「たいへんよくできました」
というスタンプがどうしても
自分のノートに押されたかった
先生にノートを渡しても
いつも「がんばろう」とか
「あとひといき」ばかりだった
同じクマのスタンプなの ....
窓硝子を挟んで
浅い春は霧雨に点在し
わたしに少しずつ朝が流れ込む
昨夜見た夢を
思い出そうと
胸を凝らしたら
微かに風景が揺れた
なかば迷子の眼で
周りを見渡 ....
神様が僕に嫉妬した
神様が僕に嫉妬した
理由なんて、知らない
神様が僕に嫉妬した
神様が僕に嫉妬した
大切な人を奪ってった
神様は大切な人を作れる
人間が羨ましい ....
白髪を掻いて
新聞を読んでいる
あなたは
岩だ
猫を
下手くそに撫でる
次郎丸は
僕が名づけた
うちで生まれた猫たち 三匹
母親にとって
あんなに大切だった ....
嫌になるときだってあるよ
そう言うと
友だちは笑顔でうなづく
さほど広く無い部屋に
ふたつ机を並べ
四十六時中
お互いの気配に触れ合って過ごす
それでも机と机を隔てる
背の低い ....
A
ジャック・ケルアック「路上」を読む。
これは主人公サル・パラダイスが狂人ディーン・モリアーティに翻弄されつつ
各地を旅してまわるという、いわばDiscover Americaの物語である ....
ある日からだった
鳥たちがいっせいに地下を飛ぶようになった
空を捨てて森を捨てて
鳥たちは土の中へと潜っていった
地上には鳥の姿は見られなくなった
人間は鳥の居場所を探したが
かなり深くま ....
書いてもいいし、別段、書かなくてもいい...。
それは深夜、友人とファミレスでお喋りするような内容でもなければ、日記帳に綴って記録に留めて置くような情報でもない。
元来、記憶にも記録にも残らない宿 ....
通り過ぎた列車の
なごりの風が、引き連れる
潮のにおい
線路沿いにこの道をまっすぐ行けば
ほら、海が近づいてくる
そう言ってふたり、短い影を
踏み合いながら走った日
無人 ....
背後から抱きしめられる気配が
して
「だぁれだ?」
そんなのあなたに決まっているのに
他のだれかを想像してみる
雪の降らなかった今年の冬を
ひとりで歩いてみた
行き先なんか
決めた ....
三つ葉駅近くの踏切内で
君はさっきから散乱を続けている
サポーターの期待に応える
君の一撃が記憶に残るよ
短い眠りから覚めた熱血漢は
もう自分の持ち場に戻っている
それはさておき
....
碧空に圧し掛かる入道雲を
眸いっぱいに湛え、僅かに汗を滲ませる
その横顔(かんばせ)の美しさよ――。
少年は俺に問うた。
「かの雲はさんざめく熱気を
帯びているだろうか」
「触れれば ....
別れの時刻を知ったとき
ひとは優しくなる
すなおには
明かせなかったこころをもって
朝はかならず来るのだと
ようやく夢は
ここから
近く
ありがとう ....
ふと気がつけば
後ろ手の冬
雪の匂いも薄らいで
それとは知らず
陽をまとい
季節は
追い越せないものだとばかり
待ち続けてきたけれど
いつの間にやら
景色は流れて
....
木彫りのゴリラを作った
魂をこめたつもりが
こもったのは悲しみだった
真夜中彼はがんがん胸を叩いて吠える
号泣だ
朝、机の上の涙の水溜りに半べそでモップかけてる
あんまりか ....
知ってるかい。 俺も君も天才だってこと
知ってるかい。 躁鬱病で劣等感と優越感の間を繰り返し往来していることを
知ってるかい。 その振り子運動が生きる力を発生させているということを
知らないだろ ....
隔たりを埋めるために
どこまでもどこまでも下ってやるんだと思っている
今数々の生き物たちと別れを告げて
新しい出会いと別れという
いわゆるお涙頂戴を繰り返しながら
たまに ....
忘却の
旅の果てには
哀しみと
深い想いが
溢れだしてた
泣く君の
姿を記憶に
留めては
差し出せぬ手を
固く結んだ
夜道はすこし冷えていて
春のほこりが涼しいのです
雲のまうえにくっきりと
月が油膜を光らせています
夜景はいつも
柑橘系の彩りです
金網の向こうで
車がどこか目指します
夜道はすこ ....
気を抜くと襲ってくるよ
あいつには触れさせたくない
うなじの黒子
春近く
陽も穏やかに
降り注ぐ
もう足音が
聴こえるだろう
穏やかに
照らす光が
眩しくて
それでもそれを
見つめてたくて
鮮やかな
陽色の頬に
キスをして
春の匂いに
また酔いしれる ....
韓国のかたを接待する
はじめて会うひとたちだ
韓国語のあいさつって何だっけ?
カムサンミダ?
水商売のおんなたちが
着物で歩いたり
小綺麗な顔をして
タクシーで過ぎてゆく
天ぷら屋さん ....
生きたいと思わないんだ
でも
死にたいとも思わない
リスカしたいとか
吐き出したいとか
何も思わないんだ
でも
苦しくて
何か感じてて
どうしょもできなくて
....
聖夜にて
愛だ恋だと
どこかしこ
我が身焦りて
寒さ染み入る
空に月
透明な
群青色に
月が
低いかすれ雲を照らしている
なんにもない
孤独もない
ベンチの鉄が
つめたいね
空に月
透明な
群青色に
月が
低いかすれ雲を照らしている
きみをひらくと
なかから ちいさなきみが
ぽろぽろと はだかのままで
たくさんの 砂金のようにこぼれて
たくさんのきみは 少しはずかしそうに
ひざをかかえてる
....
{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった
0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
君が
ぽつん。
と残した香りが
僕の表面を覆う理性を
突き抜けて
真ん中から少し左を
ソーダ水のやうに
刺激してくる。
今になって
ああ、あ ....
今、踏んだ、枯れ枝
その中に眠っていた想い
遠ざかってゆく
永遠に
今、放った、貝殻
僕の手のひらの温度を引いて
遠ざかってゆく
永遠に
雲は遠くの水平線に砕け
....
ついに定規は曲がった
まっすぐにしか使われない自分が
悲しくなったという
まっすぐに測れるものなんて
世の中のほんのわずかしかない
そう思ったらしい
もっと柔軟のある生き方を求めて
現実 ....
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