六月の顔色
こしごえ
私が、いくら黒ずんだところで
霊を量れることはない
一度たりとも零さずに口遊むことなどありえない
月が、いくら青ざめたところで
距離に近づくことはない
離れるばかりで引かれていく未来へ
林檎が、いくらほほを赤らめたところで
神話が、結ばれることはなく
宙で廻り続ける。
仄暗い森の中を
淡い影が、
羊歯や苔の花の上を
やせ細った足取りで
しわがれながら通り過ぎてゆく。
石の肺のような
息をして
透けていく
汝の肌。
縁側から見た驟雨の
扉の閉まる音に
振り向かず。
白鷺が田園の真中で
片足立って
たそがれている