川っ縁のベンチに座りながら、父は鼻毛を抜き、息子は顎鬚を抜いている。
昼間っから開いている呑み屋を探し疲れて途方にくれていたのだ。
暑いからと言っても喫茶店などに入ってコーヒーを啜るなどという ....
野性らに歌謳わすほどに強くある
コロニーの都市満ち足りて自然なり
乱れたる人心が発す天変地妖
土曜の朝から
日曜の夕方まで仕事をして
家に帰ると
妻と息子が家の前で
途方に暮れて立っていた
買い物に行こうとして
鍵をかけて抜いていたら
鍵が折れてしまったのだと言う ....
その道を行くなら
襟足を伸ばせる
そこを避けるならば
安定と美の喪失
合図 送っては
悩ます間逆の壁
だけれど、
その顔、
裏切る、
予感
内心は瞼(まぶた)も
そちらに ....
鯵の開きってあのままの姿かたちで泳いでいるのかな
だなんて今さらながらにとぼけてみせても
私は私自身に過ぎなくて
迎え火で迎え
送り火で送る
ヒグラシの鳴く音に季節の移ろいを覚え
....
二本足で立つ老人の 孤を描いた中枢は
結末の骨をもって 循環の窓を射る
あらゆる愛と憎しみだった形は
一人ぼっちの空に抱かれて
今なお愛と憎しみとして連鎖する
高架下で眠る 鳩達 ....
夏の空が広く見えるのは
余計なものが流されているからだろう
小学生の頃の一番の友だちは
国語の教科書と学級文庫と図書室の空気
頁をめくったときの薄っぺらい音と
綺麗に並ぶ印刷の文字が ....
厚く
熱の積層する
太陽の谷間で
流水を浴びたいと
切望の淵
地虫は揚力を手に入れて
夏の途中、
蒸す草いきれは陰を追い
木々の葉をひるがえす
風もなく
....
その記録に関して
僕の記憶の倉庫には
僅かな記述でくくられた薄っぺらな本が一冊しかありません
でも、その本を開く度に
痛くて堪らないと
僕の中の良心が泣き叫ぶのです
痛くて、痛くて堪らないの ....
山に
煙みたいな雲が
かかっているのを見ると
これは
空のため息
なのではないか
と思うのです
雲は
雨を降らします
それは涙に似ていて
ため息は
涙の素なのだな
と思 ....
凧に乗る夢見し夜は雪の降り
晩夏のそっと過ぎゆく音が聞こえ
夜に信仰の大胸筋盛り上がり
たましいが擦れ合って
生まれた音は
いつまでも胸のきざはしを
昇り降りしている
忘れてしまおうと思った
夕暮れの端から
温かい闇を連れてその音は
何度でも訪れる
君の仕草が ....
東京のアパートの壁に
砂の黄色がかったタイル柄を
写真に撮って張り巡らす
壁の間を進めば
*
共同ホテルの看板はとうとう見つからなかったのだ
小さいだろうから
ヤシの木が顔を ....
いつかあたりまえのことを美しい言葉で書くことが叶うのだろうか
いつか美しいものをそのまま提示して成り立つ詩が書けるだろうか
ほんとうは人生の意味を掴みたくてたまらないのに
ほんとうは美しいも ....
ゆく雲が
君を求めてのばした蔓から
ふわりと咲いた雪の花びら
彼方を白く染めるものの
ひとつひとつの小ささを
ひとつひとつの儚さを
まるく含んだ湿り気が
花の波に匂いたつ
....
あれはまだ私が空元気だった頃
当時はまだ必死で愛の歌を歌おうとしていたせいもあり
それをこっそり聞いた人がいた
別に私も隠したつもりはなかったし
むしろ、聞こえればいいと思っていたくらいだ
....
青空を切り裂いて
どんな卵が産み落とされた
異国人が
日本の空に
きのこ雲をはらませた
生まれ出て食らい尽くす
風も涙も
溶けて飛ばされた
街も歴史も
焼かれてなくな ....
少し遅刻気味の進路
ミスを気が付いて自分を呪った
あの頃に戻りたいのはみんな同じ
いつの間にかに出来上がった
シークレットエンディングを
見るための条件は
どれも自 ....
つまらないことを
ひとつずつ重ねて
積み上がったところで
オーブンで焼いた
不満と愚痴を挟んだパイは
意外と良い出来栄えだった
ナイフを入れて切り分け
フォークを突き刺して
....
意味不明なことをわめき続けることに疲れた
幼い頃、ぐずっていると「言わんとわからんがい」と言われ
言わなくても分かる関係に憧れたけど
やっぱり黙っていては何も伝わらないことに失望し ....
蝉しぐれ木陰に落とす涼の数
南中の影短くて法師蝉
空近くなる横断歩道を渡るたび
090807
工程表をチェックする
好きなように出来るのは今のうちだけだ
楽しんで書きましょう
趣味の雑誌の解説に目を走らせる
好きなように ....
山の穏やかさ、
海の勇ましさ、
空の清らかさ、
土の温かさ。
神を信じぬ私にも
自然という名の天人は見える
神を信じぬ私でも
愚かな「人の進化」が辛い
....
親のいうことをきかないと死んじゃうからたいへんだ
きょうは花火大会
火薬のにおいをかぐために
ずらずら歩いて
親においつくために必死に歩いて
きれいだなあ花火
ゆがんだドラえもんきれいだな ....
累々とした孤独に石を投げる
カラン
と音を立てて、転がり落ちたのは
いつかの嘆き
降り積もる塵芥に 深き静寂の痕跡を読み取る
動かなくなった時計
指し示し ....
救済の太子の声が地鳴かな
大伽藍権威の虫はウジャウジャ
風は浜茄子に戯れて流砂の時
嘘をつく浄夜の月に影二つ
引導も渡せぬ坊主に戒名料
*引導=道案内する事。
仏法では仏や菩薩などが、迷っている
衆生を導き悟りに入らしめる事。
49日の法要は単なる金もうけ・・・
....
藍の闇、琥珀の星。
三日月の船が西に寄る頃、太陽の塔の石階段を陽の守人がゆっくりと上り始める。
金の弓を手に、まるで世界を起こしてしまわないよう気づかうように、
一歩ずつ、音をたてずにゆっく ....
水槽を抱えて
列車を待ってる
水槽の中には
やはり駅とホームがあって
幼いわたしがひとり
帽子を被って立っている
ある長い夏の休みの間
ずっと被っていた帽子だった
水の中もやは ....
始まりは雷落ち続けサードミレニアム
隊列の最後から来る者 我サタン
御堂にチャント響いて眠る堕天使
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100