煙る空の
灰の深く
空は、どこか深くに
航空機を押し殺している
その、灰色の腸の痛みが
低音部に、轟く
その下で
タンポポを
想像妊娠した人たちの衣服だけが
黄色 ....
肌刺す雨。
独りで歩いた赫い森。
引き返すことも引き戻すことも為らず。
感情は法悦した。
記憶鮮明。
視界不良。
雨、つたう頬。
息遣い、手に宿る。
森に眠る死体は ....
鋼鉄のキリンどもが
夕陽に照らされて
朱く燃え上がりはじめると
このありふれた景色にも
特別に美しい瞬間が訪れる
陽が落ちきるまでのほんのわずかな時間
第3セクターで作られた
この海 ....
血のにじむ指くわえようとするあなたから手をひっこめるさびしみがある
背後から抱かれて息が首筋にかかるぬくさを忘れはせじと
深呼吸忘れたことに気がついて深く重なる森の天井
きみの ....
夜半の月は無情に蒼く
帰ると誓った影はない
白菊の花は夜露に濡れ
冷えた袖はしっとりと重い
長い旅だとあなたは言った
待てぬと叫ぶこの手には
あなたが残した一輪の菊
時は重陽、誓いの盃
....
ぼくらは殺し続けるのか
この手を失うまで
ぼくらは傷つけ合うのか
この舌を失うまで
ぼくらは偏り見るのか
この目を失うまで
ぼくらは走り続けるのか
この足を失うまで
子 ....
外は雨
灰色の壁にカーテンがもたれる
裏に隠した影に「わたし」を探す
探す
見つける
爪痕のようなキズ
記憶を見つめる
何年か前に患った病
真夜中の病室は6人の病人よりも暗い
けれど ....
凶器のように砕け散るワイングラス。
指先から溢れ出す血の
赤。
ボルドーの陰鬱な太陽を浴びた重い
赤。
山羊の脳味噌のスープが視せる草原の夢。
鳥肌立つほどの一面の ....
床に
散らばる水銀を
指先でなぞる
あり得ないやわらかさ
さわっちゃ駄目
それは
爪のすきまから
毒になって体中を
銀が回るよ、と
母の言葉が
だから
ずっとさわれな ....
便所の少し湿った床を
のた打ち回る
吐き気を抑えて
私は
言葉にならない
叫びをあげながら
「心を返せ」
冷たい床
薄汚れた染み
薄暗い便所の中で
喉の奥にあるはずの
....
あした晴れたら
レモンキャンディー舐めながら
コンビニ強盗でもやってみようか
それとも
この腕枕している右腕が壊死するまで
きみとふたり眠り続けてみようか
或る寝室にての快楽の競技であり憧れと
してまさに今を感じるものである。だか
ら直線的ではあるけど、刹那という瞬間
の果てにての一適の愛液のような風景に
おいて、我の望みを追い続ける証。悲し ....
夕焼けの嘆息、きぬごし、
漏れた光を褥とし、
少年のまどろみ。
春風が、ひとしきり、
染められた、創傷のある、頬をなで、
現実を匂わす。
少年、嘆息するが、
ひらり、
こればか ....
風上に立つ冬が
耳に届くすべての海を
耳鳴りに
します
遠く
遠くに
此処には無い海が
あるとして
それは遠くの
ずっと遠くに
此処には無い海が
あるとしても ....
薄曇りから
薄く、射す、朝
射す、薄く、朝
灰汁のような、擦り硝子
カーテンの、微細なファイバーの乱反射も、吃り
秩序が溜まってゆく食卓は
ピルケースのように正しく
グラニ ....
死んだように
たなびく空
が、どうしてこんなに美しいの
カリフォルニアでも
カリブでも
底抜けの空が
この世にはあるはずなのに
どうして
死んだような空ばかり
僕の心を撫で付ける ....
ため息を薄めた空気を吐き出せば
白くけむった現実が儚く揺れる
滅んでゆく世界が急激に収縮すると
必至にしがみつかなければ吸い込まれてしまう
その前に見えた
一瞬の閃光を書きとどめるた ....
嗚呼 もう夜明けだ
囀りが聴こえはじめる頃なら淡色でいいよ
鳥達が遊びに行ってしまった頃はもう耐えられない 瞳が痛い
希望は痛みだ
嗚呼 また日が傾き始めた
囀りが聴こえはじめ ....
壊された未来
殺された明日
それでも
....
少女は少年に手紙を出した。
少女はポストの中に手紙を入れた。
手違いで海を渡った手紙は、雨の湿気の清潔な部分を少しづつ、選別しながら含みはじめた。
シベリアの炭鉱は、その手紙を炭の中 ....
今夜も 僕はほんの少しだけ世界を忘れる
飛び上がって
ひと思いに刺すことが出来ずに
沈みながら
血迷った逆流に身を躍らせる
時計は残された時を静かに刻み
やせおとろえた夜の下で
僕は僕の ....
ぼんやり東京をながめてた
ビルの匂いがした
冬
いろ つや かたち
小瓶をさかさにして
こぼれおちるこげ茶色のおんしょくを
君にたむけて
ピンクの舌でふれる液体
冬の匂い
ぽ ....
繋ぐ前の手の冷たさを
キミとなら忘れられる気がした
居眠りブルース
キミと逢えた幸せ
涙すること
繋いだ手
広がる世界で
もっとそばにいて
苦しいぐらいの
緊張と衝動 ....
燃え盛る炎で焼け焦げた僕
ひと思いにかじって丸呑みにしてしまいたい
左足の指先をとりあえず摘んでみる
ぼろぼろと宙に舞う
鉄くずなのか
黒焦げの炭かわからないけど
ちょっと前まで僕は四角い ....
起きたらずっと雨で
雨で雨で雨で
そのまま夜がきちまえ
太陽なんか今日はみたくねぇ
濡れている足は響かずに沈む
ただ長雨が叩く水面の下
黒衣を纏う葬列は
禁欲者の残骸を掻き集め
漆喰の壁に塗り込める
墓碑銘もなく
知らぬ人が緋文字を記す
生の環の外周で
水 ....
荒野の中に人柱が建つ
立ったまま
石と化して
柱のように天に伸びる人の残骸
人生に遅刻した者
あるいは 人生から早退した者の
群れが
向日葵のように咲き揃っている
そんな人柱の
列石 ....
赤色灯に浮かび上がる
限られた僕の価値観では
真実を見極めるには至らない
語りかける先に
響く警告の音は
ときに沈黙であったりする
しかしそこには確かに悲鳴があり
傷を受けた者の ....
狂ってしまえばいい
雨が降り
風が吹き
雪が降り
雷が鳴る
狂ってしまえばいいのだ
壊れた時計よりも
人の愛よりも
日照りが続き
大気は乾き
大地はひび割れ
草木が枯 ....
神が不在の夜
その間隙をぬって
あくまでも地上的な硬い何かが
天上の淡い光を覆い隠す
その時
人びとの喉はゆっくりと絞められ
背徳の快楽に意味のない言葉が虚空にばらまかれる
昔日の絵の中 ....
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