すべてのおすすめ
*
目覚めると音のない世界
カーテンの隙間から灰色の光が射している
明けていくカーテン越しの光のなかで
青磁の肌が鈍く輝く
この部屋はこんなふうに朝を迎えるんだね。
僕は君を置き去りに ....
ふき消して
かんづめの
まるいぎざぎざ に
暗闇 うつす
切り続け やめた場所
ぱくりと 走り去った
鈍い 刃
なんだって
かまわない
元気かときかれれば
元気だ ....
少ししんちょうに
歩いている
あまりちゅういしすぎると
信号につかまって私
からだこなごなの
散弾になるよう
だからもうすこし
つまさきをあまり
感じすぎては行けないわたしの通りに
....
公園の真ん中に
ぽつんとジャングル
あの
お人よしの頂上に
登ってみたら
気がすむのかな
それとも
もっと複雑な
迷路だったらよかったのかな
そこは
夕陽の沈むのが
ほんのちょっ ....
ブラジルサントスの珈琲は飲む人の注意力を増し
キリマンジャロだかブルマンだかは飲む人をリラックスさせるのだそうで
でもそんなことどうでもいいなカフェインが欲しいだけだよと
夜九時半の駅前ローソン ....
数々の試練と黙殺の流体とドシャ崩れの中をミズコはただ直線に歩いてきた。歩いてきた。眼をしかと開けと父のどこか暗い部屋からの通信を傍受しながら。直線とは全く架空の任意の点を結んだものだから、彼女は生きて ....
ちょうどいい
ぐらいの悲しみをちょうだい
とんがりすぎてない
痛みをちょうだい
そしたら
きっと 幸せだから
笑ってばかりは 哀しいし
泣いてばかりも 可笑しいでしょう?
....
ひとはみな
愛の途上でおわる
どうせいつか
消える身なので
大差ないが
若い死にふれると
おめおめ
夭折もせずに生きのびて
うしろめたい石である
わたしの
古傷がしめやかに疼く
....
まず
弱いヒトを見つける
弱いヒトは
遠巻きに見ているのですぐわかる
弱いヒトを
包み込むように
それでいて
背中を見せながら
ことばを
ことばは水のようにアナタを包む
....
夜更けに
タンタンとタイヤを鳴らし
鉄の階段を降りて
僕の自転車が
外へと出掛けて行きます
(ほんとうは僕の自転車ではない
きみから借りたままのもの)
マウンテンバイクだから
....
雨音で目をさますと
玄関のドアを網戸にして
ベランダも網戸にして
家中開け放す
雨の空気を
家中に蔓延させる
雨日儀式
内外の境界を曖昧にする
こうす ....
電車に駆け込む、37℃の平熱
昨日の夜食は暴力のオブラート包み揚げ、
鼻つまんだら食べられるけど、おいしくない。
電車の中はオンザステージ、ヒットパレード
ファンクにきめる少女たちを讃えろ ....
ひめや こはく
ゆう まつ ひ
あらがう ねね
つらつつ おく
とかそ やえせ
ちさら まろの
こそこそと
チャットに入る
そこに
見知った名前があるから
こんにちわ
と
私は言う
あのう、あの作品
よかったですね
好きです
ほんと?
ありがとう!
私が
伝 ....
もういいだろう
コーヒーカップを片付けようとした
コーヒーがコーヒーではなくて
モーイーだった
モーイーなんて
くだらなすぎる
だじゃれにもならない
飲み乾してやった
....
*************
=月に晩酌=
さらりと抜ける秋空に
思い出すはあなたの温もり
闇夜に続く寂しさは
ほろ苦い珈琲の温もりを
杯にかえることのできない痛み
....
「メリーゴーラウンド」 9
砂
砂が全部落ちてしまっても
ひっくり返せば
また最初から始まる
のがとても魅力的だった
いくつも窓ぎわにな ....
あなたは知っていましたか
すべての細胞は
自殺するということを
遺伝子の片すみに
小さな時計が隠れてて
もういいよってささやくと
それきり細胞は
すべての作業を放棄して
....
最近どうも
君の胸に鍵をさすことができない
手にした鍵を
むりに入れてもしっくりせずに
疑心暗鬼な手つきで
がちゃがちゃと
右や左にひねっては
君の表情を曇らせてばかり
だ ....
二十年ぶりに訪れたその町は
すっかり変わり果てていた
とはいえ
うるおぼえながらに車を走らせる
と道路沿いに赤い自販機が目にとまる
そういえば喉が渇いた
車をとめて自販機の前に立つ
する ....
ずっとそばにいるよ
と
耳たぶをふるわす
午後のビーチでは
ねそべる
しらないオンナノコと
たのしくおしゃべりしてた
ただ
それだけの
あなたがささやく
フロリダの夕べ
....
今夜は
無性に 胸のあたりが苦しいので
闇の中
家の裏山に ドラえもんを探しに行く
おそらく
好物のどら焼きをえさに
すずめを捕るような仕掛けで
竹篭を逆さにしておけばよい よう ....
マジックの話をしよう、と「み」はいう。
床の上に毛布を敷いただけの寝床で、腹ばいのまま、
三枚のなかから、必ずお前が選ぶコインをあててみせよう、と。
そういいながらとても愉快そうに背を波打た ....
開かれた窓が必ずしも
空ではないとゆう君が開く
歌集の背景も部屋ではないとゆう
綱渡りな瞬間が連続している
今日は一番新しい日
みんなに会いに行こうと思ったけど
道はすべて絶たれて ....
九歳の子供が背広を着て介護ホームで
おじいさんしてる
そして
九十一歳の白装束を着た人が
火葬場の火の中で
おっぱいを吸っている
{ルビ晩餐=ばんさん}など絶えて久しい
誰もが膝を抱えてうずくまった夜に僕は
屋根の隙間から星を見あげてた
あかい、涙みたいにうるんだ一粒に
名前をつけようとしたとき
父さんが僕の髪をく ....
子供らがそらを指さして騒いでる
何事かと思いぼくもそらを見る
この角度でそらを眺めるのは
ずいぶんと久しぶりだ
見慣れたビルの屋上付近は
見慣れない広告でひしめいている
そのすき間ほどのま ....
遠いかなたに
かすかに見える光
暗闇のなかを
光源をめざして歩きつづける
つぎの一歩を踏み出したとたん
大きな穴にはまってそれきりかもしれない
とつぜんぷっつりと
光が途絶えてしまう ....
あなたは
あなたは
今何を思うの
車が走る
眼の表面にさけめ
脳の中のさかなめ
あなたは
あなたは
ぼくの言葉を
そのふるえを
感じるの?
疲れた肩に冷たい針
水平 ....
風のつよく吹く日には
惑星間電話で
火星に電話をかける。
受話器のむこうから伝わる
赤錆色した砂あらし。
その夢の原石のような響きに、
そっと
耳を澄ますために。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50