ちょっと勇気いるんだよね
あたりを見回してひと気ないの確かめたら
ちいさな箱のなかへ素早く潜りこむ
ペナペナなカーテンを閉ざせば
箱のなかにはなんとも顔色悪い薄倖そうな女がひとり
あ ....
僕は今、月のパルス・エピデミアルム、病の沼に来ている
病の沼なんて、とても不吉な感じの地名だけど。
ここは月ではずいぶん南の地方になる
僕の銀色の船はこの病の沼の北西部、
....
市の幼稚園、小学校、中学校のこどもたちの絵が集められて
市の美術館に息子たちの絵も飾られている
息子たちにせかされて美術館に出掛けた
じぶんの成果を恥ずかしげもなくひとに披露したくな ....
この妄想第二頸椎66Bは
インジェクションブロー成形の
ポリプロピレン製で
UV&抗菌コートが施されています
くたびれた乳白色の外観はもとより
重量感や質感まで
平均的な成人男性の第二 ....
ぼくの町の
冬と春の境界は
一日で線引きされたように
唐突に 暖かな風が吹き抜ける
山に一方を封じられているものの
海からは潮の匂いとともに
サイタ川をさかのぼり
荒んだ寒風を
穏 ....
うぶごえをあげた春が、もう
街にすがたをみせる
通りの角から
にぎやか過ぎるその声音が、
あたしを助けにきてくれる
手をひくように
階段をのぼったら
勇気をほんのすこしばかり だして ....
たとえば小学生のころ
家族遠足でともだちの妹に
オウム小屋の金網に指をいれて見せたのは
ぼくだった
それをまねた彼女は指を失った
たとえば三年まえ
離婚も考えていな ....
二階の窓から曇る夜空を眺めている
降りだしそうな雨をむしろ望んでいる
雨に撃たれてしまいたい
世界に射抜かれる前に
この街を焼き払おうか
*** ** *
持ちきれないほ ....
ある葬儀の前に、
友人と珈琲を飲みに行く。
こんな機会というのもなんだが、
久しぶりの再会で
互いの変わりようについて話をする。
あいつは煙草と一緒にサックスもやめたそうだ。
俺は ....
春は私に重いので
春にあわずにゆきたいの
柔らかい風をさけるよに
夜の無音の中をゆく
春は私に重いので
春の言葉をきかないの
すべてを包むあたたかさより
ときおりの冷気がちょうどいい ....
人工的な空間に
とりのこされるような
ある春のいちにち
人工的な、というのは
花曇りの空もようと
コンクリートの
水を含んだ香りのことなんだが
ある春のいちに ....
自傷天才詩人の
ブラックモア君は
半端な綺麗事ばかり書くなと
僕を罵った
確かに
君の本音剥きだしの綺麗事は
美しいけれど
明らかに
臆面もなく格好つけていいのは
君のほ ....
気がつくと、俺は漂流していた
大洋のど真ん中に、俺ひとりだった
広い海は恐ろしいほど青く、そして黒かった
小さな板切れに横たわっていた
頼りなく波間に揺られながら
自分が置かれている状況 ....
苦笑まじりで
激しくうなずく街路樹
あきらめ顔で
でたらめに踊るビニール袋
恥じらいながら
身をくねらせるのぼり旗
慌てふためいて
路上で死んだふりをする放置自転車
....
日が長くなってきた
暖かい日がちらほらと
そろそろ学生遍路が道に迷い
路傍で空を見上げる頃か
蝉の鳴き声が聞こえる
まだ冬の終わりだと言うのに
耳鳴りだろうか?
幻聴だろうか?
....
春に近い
夏に通うころ
なまめく
てらりと
ひかる東京
銭湯をさがして
フーガで
はしる細い直線
民家
町工場
小学校
線路
なまめく
人工のひかり
人工のひかりばかりだ
....
坂の途中で電車を眺めたあの頃の独り
緩やかなカーブで、芳ばしい匂いのするwindsを過ぎて
ブランコのあるLEMONが見えてくる
手前の鞄屋のおばさんに声の要らない挨拶をして
少し早い時期に紅 ....
とあるマスターはこう言った
「一時の情に流されてはいけないよ」
と 熟練の笑みを浮かべながら言っていた
手元には注いだばかりの冷えたグラス
何度目かのおかわりすら忘れれば
カチリ ....
ぼくらは海岸沿いのバーで飲んでいる
昼間から飲めるような身分なのは
ぼくらが考えることを仕事にしているからだ
海岸のひかりのなかに
いつもの女の子があらわれる
彼女は母親 ....
ごめんなさいと断って
あなたをまたいでいきました
とても急いでいたんです
おいつきたくて 自分の想いに
いってしまうんです
想いたちは 想うそばから
飛び立つんです
言葉であらわした ....
まず、声を変える
あー、あー、
自分にとって、いちばん低い声を確かめる。
鏡に向かうと、
バリカンで髪の毛を短く刈り込む
思っていた以上にサッパリとする。
大仕事はこれからなのに
....
太陽が死んでしまって
僕らはどこへいけば
光を見つけられるのだろうと
凍りついた足で
凍りついた息を吐きながら
凍りついた道に迷う
破壊の二文字に踊り狂った
少年少女も
目覚めるこ ....
いつも真顔の青年が
たまには冗談を言ったっていいだろう
でも時としてそれは本気だったりするんだ
どんな冗談も起こしてしまえばそれは事実
なんか面白いことを言ってやろう
信じているならばそれさ ....
青灰色に輝く海岸沿いに
小さな赤い屋根の家が立つ
その家には
ブラウニーの妖精たちが棲んでいる
小さな妖精たちは
茶色のボロ着を身にまとい
いつからかその家に棲みついている
....
先輩ってまんまセブントゥエンティーなんですね
褒められているのか
それとも貶されているのか
一回り年下の後輩が私の耳元で囁いた
街中でも見かけるあのスタイル
脚の短さを隠そうとしてパ ....
どこへかと向かっている
未来も生産性もない場所へ
こころやたましいを向かわせながら
家へと向かっている
社会制度とは効率と確率を追ったものだ
そこへと向かっているのだ
生殖器ではとどめを ....
昨夜の雨を吸った落ち葉はぶよぶよと柔らかくなり
いくら踏みしめても何の音も鳴らさなかった
足跡さえも吸収してしまいそうな弾力は
寒さを忘れそうなほどの優しさで失望を覚える
冬はいつだっ ....
私のふたつの乳房は
アムリタの豊饒に満たされている
明けたばかりのこの夜
現世が終焉するその前に
私のアムリタをあなたに飲ませたい
真っ赤な舌をチロチロと動かす毒蛇のように
長い
この腕 ....
じゃあさ、とりあえずこの山を登ってから死のう
それで頂上に着いたら生きてよかったって一度だけ死のう
蔑んだり後悔したなら、それらのピリオドとなって死のう
じゃあさ、朝日が映っちまった瞳の中で死の ....
くちにだせない
気持ちは
胸に抱いたまま
Moonlight Express
埋めてしまおう、
柔らかな後悔の穴へ
人が静寂の月に行きたがるのは、そのため
そこまでいけば、小さな ....
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