この店でサーバーの仕事をし始めた頃、最初は、オーダーのとり方もトレーの持ち方さえも戸惑っていたが、それも、すぐ慣れたのは何か水商売の天性があるのかもしれないと、Sayoは思ったりする。昼の仕事は、夜 ....
風が吹いている
青く灰色のピンクの影のなか
夕暮れの香りが運ばれている
いちにちは
誰にかやさしい終わりを告げる
よるに棲息する
わたしは無生物になるでしょう
....
「アレン、あたしはヴァージンって言ったはず。これはウォッカはいってんじゃないの?客が文句言ってるわ。子供が酔っ払ったって」
Sayoは男に大きな声を張り上げた。店の中は、コンテンポラリーのジャズ・ ....
歩行する足と足の間に光は群れて
喉仏に蝶を飼う人
コツコツ ブーツの足音 世界が美しい
海いつとなく揺れ 波のはしる
詩歌集見ると舌舐めずりのロクロッ首
....
自分の将来に光が見えなくたって、恋人の中に未来を見いだせなくたって、
自分がたった一人の『自分』である事を、忘れてはいけない。
実際に無いかもしれない事象に怯えたってしょうがない。
....
ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった
ベッドのなかでもブーツ脱が ....
「妖」
熟れた日常を引き剥がし
馴染んだ名前を脱ぎ捨てて
あなたの熱は儚く溶けた
残り香だけを朝に置き忘れて
「怪」
仄暗い四辻を右へ折れた ....
はじめて出かけた
二人だけの遠い旅
両手いっぱいの思い出作ろうと
車を走らせた
薄紫のコスモスいたわるように
花の中で少し頭かたむけた
微笑む君の笑顔まぶしいよ
....
夏休み前。暑いけれど、耐えられないほどではない。蝉の声が開いている窓からけたたましく入り込んでくる。風は十五分に一度くらいカーテンを揺らして。くれれば良いほう。
昼食は終わったから後ろの直樹は教科書 ....
朝目覚めて口のなか乾いているのは
どうやら鼻の具合悪いかららしい
それとも流行の風邪でも引いてしまったのかな
人知れず鼾とかかいていたりして
人知れずってのはいかにも寂しいな
鼾うる ....
なあ、はじめ。
知ってるか。
お前がずいぶん毛嫌いしている、チンピラの田口は
将来お前なんかより良い父親になるんだ
それはもう驚くほど家族思いの良い父親だ
だが相変わらずお前は彼と ....
気がつくと
あなたと同じ背格好の
ひとの首筋を捜してる
忙しいひと
メールも
ままならない・・・
でも でも
あのときの笑顔
だけこころに残して
日々を送ってゆ ....
瞳をひからせるものの
やってきた さそい
ちいさくて人肌ほどに、
もたらされる快適な乗り心地は 羽もうのよう
やさしくて
☆
厚誼にかしぐ 昔ながらの従順さがあ ....
迷うってことはさ
どっちにもそれなりの
メリットデメリットが
有る訳で
どっちを選んだとしても
何らかの後悔は残るんだ
こんな地方都市の半分住居の小さなビルでは
屋上のすぐ下まで人の生活の気配がする
が 屋上へはめったに人が上がらないので
屋上はやけに
世間ばなれしている
何十年も人が上がったことのない屋 ....
久しぶりに田舎に帰ったら
冷凍庫のタッパーに歯ブラシが入っていました
その晩に夢を見ました
小学校の頃に好きだった女の子と
その子は小学生の姿のままで
今の私が並んで歩いていました
ふと気 ....
籠の中の小鳥が声高に鳴く
開け放たれた窓からそよぐ風に喜んで
庭先で君はひとり楽しげに
プランターのおじぎ草を突いていた
鼻腔を突くのは蒸せた花の香り
ざざざと風は水路を走る
千切られ ....
目をこするループ
くちびるをかむミュート
嵐のキータッチで12時間
でんぐり返り、衣装がえ
ネオン、夜道をガイドする老人
あわよくばもう一つの道を行く交差点
左足からブレイ ....
詩と現代詩、あと死をなめてかかっておりました。
一字一句どころか、間、音、すべてが毛細血管のように緻密に構築されていたものだったのですね。
言葉をとりあえずつなげば詩になると思っていたおれ ....
検索エンジンの会社の
小さな白いバンが
都市の毛細な通路を
縫うように走るのは
世界がほろぶ物語の
せつない伏線だろうか
誰も見なくなったネットに
きのうの生活が
褪せた色にかため ....
夢を見た
久しぶりの夢だった
ただ泥のように眠り
鉛のように沈み込む身体を布団からひきはがす朝
それが
ぱちりと目が開き
がばと起き上がり
まわりを見まわし
....
凍らせた私の血を
温めなおしていた
あの季節とは
もう
さよなら
サングラスも
その帽子も
ここから先は
進入禁止
ベランダでは
服を
もう一枚
涙
拭う間もなく ....
十月の午前の窓は開いていた
どこか遠くで冷やされた風
部屋はあのときの青に澄んでいた
十年ほどまえ商用で行ったアルゼンチン
仕事を昼までに終え
通訳兼運転手の日本人が ....
アイデンティティという言葉を知っていますか。
自分が何者であるか?
自分が何をなすべきか?
ってなものらしい。
最初はみんな意識しません。
しかし、そのうち意識せざるを得ません。
それ ....
書き手である誰もが、ひとつの言葉があるべき場所を求めていたらしかった。
祭はもう終わりなのかもしれない。感じていなかった子供のときの、僕。
最後のコーヒーをすすっていた。黒い色の中に混ぜあ ....
「ただいま」とあなたが言う
「おかえり」と私は応えてお鍋を火にかける
リビングにいるあなたを見ながらキッチンに立つ
別々のことをしながらも同じテレビを見る
厳密には私は音を聴いているだけだ ....
白いシーツがうねりながら迫ってくる。ぼくはおおきなベッドに
いる。シーツは生き物のようにぼくのからだを捕らえる。シーツ
に巻き取られると、頭まで包まれて目の前が暗くなる。シーツが
締めつけてきて ....
くちびるをとがらせて
こいしをけとばす
りょうてはせなかでむすび
あかねぞらにあかとんぼ
こころはくすぶって
やりきれないりゆうが
くちをついてこぼれだす
きのうはだいすきなあのこを
....
空を見る人に詩はいらない
ほんとうに
空を見る人には
月日星の巡りや
吹く風のわけを思う人には
咲く花を知っている人も
詩を欲しがらない
花が咲くということの意味を
ほ ....
授業が終わると、真っ先に教室を出る
いつもなら軽音楽部の部室で
とりとめのない話をして
演劇部の発声練習を聞きながら
ひとりの娘の姿を追いかけるのだけれども
夏休みの間、炎天下の中ひたす ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73