「死体は喋らない」
死体は愛を語らない
死体は不平を言わない
死体はデモに行かない
死体はイデオロギーを持たない
死体は本を読まない
死体は飢餓を知らない
死体は郷愁に溢れない
死 ....
一見すると簡単で、実は難しい
鉄の錠前の鍵を見つけること
なにせ探す本人は目が悪いと来ている
ああ、どこにあるの
まずは目を治そう
そしたら鍵が見つかるはずだ
うどん屋で素うどんを頼んで
....
いのちとは
こころとからだのことだろう
よわくてもろいものだろう
だってぜったいしぬんだから
いのちがよわいものであることぐらい
こころとからだがもろいことぐらい
....
私はぐだぐだになって生きて
ぼこぼこになって死んでいけるほど
自由なのだ
傷つけ傷つき
特に正しくも
悪くもなく
いつかの準備のために人のなにかを
見過ごすこ ....
やさしさが微熱をともなって
別れのための雨を育てている
窓の雨だれのしみのように
眼球のネガに面影を与えている
あの日の穏やかな君の寝顔
ふりむくともう風景になっている
わたしの中枢へ ....
腹立ちまぎれに
太陽に目がけて投げ入れた叫びは
放物線をかいてじゅっと蒸発し
陽と一緒に水平線に飲まれて消えていく
海辺の彼女は
「だからいったのに」というそぶりを見せ
つまらないもの ....
髪の毛でふざけるのに飽きたら
諦観をもってこちらにおいで
シャンソンはもう進化することはない
ただただ伝統のなかで呟いているだけだ
アンティークな森の向こうで遠雷が聞こえる ....
から だった
前進しようと思えば未だできたが
から だった
寝ても覚めても
あんまりカラカラと鳴るばかりで
もう嫌気がさしちまった
(なのに夢の空はまた
淡い淡い紅に染まり
何 ....
乾いた滴の跡が幾つも
木板の上につづいている
溝の流れから逃れた子蜘蛛が
葉に残る滴を見つめている
遅れてばかりの日時計に
忘れた夢がよみがえる
水彩の音
水彩の ....
面倒みいい面倒くささの
掛け合い
こんとんとんと
とことんとんと
精液は爪やすりと同じ
骨になったばかりの薫りには 面倒は居無くなり
冷えた灰からは ....
想像のピントを合わせたい
白鳥のような美しいものへ思慕を寄せて
栗のようなとげとげしい厳しさへの愛情を思って
ぶれたイメージでは生きている甲斐もないから
失われていくものを保存したい
分かれ ....
子供の遊ぶ声
木々の梢にとまった名の知れぬ小鳥のささやき
どんな辞書でも計れないほんのすこしだけの幸福
一本の木はそんな幸福を見つめてただ沈黙している
鳥の中に鳥がいて、犬の中に犬がいる
そ ....
黄昏に錆びた空
淋しくて泣けてくる
心細くて泣けてくる
あのメロデー
聞こえるたびに
こころ震えて泣けてくる
ひとりですか
ひとは独りですか
上手く誤魔化し生きても
最期は
独りで ....
孤独
さみしさ
なみだに濡れ
生まれる詩がある
試練
つらさ
苦悩の果て
生まれる詩がある
歓喜
よろこび
感謝と共に
生まれる詩がある
喪失
かなしみ
暗闇の ....
自転車はよけなかったが
携帯電話はよけた
モーツアルトのピアノソナタは
K.(ケッヒェル番号)310と330で
イヤフォンで聞いて居るうちに
幼稚なところにたどり着いた
途中会計事務所が角 ....
僕たちは
宇宙にうかぶちっちゃいぱいの
トッピングなんだろうか
僕たちは
寄せ木細工で設えられた社会という
調度の構成要素にすぎなくて
いつも忙しくて小さな不満に支配される王国の
....
透明な何かがかすめた
それで十分
脳は甘く縺れる痛みの追い付けない衝撃に
砕かれ 失われ
死に物狂いで光を掴もうと
欠片たちは
凍結されることを望みながら
永久に解読不能
時間の延滞の ....
金色の髪を巻き上げた君のこと
小さい頃から好きだったんだよ
一緒にいた時の思い出はみんな
素敵なものばかりだったはずさ
カール 君がいなくなるなんて…
カール 君がいなくなるなんて…
....
明日は長男の誕生日だ
生きていれば十一歳だ
たぶん生きていると思うが
確かなことは言えない
離婚した妻が家族ごと夜逃げしたのは四年半程前のことだった
離婚するに当たって当時高二だった ....
おい、みんなあ
声なき声をきいてるかあ
悲しかったり
つまらなかったり
みじめだったり
苦しかったり
そんなとき
みんなあ、声なき声をきいてるかあ
....
高架下に流れ込む
川は
いつも後ろ姿
追い越したくても余地はなく
一定の速度を保持し
行列を維持して
たどたどしく
けれど確実に
進んでいく
迷いながら
躊躇い ....
静けさ
ちょこんと
夜底に
座っていた
剥き出しの界、像なき界
それは決して混沌ではなく
何かを伝え何かを造形している
響き木霊し無限の力の生動する
もう一つの界、 ....
よく晴れた初夏の午後
家の庭で、ダウン症児の息子に
青い帽子を被せる
まだ{ルビ喋=しゃべ}れない5才の息子は
うわあっ!と
帽子を脱ぎ捨てる
部屋の中にはBGMの
ロックが流れ ....
かくも生きづらかった
彼らの声を聞く
声さえ出せなかった
彼らの文字をたどる
文字さえ綴れなかった
彼らの沈黙を察する
自我はもはや
虫の息
消えてゆくのは
超え ....
白い景色の中で回るメリーゴーランドに人はいない。
何かの気配を感じる朝はいつもより濃い目の珈琲を飲む。
人工的な村は閑散として涼しげだ。
そして私は今日もまた何かに迫られて過ごすのだ ....
雨が降っている
間断なく
なぜ 雨を物悲しく感じるのだろう
たとえば 勢い良く降る驟雨は 元気で精悍ささえ感じる
まっすぐで 常に潔い
でも 夜になり 家のなかで ひ ....
淡い知覚の海に
ふと あたたかな弾力
戸惑いながらも知らぬ間に
綻んで往く 原初の蕾
声音と面差しは波のよう
外から内へ 内から外へ
柔らかい殻を脈動させながら
会得して往く ....
薄く なまめかしい生を 朧にたずさえて
キミは 呼吸している
しみじみ キミは 黒曜石だ
意識する外界に ぶしゅと 放出させたものは
どんなにか甘美な夢でしょうか
キ ....
検収金額を改竄して不正経理処理
極秘図面は取り決めた場所以外の所に置きっぱなしだ
もちろんお客様キーマンから嫌われ
仕入先様からもまったく人気がなく
出張報告書は督促を経理から ....
いくつもの門を通り
いくつもの問を越え
理解と誤解をなだらかに重ねては
綴り合わせる 欲望の道すがら
まるで古い雑誌の切り抜きや色紙を
ぺらぺら捲るような 陽気な悲しみ
目深に被り直して
....
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