宅配便の到着を知らせる呼び鈴に立ち上がると
私の下半身を跨ぐように放屁ひとつ
あけすけな音と不摂生な臭さにパタパタと手にした雑誌で扇ぎながらも
これが夫婦ってことなのかと改めて考え直すまでも無く ....
よっこらしょ

そんなことばが口癖となった
ひとしきり身の回りの片づけを終えると
臨月の大きなお腹を抱え物干し台兼用のテラスへ這い登る

白いペンキを塗り重ねた木製のデッキチェアに身を委ね ....
そこいら中のダクトがすすけてしまって、工事の音はやみはしない。
鏡台で終わることのない厚化粧を終えたあと、今夜もみな、床についた。
ラウンジで高価な時計をちらちらと気にしてやり過ごす女の耳には ....
ひとの気配に気付き上体を起こしてみると
逆光に髪の長いおんなの姿を認めた
それがあのひとの妻美佐子さんとの最初の出逢いだった

彼女について何かとあのひとから聞かされていたのと
私に用事があ ....
幾分の恥じらいを含んでランナー
右足を上げる
拒みもせず微笑みすら浮かべて
ランナー
左足を上げる
心弱き者よ運動を直視せよ
ランナーは運動している
恥じ多きものよ停止を知れ
ランナー ....
 
 
象といっしょに
列車を待ってる
朝からの温かな風が
服の繊維をすり抜けて
僕のところにも届く
こうして春になっていくんだね
明日はまた寒くなって
雪が降るそうだ

昔、象 ....
あの上り電車で何本見送ったことになるのだろう
別に数えている訳では無いし
有り余った時間を費やせればとストールの毛玉など毟りながら
外界と隔絶された待合室の硬いベンチに腰掛け
あの夜の顛末でも ....
 (承前)
A:Ηは人非人でした。しかし、私がそのことを理解したのは、彼が私の目の前にはもう現れないこととなった時なのでした。
 私はその時以来、人を信ずることができなくなりました。私の前に愛する ....
もちろん全ての詩についての論と同じようにこれは、私にとっての詩の書き方に違いありません。全ての詩についての論と同じようにイデオロギーであることは否定できませんし、多分違う書き方もあるでしょう。

 ....
マグネチックスピーカー
                       2008年10月15日20:27

  先日、秋葉原で求めようとしたが、お店には無いので、やむを得ずネットオークショ ....
2008年10月09日20:06
  先日秋葉原にマグネチックスピーカーを買いに出かけた。
マグネチックスピーカーは第二次世界大戦中までの普及型ラジオ受信機に広く使われていて、ハイファイとは言い難 ....
「もしそこのあなた、私が何か為になる話をしてあげましょうかなどと、素晴らしい湖の上空で関々と啼いたので、吃驚しなすった! そうでしょう、そうですとも、我々はいつまでたっても機械の歯車でございますから、 ....  
 
石積みの朝
陸橋はその歪んだ影を
路面に落とし
昨日までの工程を語り終えると
あなたは静かに
最後の生理を迎えるのだった
 
+
 
足音が擦り切れていく
あなたにとっ ....
あのひとから乞われた訳じゃない
成り行きでと言えばそんな感じだった
奥さんよりも私を選んでくれた
そんな幼い優越感が無かったといえば嘘になる

幸せだった頃に家族で訪れた事があると話していた ....
涙が出る程眩しい空の下の
君と猫をそっと盗み見ていた
暖かい街並みに似た君の笑顔
猫と僕は何も知らない振りして

気が狂う程優しい風の上で
最期の色をきっと今見ている
繋がらなくてもいい ....
夢の中で私たちは
幾度もくちづけを交わした
あなたの唇はいつも濡れていて
舌を入れると海の味がした
まるで水中深く落ちてゆく
立ち昇る泡が遠く遠く輪を描いて
はるかな岸辺へと


夢 ....
ひよこを食べる猫がいて
あるときひよこが
噛みついた

それからひよこは
猫を食べたり
ときどき親を
食べたりも
する



ひよこをだます猫がいて
おかげでひよこ ....
自由の翼が手に
入ったとしても
額縁の絵の中を
飛ぶことぐらい
しかできないし

お洒落な足かせ
をガチャガチャ
いわせながら記
号でお喋りして
いたほうが楽し
いかもしれな ....
舟、
から落ちた
青年の眼は
右往左往し
私に助けを求めた

私は
まるで彼だった私を探し
見つける
見つけたのだが
すでに、息をしていなかった
死んでいたのだ

死んだ体で ....
車道を行く
ひたすら行く
迎えは居ないが
歩く、ただただ道程をたどって

後頭部からカット・インしてくる
車両の音
踏み切りのベル
仕事帰りの会社員の独り言

二階から自販機に家族 ....
{引用=彷徨うお前のたましいからもしも右手が差し出されるのならば、}

泣いたり笑ったり
他愛無い言葉を交わしたり
時に交わってみたり
逆立ちしてみたり
泣いたり
笑った(ふり)を
し ....
 散文では少しばかりお久ぶりですね。
かと言ってこの散文を正座して待っているような人はいらっしゃるんでしょうか?いないと思うので、これからもマイペースに書き続けていこうと思います。

 さて、先 ....
何故かあのひともそうだった


年上の素敵な奥様がいて
それなりに幸せな家庭を築いていた
そしてそんな男の軽い浮気心に惚れてしまう女がひとり

初めて出逢ったのは真冬に逆戻りしたような夜 ....
オハヨウが
晴れやかに言えてますか

アリガトウが
滑らかに言えてますか

笑い方が
相変わらず下手ですね

奥歯が
痛いのかと思いました

コンニチワが
軽やかに言えて ....
夕月は君が
先に見つけた

でも

明日雪が降ることは
きっと教えてあげない

   *

君のいちばんのねがいを
たぶん私は知っている

でも

君のいちばんの ....
俺は、仕事に取り掛かっている。
この仕事はとても大切な仕事だ。なぜならば、 菩薩(部長クラス。すごく怖いし、すぐに怒鳴る。怒鳴ると、痰のような細かいどろっとしたものが飛んでくる。だから怖い。) がそ ....
 終わり

やがて
空が蒸発する

  僕は無機質になる


やがて
風が風化する

  僕の最後の灯し火を消す

終わりの時は
最初から始まっている

  僕は知らな ....
地球の地軸と同じ傾きで
ターンしよう

左手でインド洋を
撫でて

右手で北極熊を
持ち上げて

焼けた砂漠を裸足で歩くように
ステップしよう

左足で死海を
またいで
 ....
梢にお月さまがとまってる

お月さまだって
たまには
休みたいのよ
{引用=死ぬ気になれば何でもできる…

それは瀬戸際に立たされたことの無い人間の言葉}


新地に棲んでいた頃の母を良く知っているといって
狐目の男が自宅を訪れることがあった

その度 ....
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