まっていたおもいすらする懐かしい驚きは
鼻の奥から桃の実の香をともなって
額のさきへとつきぬけふきだした
馴染みぶかいあの痛苦のみなもと
乳白と鮮赤の漿と沫がまじりあい
桃色の滴となって地に ....
いつか、と
少し頭を抱えるくらいで旅立てる昔話
私たちは傘でした、と言えば今でも信じないでしょう
折りたたまれた言葉の上で
降りかかる、(時々には)人や人から零れた
何か
を、払いのけなが ....
どうです、{ルビ非晶質=アモルファス}の中でも
ゆっくりとなら動くことができましょう
むしろ動き続けているのです
ああ、あの藍色の揺らめきですか
あれは偏光体の有糸分裂です
触れれば消えてし ....
一寸の安らぎに
耐えかねて
毒を飲んで吐き
もだえる
仏門の前に立って
拝んだりしてみても
卑猥な美しさに見とれ
煩悩と野蛮にふける
しつこい奴には平気で眉をしかめるし
腹の立つこと ....
必死に壊れつづけている

飛び散る銀色のビス
耳には音楽のようにつづく歯車の諧音
プリミティヴな装置に
青い微笑み
必死に壊れつづけている

遠くから重く暗い地響きのようなうなり
は ....
                 そして、
海は濁っていった。青黒く、あるいは黄色く、
濁ることで海はひとつの予兆を示した。水平
線までの正確な距離をはかろうと、漁師たち
は考えをめぐらせ、砂 ....
夕焼けに
うす紫に染まった
ほほにひとすじ
熱いものが流れて
小さな手のひらで顔をおおう
影が淡く
暗い血潮へ暮れてゆき

無器用な翼の
色調不明する鳴き声が、
空ろに響く
指の ....
雨の降る夜は凶暴になる
叫びは声を失くしていき身体は揺れる
昔からそうだった
何度自分の血を見つめたかわからない
夜明けの冷ややかさが最高の快楽だった
誰かが立っていると ....
あたたかさは痛み
つめたさは痛み
肉のためではなく
風のためだけに用意された穴がある
聞きたいよ君の歌を

お願いだ聞かせてくれ

僕をもうこれ以上悲しませないでくれ

これ以上僕をもて遊ばないでくれ

君は僕のことを古い壊れた

ブリキのおもちゃくらいにしか見てな ....
 肩の上のものたちは再び去った。世も肩も結局は自分を苦しめただけで何ももたらさなかった。目覚めは長くなったが、終わりはさらに近づいた。


 雪が空にもどるのを見て泣いた。 ....
肩の上にまた幽霊が戻ってきた。昔と同じ重さと痛みが、どんどん自分を夜へと持っていく。まだ眠りは来ない。自分は在りつづける。あの何も無い所に近づくことなしに、自分に向かって歩むこと .... 肉が裂かれる予感がする。内蔵ではなく、表皮のすぐ下の肉がまっすぐに裂かれ、虹色の壁が刃に映る予感がする。薄暗い景色のなかに、さまざまな色だけが見え、どこからか来る強い光のために全体 .... 風が、終わり
雨が、終わったときに
はら、と
静かなる宙を濡らす、桜の
一枚
また、一枚、の
美しい震えの方法を
耳打ちされたおんなが
ふと、拭えば
桜で濡れた指先


 ....
 桜の下には
 死者が眠るという


桜を求め
通いし春は
いっときの
戯れにも似て

ああ
私が見たのは
この桜ではなく
あの桜でもなく
解せぬまま
散り急ぐ花弁に
幾 ....
どんよりとした鉛色の雨が、わたしの空洞の胸を
突き刺して、滔々と流れてゆく冷たさが、
大きなみずたまりを溢れさせている。
みずたまりには、弱々しい街灯の温もりによって、
歪んだ姿のわたしの言葉 ....
月が満ちた夜、私の身体、ひとつひとつの動作の継ぎ目や隙間から、生暖かい性感が分泌物のように滲み出ている。
私自身そのことに気がつかないにしても、やがては溶岩のような暗い輝きを持ったひとつひとつの細胞 ....
私が、いくら黒ずんだところで
霊を量れることはない
一度たりとも零さずに{ルビ口遊=くちずさ}むことなどありえない

