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ひかりの葬列のような夕暮れに沈む、
クラチャニツァ修道院のベンチに凭れる、
白いスカーフの女の胸が艶めかしく見えた。
捲り上げられた白い腿は、悲しげにも見えた。

わたしの少し疲れた掌のなか ....
   1

真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
暑い夏だと、手がひとりでに動く。
発せられなかった声も、潮風の涙腺にとけて。

装飾のための深い窪みまで、
透き間なく、枯れている、古い桐箱に眠るフィルムを、
年代物の映写機に備え付ける。
 ....
花弁を剥きだしの裸にして、白い水仙が咲いている、
その陽光で汗ばむ平らな道を這うように、
父を背負って歩く。

父はわたしのなかで、好物の東京庵の手打ち蕎麦が、
食べたい、食べたいと、まどろ ....
悠々と二羽の鳥が、碧い空を裂いてゆく、
       鮮やかな傷口を、
銃弾のような眼差しで、わたしは、追想する。
  その切立つ空を、あなたの白い胸に、捧げたい。
  
     ・・・・ ....
白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
      1

夥しいひかりを散りばめた空が、
みずみずしく、墜落する光景をなぞりながら、
わたしは、雛鳥のような足裏に刻まれた、
震える心臓の記憶を、柩のなかから眺めている。

(越 ....
蒼い海峡の水面に、座礁した街がゆれる。
煌々と月に照らされて。
わたしが走るように過ぎた感傷的な浜辺が、
次々と隠されてゆき、
閉ざされた記憶の壁が、満潮の波に溶けて、
どよめいては、消えて ....
       1

十二月の眠れる月が、遅れてきた訃報に、
こわばった笑顔を見せて、
倣った白い手で、ぬれた黒髪を
乾いた空に、かきあげる。
見えるものが、切り分けられて――。
伏せられ ....
  1.永遠の序章

(総論)
一人の少女が白い股から、鮮血を流してゆく、
夕暮れに、
今日も一つの真珠を、老女は丁寧に外してゆく。
それは来るべき季節への練習として、
周到に用意されて ....
一、 某月某日 冬

凍る雨を浴びつづけて、一年を跨ぎ、
わたしの頬は、青ざめて、
虚ろな病棟の、白い壁に残る、
黄ばんだ古いシミに親しむ。
難い過去を追走する暗路を、
エタノールの流れ ....
溢れるほど、満ち足りた言葉に、埋め尽くされて、
わたしは、天空を飛翔する鳥のように、
爽やかなひかりの音階の裾野に舞い降りる。

花々は寄り添い、一面を、湿潤な色香の帯を輝かせて、
痩せ ....
失われた街が視界のなかを流れる。
忘れられた廃屋に寄り添う墓標の上で、
目覚めた透明な空が、
真昼の星座をたずさえて、
立ち上がる高踏な鳥瞰図に、赤い海辺をうち揚げる。

繰り返し、磨きあ ....
白く湧き出る夜霧が彩色の光度を埋める、
途切れた余白だけが、
寂しく横たわり、わたしを乗せている。
染め急ぐ硬いみちが流れるなかで、
滑るように乳白の色をやわらかく溶かして、
わたしは、あた ....
赤いくちびるの、艶かしい呼吸の高まりが、
耳元をかすめ過ぎて、
世慣れた顔のひろがりは、穏やかに浮かび上がり、
成熟した夏を秘めた、
落ち着く若い寡婦の頬をかしげて、
経験にさばかれた甘い水 ....
どんよりとした鉛色の雨が、わたしの空洞の胸を
突き刺して、滔々と流れてゆく冷たさが、
大きなみずたまりを溢れさせている。
みずたまりには、弱々しい街灯の温もりによって、
歪んだ姿のわたしの言葉 ....
見送るものは、誰もいない。
錆びれゆく確かな場所を示す
冬景色の世界地図を
燃やしている過去たちが、東の彼方から孤独に手を振る。
知らぬ振りをする眼は、遥か反対を伺って、
不毛な距離をあらわ ....
やまびとの散文詩―断片9

青白い炎でゆらぐ教会のなかで、わたしたちは、
旅をする黒だけの簡素な衣装を羽織った
右眼が見えず、右手が無い一行が、一心に祈りを捧げながら、
すすり泣いているのを ....
わたしは、この震える指先のなかを流れる満たされない血液の重さを推し量っていた。わずかに眼の中に残る記憶を辿り、心房が包む夜空に対峙して、透明な糸で繋がる星を撫ぜて、痛みを発する疼きの場所を見つけて .... 青い朝が鈴を鳴らして合図する。
霧のむこうは、へらさぎが、雨音に耳を澄まして、
零を数え終えると、夥しい空の種が芽を出して、
幾万のひかりが降る。季節が連れて来る慈悲を、
寝台に凭れて、味 ....
キクチさんの前田ふむふむさんおすすめリスト(20)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
十二月の手紙______デッサン- 前田ふむ ...自由詩23*07-12-12
花について三つの断章- 前田ふむ ...自由詩25*07-10-1
包まれる夏の風景___デッサン- 前田ふむ ...自由詩33*07-7-11
森番—透過する森のなかへ- 前田ふむ ...自由詩38*07-6-6
春のひかり- 前田ふむ ...自由詩28*07-4-6
三月の手紙__デッサン- 前田ふむ ...自由詩32*07-3-27
不寝番—みずの瞑り__デッサン- 前田ふむ ...自由詩28*07-1-3
遠雷—解体されながら- 前田ふむ ...自由詩24*06-12-23
廃船——夜明けのとき__デッサン- 前田ふむ ...自由詩29*06-12-16
寂しい織物—四つの破片_デッサン- 前田ふむ ...自由詩42*06-11-30
青い声が聴こえる日___デッサン- 前田ふむ ...自由詩19*06-10-2
瑞祥をめざして- 前田ふむ ...自由詩18+*06-9-7
愁色の午後- 前田ふむ ...自由詩16*06-8-23
影の世界より__デッサン- 前田ふむ ...自由詩14*06-8-15
ダブリンの草莽- 前田ふむ ...自由詩18*06-7-2
冷たい春- 前田ふむ ...自由詩18*06-4-16
喪失—失われるとき- 前田ふむ ...自由詩12*06-4-12
やまびとの散文詩(三)- 前田ふむ ...自由詩4*06-3-25
未来図- 前田ふむ ...自由詩4*06-3-5
- 前田ふむ ...自由詩6*06-3-3

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