙間から
秋風がするりと
いかにもなれた振る舞いでカーテンを揺らし入り込む
今直面している重大な問題を
言い当てられた気 ....
標識は未だにない
グーグルマップも役に立たない
振り返ってみると
そこそこに長い路が見える
もちろん数多くの十字路も
その十字路で
選ぶ路を間違えたことも
いまになれば分かる
でも ....
開かれる
空の瞬き青々と
白雲棚引き
行方は知らず
哀しみ溢れて
秋風の吹く
北向きの窓から
ふいに
秋の
風が産んだ子が走り抜けていく
本のすきまから伸びた
栞のしっぽが揺れ
亡くした猫のしっぽも揺れ
過去が
耳なかでちりりんと揺れる
寝転がると
窓い ....
風呂上りに
歌舞伎フェイスパック
ほてる顔にぴたっと貼る
冷たいシート
目と口をそっと出す
鏡に現れたのは
赤い熊取の入った顔
この顔で表を歩けたら
「暫らく」と声をかけ
ポーズ ....
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