月が、いくら青ざめたところで
距離に近づくことはない
離れるばかりで引 ....
かごめかごめ籠の中へと残されてさくらはひとり散っていきます

口惜しく散って逝くならあわれむも花いさぎよく嫉妬するのみ

たとえばと、たとえるものを探しても見つけられない春の終わりを

 ....
花曇りの空に舞う胡蝶の
その透きとおった翅を 
欲しいと思う 

やわらかく笑う 
ということを覚えたのは 
いつの頃だったろう 

新しいピンヒールが
足に馴染まなくて 
ア ....
春雨

サクラの破片が
まるでガラスのように
散らかっている

太い幹から広がっているその様は
侵略
を思わせる

風が凪いでも
雨が降っても
抑圧にもならない

それは世 ....
見送るものは、誰もいない。
錆びれゆく確かな場所を示す
冬景色の世界地図を
燃やしている過去たちが、東の彼方から孤独に手を振る。
知らぬ振りをする眼は、遥か反対を伺って、
不毛な距離をあらわ ....
桜土手通りの
ほんとうの季節

夜、春香を写しとる水面に
ひとの本性があばかれる

だから秘密は
誰にも知られないように
あのひとは花を売るのをやめて
いったいどこへいったのか
わたしがそこへ訪ねていけば
ガラス張りの木枠の中
古いミシンが1台切り

道路の上の毛皮のように
カラスに喰われて
何もない、わ ....
国道に面した真新しいホテルで
五回目の夜を寂しく過ごしている
激しい雨音を掻き鳴らす春は
去年よりもずっと冷酷だった

ルームライトに浮かぶ哀れな影
照らされる白髪を何本か引き抜いても
 ....
いつだって鳴いて良いとあなたが云うから、
私はいつの間にか、鳴くことを止めた
 
いつだって鳴いて良いと
そう云ったあなたは

穏やかな喧騒の中に、消えた

 一過性の渦の中で叫んだ愛 ....
その道を歩むことを拒んだ

きみが

いくなと僕に叫んだ

それと 同じ気持ちで

拒んだ










春は残酷だ

なにもかもが崩れていく音しかしな ....
もう
どこへも行きたくない
ただ
人間が怖いだけ


絞めては死にたいふり
ああ
嘲笑まだ聞こえる




学校に渋谷駅
どこへ
行った俺の天使

ああ
天国は近くない
また
俺から百歩逃げた ....
溶けだしたぬるいアイスの
表面だけをすくうような日々だ。

甘ったるくて、まずい。

アイスを食べているつもりでも
それはアイスとは呼べないんだ。

表面だけの、実体のない日々だ。
 ....
普段通っている路地の
影にあるもう一つの街

影の街を僕が知ったのは
12の頃で

その頃
父はこの街を出て行った。
キクチさんのおすすめリスト(1561)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
桃源歌- 田代深子自由詩1106-5-4
通過駅- 霜天自由詩606-5-4
硝子- ヤギ自由詩9*06-4-28
無題- ミネ自由詩206-4-28
incomplete_poet- 塔野夏子自由詩12*06-4-27
そして海は濁っていった- 岡部淳太 ...自由詩11*06-4-24
紫の背反- こしごえ自由詩20*06-4-23
29Y.4・23- 木立 悟未詩・独白206-4-23
29Y.3・31- 木立 悟未詩・独白306-4-23
狂犬のような国- こめ自由詩406-4-22
28Y.1・15- 木立 悟未詩・独白406-4-21
28Y.11・27- 木立 悟未詩・独白206-4-21
28Y.6・30- 木立 悟未詩・独白306-4-21
喪春- A道化自由詩1006-4-21
桜の下には- LEO自由詩4*06-4-16
冷たい春- 前田ふむ ...自由詩18*06-4-16
彼の指が私の内臓にくっきりと跡をつける- 自由詩206-4-15
六月の顔色- こしごえ自由詩13*06-4-13
さくら散る- たにがわ ...短歌806-4-13
花笑み- 落合朱美自由詩4106-4-12
春雨- たけ い ...自由詩406-4-12
喪失—失われるとき- 前田ふむ ...自由詩12*06-4-12
春の本性- たりぽん ...携帯写真+ ...11*06-4-11
花売り- 篠有里自由詩5*06-4-11
雨に詠えば- 松本 卓 ...自由詩2*06-4-11
遠吠え- エラ自由詩306-4-10
シキ- なるせ自由詩406-4-10
「ロンリーヘブン」- 木賊ゾク携帯写真+ ...606-4-9
嫌いになってもいいよ- ふれる自由詩706-4-9
影の街- 佐藤伊織自由詩4*06-4-9

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