すべてのおすすめ
今日、世界が終わるとしても
教えないでいてください
怖いからではありません
やっぱりわたしは
明日の約束をしたい、あなたと
交わされることのない言葉
くちぐせのような夢 ....
絵本の側で
子供が頭をあわせ
内緒話をしている
二人だけの秘密は
二人だけの秘密のまま
やがていつか忘れられてしまう
僕らは今日必要なことを
ひとつひとつ整理していく
特別なことはない ....
彼女が好きなそのカフェにはいつも
雨が降っていた
店内はびしょびしょで
暑くて
植物が生い茂り
肉厚な緑の葉の上で
色とりどりのカエルが跳ねた
極彩色の鳥達が
テーブルの下で睦 ....
おとといの
夕暮れかけた空
君は
夏の底に
沈殿していったきり
西の夕焼けが
音をたてて色あせていく
手のひらの温度を確かめたくて
軽く握ってみても
汗ばんだ夏の終わり
いつだって ....
荒野で おとこが
口笛 吹いている
うしなうものさえ
ないもない と
知ってしまった 旋律を
みどりいろのタネから
ぼくはうまれた
うまれたときから
ぼくにはポケットがあって
そこにはぜんぶが
つまっていたけれど
たいようにこがされたり
あめにしみこまれたり
ほしに ....
晴れた日の夕暮れ
その詩人は必ず川原に現れた
夕陽を眺めては
気持ちを溶かし込みながら
一つの詩を生んでいった
ある時は静かに悲しく
ある時は力強い魂を
言葉を使いながら描いていった
....
昨日は職場のおばさんの
くどい{ルビ小言=こごと}に嫌気がさして
かけがえのない他の人さえ
土俵の外へうっちゃり
しかめっ面でひとり相撲をしていた
昨晩見た夢のなかで
旧友 ....
大人達に
後ろめたい気持ちが
あったのは 何故だろう
ちいさな わたしたちには
しゃがみ込めば
保育園脇の
沈丁花の繁みさえ
ひみつを 持ちあう
格好の 場所だった
....
今よりもっと
空が高くて
今よりもっと
砂の中に潜む星を
見つけるのが上手だった頃
四歳の幼さで
舌足らずな
Ich liebe dich.
ドイツ原産の弟と話す為に
ひとつ ....
遅い流れにひたされる街
今日も鏡は隠されてゆく
たましいのないもののふるえを聴く
たましいではないものに包まれたたましい
蜻蛉や蜉蝣
碧い石の眼
空を分け
空に埋もれ ....
遠く離れて 一人でいるとき
僕が何をしているかと言えば
君と同じように
起きて ご飯を食べて 仕事をして 休んで 勉強をして
ピアノも弾いたりして パソコンにも向かったりしてるのだけれど
....
昼飯を買って会社に戻る途上
頭上を素早く横切った影に
ふと目を奪われた先で
一羽の鷹が悠然と
青天を舞っていた
佐世保川はいつもより澄んでいて
きらり、と陽光を弾いている
鷹は、 ....
目を閉じると
ざわざわとした瞼の光がある
生き死にとは関わりのない所で
夜に終わっている
大変な引力で
言葉が土に還っていく
無音とはそういったもので
雪でも降ったりするんだろうか
....
窓硝子を挟んで
浅い春は霧雨に点在し
わたしに少しずつ朝が流れ込む
昨夜見た夢を
思い出そうと
胸を凝らしたら
微かに風景が揺れた
なかば迷子の眼で
周りを見渡 ....
山の中の坂道に出来た町のなかで一人だった
夜
五年も前
五年も経ってない夜
秋
マスターがアブラムシと言い張る茶羽ゴキブリだらけの木造りの飲み屋
別名だとはわかるけ ....
{引用=
かれこれ十五年くらい、俺は土を掘るだけの仕事をしている。
はっきり言ってしまえば、何も楽しいことはないし、あるのは日々蓄積する肉体の疲労感だけだ。憂さ晴らしのためにある給 ....
俺は墓標を背負って歩いていて
いつもそうだから当たり前だと思うかもしれないが
背負うってのはそう簡単なことじゃない
例えば仕事だ
この仕事の成功は俺の肩にかかってると言うが
それはつまり ....
(真っ白な雪が見たかった)
真っ白な雪をかきわけて
地面の温もりを感じたかった
こんなにも寒いのに
雪の一つも降らないなんて
(真っ白な雪が見たかった)
すべ ....
朝の窓へ起き上がればいつも
眠りと夢の、仄明るいマーブルが
窓形の光に飲み込まれて、消える
その途端、光の中を雨のように下降する黒髪と
閉じたまま濡れてゆく傘の内側のように黙った胸 ....
白髪を掻いて
新聞を読んでいる
あなたは
岩だ
猫を
下手くそに撫でる
次郎丸は
僕が名づけた
うちで生まれた猫たち 三匹
母親にとって
あんなに大切だった ....
木に囲まれた公園にロケットの形をした遊具があって
それはいろんな色の鉄棒と鉄板で出来てて
張りぼてで
螺旋の滑り台になってて
同僚と会社をサボって俺んちで短パンに着替えて去年の夏
Yシャツと ....
合理的で清潔で、迷いがない
自由で無責任で、自己責任で排他的で恣意的で、有限で
科学的で哲学的で、宗教的な世界が私に指し示した絵画
時間は正確で、太陽の動きとは関係が無く、季節は曖昧
....
夜を急かすように
遠く点滅を続ける塔の先端の赤にも
この街の川は知らん顔で今夜も
静かに月を映している
僕は少し落ち着かず
ひとつの夢を見ることが出来ない
僕はしゃがみ足元の
惑 ....
しとしとと
{ルビ煙=けぶ}るように春雨が充満して
気付いたら季節は僕らの目の前を
風のように通り過ぎて行ってしまう
消えてしまいたいなぁ
雨に濡れながら彼女はそうやって言う
まるで磨 ....
{引用=
久方の (日の光がのどかな春の日だ)
光のどけき春の日に (それなのにどうして桜は忙しく散っていくのだろう)
静心なく ....
冬になったら
彼が凍ってしまって
まるきり目を覚まさなくなったもんだから
やさしく体を開いてあげたら
ふたつあるうちの腎臓の
ひとつが石化してしまっていた
両手で上手に取り出し ....
・
好きと嫌いが
ギアの上で揺れていました
わたしはちょっと迷いましたが
結局どちらとも決められないまま
右手で好きも嫌いも
すっかり覆い隠して
細心の注意を払い
....
青空を白く
音の粒がわたり
とどめようとする目は
まぶしくまばたく
坂を下る陽
みどりを連れて
歩み去る金
指の花粉を
雪へ散らす
海から来た透明が
近づくもの ....
花を
花を摘みます
何度経ても
懐かしいと思う
春先
まだ小雪がちらつく
今
柔らかい
萌黄をすり潰した指先を
ほんの少しだけ
口に入れ
ほろ苦い
顔を
思い出しまし ....
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