「大事なのは、ギアがガチッ!と切り替わる、あの瞬間」
暗い真夜中の道路、車を走らせていく、
今夜は寝ないかもしれない
光る猫の目のように黄色いヘッドライト、
センターライン追いかけ ....
追われるものを追うものの
山彦越える、相聞歌。
闇にまぎれ
主は言問う、
「戸は開けぬ、知らぬ、存ぜぬ」
読み人知らず。
送り火迎えて遥か
節句の里。
柴刈り、道拓けて
今か ....
世の中が 世の中がって捲し立てるけど
蜂にさされたのは君じゃないだろう?
今の君は世界の不幸も届かないほど小さな楽園なんだよ
いざ、君が獅子のような蜂と対峙した時に
ようやく半径2mの世界 ....
{引用=
とがった影は、みすてられ
切り取る冬の陽を証明する
見上げる円錐のモミの木から
どこまでも つらぬくように
まっすぐに伸びた
疑うこともせず、迷いもせずに
影を作り出し ....
自由とはどこにあるのだろう
やりたいことをやれないとき願うのが
自由なのだとしたら
自由とはいまどこにあるのだろう
やりたいことをやるのが自由なら
自由とは際限のないもの ....
夜の冷たいベランダに出て、丸い月を眺
める。誰にも云えぬ悩みを白い吐息で呟
けば、胸底の容器に濁り積もった毒の塊
が、少しずつ、少しずつ、蒸発し、夜の
静寂に吸い込まれ、いくぶんか、胸の重
....
{引用=銀色の月を砕いた細雪
虚飾の街にも、しんしんと
上野発カシオペアはふるさとゆき
すれちがう旅人のなつかしいアクセント
耳の奥では遠い遠い子守唄
かあさんの声、 ....
シスター、魔女たち
「黒い森を、見知らぬ男と女が逃げています。あれたちは、城下の者ではありません」
月光の影(シルエットだけ)
呪われし王の姿、針の雨嵐吹き荒れる棘丘に現す
....
歴史的なエピソードにこと欠かないこの地で
芦田川について語られることはあまりない
芦田川の河口はもちろん海とまじりあうのだが
見つめていると
この川が本質的には海であることがよくわかる
芦田 ....
はじける光を逃がしたくなくて
手のひらで両耳をきゅっとふさいだ
いくらあたたかな毛糸で肌を覆っても
手足は温度を忘れたかのように冷たい
冬は嫌いじゃないし寒さにも強いほうだけど
この ....
愛人の彼氏は中国人だ
愛人は韓国人で俺は日本人だった
三人をふくむ友人たちと
餃子パーティーをしたことがある
広島の別荘で真夏のことだった
中国人たちが餃子をつくっているあいだ
日 ....
【ジュゴン】
目覚めると、恋人がジュゴンになってゐた。慌てて抱へあげ風呂に入れたが、彼女はとても不機嫌さうだった。湯に食塩を入れると、少し機嫌が直った。あとは食べ物だ。ふえるわかめを湯に入れてみても ....
{引用=
光沢をみせる
明かりが窓からもれ出ています
街辻に面した旧い教会は、十字をかかげ
黒い街灯は、とがったその四角い頭をおもたそうに
旧さの中に時を埋めてしまう
子どもがくれた葉 ....
・
は記号ではなく
・
は詩だ
よく尖った鉛筆で
白紙に
・
を打つ
この奇跡を
この大事件を詩と言わずして
いったいなにが、詩であるという ....
熱帯夜みたいなきみの瞳はもの悲しくて
ひとつぶの砂も巻き上げることはなかった
湿らせたのはほんのわずかな空間だけで
振り返った背中の先には象のおりと高らかな歓声
きみのその長い首を支え ....
きみという少年時代の秘境について
そこに恐れていたものなど何一つなかった
きみに吹く嵐は去り時をわきまえていたし
きみの森に虎なんかいなかった
過ち達は気前よく十字を切って
帰り道に気を ....
終わらない轍を抱えながら
時への妄想を考古していた
時は迷路に曳かれている
命や命の周辺を発掘する
それらは無機物になって
感性や知性に弄ばれていた
終わらない轍を ....
ギッタンバッタン
ギッタンバッタン
揺れる織機に糸は止め処なく流れる
機織りする貴女の家を訪ねた
白髪交じりの老眼鏡に覗くまなざしは
古代の機織の乙女と変わらぬ清楚さで
遥か遠く
白 ....
豊洲から有明へ
ゆりかもめ沿いに
豊洲駅を東へ歩く
すぐに現れるガス資料館を抜けると
広大な空き地が広がる
新開地とはこんな
空っぽの場所を指すのだろうか
遠景は遠すぎるが故 ....
夏のかすれた孤独のいろは
黄色いキズだらけの女の顔
ひとりかそけき偽物の怒り
哀しみが募集されている
夜の電車が紙を震わせる
カレの家を見に行くほど
俺はイカレテい ....
今日の鏡は
流体にちかいのです
あまりにたくさんの欲望を映し出し
水銀の鏡面に、他人のわたし
髪を短くすぎるほどに切ってしまったまま
ばらばらになった抽象画の
かけらが流線の色彩を ....
暗黒の空の下には灰白色の砂が硬く積もっていた
海底は果てしなく広がっている
僕の銀色の船は今、嵐の大洋に来ている
大小のクレーターは蟹の足跡やヤドカリの巣穴のようだ
この嵐の大洋は ....
肌さむいが水をふくんだ夜だった
水のぶんさむさは何処かぬるかった
ことしさいごの年始の会合のあと
熱気にすこし汗ばんだからだに
夜は心地よくてなにか昔を思い出させた
どん ....
一列の線を生身の地平線がひく
彼らの背後に太陽は沈みゆく
弧を描かぬ兵士達の垂直な銃剣
眠ったままの銃口は朱雲をうつす
悲しみにむかうあなた達よ
惚けてしまった私は胸の渦巻きを知らない
柱 ....
おとうさん
そう呼ばせてください
あなたをおとうさんと呼んだ記憶がないのです
おとうさん
こっちをむいてください
あなたと視線をあわせて話したことがないのです
おとうさんの娘として ....
静かの海に来る前に、晴れの海に寄ったんだ
月の海、そうこの大きな穴ぼこ、クレーターは月の内部から湧き出してきた溶岩で覆われている
僕の銀色の船についている小さな窓からのぞいていると
ちょうど灰色 ....
批評祭前後で、自分と似た詩の読み方をしている人がどうやらいるらしいということを知れたというのは、結構大きな収穫だったと思う。時々新着作品のタイトルにマウスを滑らせて、最初数行を見ては「はあ」と感じるこ ....
ここも宇宙だった
空ばかり見つめていた
ぼくも宇宙だった
永遠ばかり見つめていた
未来ばかりを見つめていたのだ!
永遠は机上にあるものではない
永遠とは実在する ....
オリエンタレ・ベイスンから
いくつかの高地(テラ)と海(マーレ)を越え
ようやくこの海にたどり着く
小さな銀色の船を岸に寄せるけど
この岩だらけの灰色の海には水が一滴もない
すぐそばにアルタ ....
鼻の曲がった顔や
頭から花の咲いた顔や
横並びに展示された様々な顔達は
新時代のモヤイ像
小さいギャラリーにふらりと
立ち寄った僕を、和ませる
{ルビ硝子=ガラス}の石の ....
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