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黄色の花は枯草に足元を譲り
冬の陽だまりが
影もつくらず
土に隠した春の気配を
内緒で温めている
霜を忘れた僅かな緑は
十二月の大気に身じろぎもせず
去年のうたや
....
愛しきものに残された
僅かな時間が
手出しを許さず
無表情に過ぎて行く
死の匂いのする
冷ややかな居心地に耐えかねて
虚ろに庭先ばかりを見ている
こんな哀しい歯痒さのなかで
無 ....
秋時計の振り子は密やかに
行きつ 戻りつ
たった一人の呼吸では
遮るものがない
少しずつ白くなり始めた町で
掌にほうっと暖をくれるのは
燃料のぎっしり詰まったストーブではなく
ほんの ....
寂しがりやの人格は
寂しさを乗り越えるためのもの
生まれてきた日
愛に溢れていたことを
ただ思い出すだけ
臆病な人格は
おそれに立ち向かうためのもの
小さな手足をして ....
その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど
無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき
それは
一群れのシロツ ....
まるで他人行儀な
挨拶で書き始めたのは
あなたの選んだ便箋が
何だか照れ臭く
上目遣いにさせたから
感情を露にせずとも
温かな文となるようしたためたい
そんな課題 ....
街の中で
伝説の少女は
鴎と一緒に銅像となって
海を見つめている
その光景は
通り過ぎた夢のようにも見えた
今度同じ夢に会ったら
きちんと名前を付けて
....
帰り道は
昼の天気予報どおりに
激しい雨
ふと視界に咲いた銀色の傘を求めた
縁取り、白
フレームは銀
それを広げて歩くのが
今日の雨にはふさわしく思えて
....