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とりとめもない、セックスのはなし
セックスは、好きでもないけれど
たぶん、嫌いでもないのよね、と
彼女は昨日見た映画の感想でもいうような口ぶりで
?
あなたとセックスした ....
滴が。
朝の、
窓枠を二つに分けるようにして落ちていく。
今も手を伸ばせば壊れてしまいそうな足跡。
遠くなっていく風景写真をいつも隣に置いている。
あの日、行方知れずの人が今も笑いか ....
はがきをかってきてください
かわむこうのおみせにたちよって
はがきをいちまいかってきてください
呪文のような声がして
我に返る
誰もいなくなった
午後の大通りには
牛車がのろ ....
生まれてはじめての雪に
子どもは小さな手を伸ばす
白い雪花をつかもうとする
指を開いても花はどこにもない
黒々とした丸い目が
さらに丸くなる
降る雪を
つかんではひらき、ひらいて ....
複雑な感情を うまく説明できないんだ
名前のない衝動や 感覚が幾つも絡み合って
本当は自分でも まったく解ってないんだ
難解なコトバ並べて それらしく それらしく
う ....
宝石を散りばめたような闇
この世で一番大きい水溜り
そこには彼らがいることが
絶対であって
世界の暗黙の了解であった
でも
時にはその場から消えたい
と
訴えているのを
私は ....
風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける
誰も居ない
かつて誰かが居たかもしれない
そのわずかな痕跡も
とうの昔に温度を失い
記憶を失い
頭上には黒い星座たち
ただ脳裏 ....
改札口の向こうで
ピアノに蟻が集っている
きっと甘いんだろう
ハモニカを忘れてきた駅員が
時刻表に小さな落書をする
間もなく秋が来るのに
量が足りてないのだ
まだ君と僕とが出 ....
窓を揺らす透明を
娘たちの時間はすぎて
雪のなかの双つの道
どこまでも淡く
双つの道
青に添う手
剥がれる陽
いとおしさ 望みのなさ
左の目にだけ降りそそぐ
....
時に逆らって
時計を上下逆さにしてみた
秒針の動きは変わらないので
結局
今日の予定が頭の中を過ぎてゆく
時に逆らって
時計を裏返してみた
時を見ることはできないので
結局
次の ....
幼い頃に広かった幼稚園の庭。大人になって訪れると
不思議なほど狭くなっていた。密かに憧れていた保母
さんは、ふたりめの赤ちゃんをだっこして。お腹の太
ったおばちゃんになっていた。
年を重 ....
僕は簡単に逃げ出す性格だ。
そして薬を飲んで
簡単に死んでしまったみたい。
気が付けば
真っ白な雲の上だった。
あらら。
マジで死んじゃった。
頭をポリポリかいてると
....
荻窪の町には昔ながらの駄菓子屋がまだあり
自分の足音がちゃぁんと聞こえてくるのです
ゆっくり道端の雑草や花に目を向けたり
空を音もなく区切る電線に止まるすずめを数えたり
荻窪の町には年老いた夫 ....
夜中に仔猫が鳴いている
さぞ寒いことだろう
行き交う人は皆孤独のコートを纏い
白い息を吐きながら雑踏に消えていく
乾燥するのは肌だけでなくて
心まで乾燥していく
まぎれも ....
それって秘密だよ
思わせぶりに微笑んだ
あなた
ドラえもんじゃないくせに
ポケットから何やら取り出しては
桜の木に振りまきはじめ
(まだまだ寒いよと眠ったままなのに
まだかまだかと貧乏揺 ....
私は時々
雑踏の中へと
足を運びます
人々の声と
足音と
それらのざわめきから
あなたのささやきが
生まれてくるようで
太陽の熱で
大地から水蒸気が昇り
その粒は集まって雲 ....
お日様にたっぷり干した
ふかふかのお布団くらいの
ホットケーキを焼いて
十匹の虎が走り回ったくらいの
たっぷりのバターをのっけて
お風呂に張ったくらいの
たっぷりのはちみつをかけて
いち ....
目の前にするとき
まるで舞台上で スポットライトで
照らされているように 私たちは
鍵なんて探して ポケットをまさぐって
見上げれば月が明るくって
まるで孤独で 砂漠のただ中にいるみたい ....
コンビニのレジから
僕らのタクシーがあふれ出すから
春はまた息苦しい
行き先も告げずに乗ると
君の家を通過して
犬小屋の屋根を壊してしまう
料金を体温で支払う
少しのおつ ....
久々にハラピンの所へ行くと
焚き火をしている
煙がもくもくと空に消えていく
声をかけると
慌てて後ろに隠したものがある
あれはまさか
原稿用紙
ふざけんなよ
俺はハラピンを怒鳴 ....
月のしずかを詠むほどに
月を
寡黙に封じ込む
聴きそびれていたかも知れない
のに
細い肩には雲をのせ
風をたよりに
風さえも
去り
物云わ ....
{引用=
月の夜に
後ろから囁く
危うい光
地獄にも
天国にも
行きそびれたね
傷の深さに降りる
水晶の測量器
闇の奥で光るクリ ....
こぐまの尾、
ちかり、ちか、り
天空いっぱい夜は溢れて
地上で凍った吐息は
瞬く銀に吸い込まれる
星灯りの舗道に
靴音を響かせ
きみの声を思い出すと
辿る道程は冬の密度が融 ....
定年後
趣味で油絵を始めた親父が
キャンバスに向かい
一枚の絵を描き直している
さっ さっ
と音をたてると
窓辺から
午後の日が射すこの部屋に
絵具の匂いが満ちて ....
ひとひらひとひらと
空から雪が舞い落ちて
小さな小さなその粒は
一つ一つの言葉のよう
ゆらりゆらりと
空から風が吹き流れ
右へ左へ漂いながら
言葉と言葉をつなげ合う
ひとひらひ ....
背が高くて猫背のハラピンが
丸めた背中の内側で何か書いている
「せいかつのために詩を書いてるんだ」
試しに読ませてもらうと
{引用=「星」 作 ハラピン
星をひとつぶ食べた ....
あきらめました
あなたのことはもう
あきらめました
あなたのために燃やす炎は
もうどこにもないのです
私の前には荒涼とした冬野が
どこまでも広がっているばかり
ここにはあなたの影も
....
二十三年間生きてきたのに
おめでとうのひとつも
満足に言えない
そのことについて
頬杖をついて考える
一人で
室内で吐く息は白い
ストーブは足元ばかりを熱くする
家 ....
あなたは何故寂しいのでしょうか?
本当に一人なのでしょうか?
灰色の雲の下で
ひざを抱えてうつむいてるあなた
人生とは過酷なものでしょうか?
何が一番つらいことでしょうか?
....
今の季節に合わせて
色の神が
世界を白くする
僕も白くなってゆく
そして
今の風に合わせて
音の神が
世界を奏でる
僕も音になってゆく
その後は
今の心に合わせて
{ルビ ....
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