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振り分ける少女の、
想
名前もない
痛む、芯も
未完成な少女の主題は
誰にも知られない、それだけの行く末
本を開けば文字に溺れた
さかなに、なりたかった
揺らぎ揺らすからだの線
....
戯れる森の雫が、
ひとびとの拍手のなかで、静かに横たわる。
あなたの流れる姿が、
森の節目に、厳かに薫り立つ。
標高をあげている森は、
巧みに感度を敷きつめて、
わずかに彩色を動かしな ....
ぼくは詩人
時は動き
明日へ未来へ
つねに今は変わる
今日もまた
夜の散歩をしていると
時の動きに出会いました
ようやく雨が上がった夜
湿り気を多く含んだ空気が
肌寒 ....
女は宛ら 一室の部屋だ
好きな男好みに 設(しつら)えられた
日々模様替えする 夜々配置換えする
九十九を過ぎた婆さえも 「あれまあ不思議!」と云うような
女は部屋の 一室である
想い人あら ....
そのとき奇跡を初めて信じた
この世に無駄ないのちの誕生はひとつも無いのだ
あっ、食べたね
その肉はさっきね、
やわらかく やわらかく揚げたんだよ
ああ
カリカリのドッグ ....
光る
ざわめく
お前を
連れ出す
打たれる
二人で
稲妻
はぜる
当たるぜ
俺たち
そんな
ひどい
あたった
ためしが
ないのよ
宝くじ
....
ぼくは詩を書きたい
雨に打たれるも
風に吹かれるも
晴れた心には関係がない
今日もまた
朝の散歩をしていると
心の傘に出会いました
雨降る道の咲く花に
打たれて忍ぶ意地 ....
雨があんまりたくさん降ったので
ひとつふたつと数えるのもあんまりだと
仕方なく濡れてみる
そうでなくとも独りは淋しく
雨雲は灰色の陰から
あれはきっと汗や涙に似たもので
此処は海に ....
魚類図鑑を開き
少年は魚になった自分を
想像する
エラ呼吸の仕方が
わからないので
いつも溺れてしまう
遺書は
鳥類図鑑に挟まれている
夏空の飛び方なら
誰よりも詳しく
知って ....
覚えていますか あの国道を
場所のことではなく
名前のことではなく
もう二度と通ることのない
あの
国道のことです
向日葵の頃には
とても眩しいものでした
容赦のない陽 ....
* 逢う魔が時 *
逢う魔が時に
夜が浸透してゆく
何も起こしてはならぬ
何も触れてはならぬ
何も感じてはならぬ
まなざし以外は
重ねてはならぬ
流されてはならぬ
逢 ....
{ルビ異花=ことはな}の{ルビ雲夜=くもよ}にしんわりんと咲き
翼よ
きみはなぜ
はたたくのか
熱く青くはためくからだ
その空間を根幹となし
風の性霊を動力とするためか
花 ....
君の操る必殺技を
よく知らなかったので
不用意に踏み込んで
吹き飛ばされてしまった
それと同じような時代、なのかもしれない
人は満水になると、河へ
誰の肩にも当たらないように夢 ....
はじめて海を知ったのは
函館山の東側、岩だらけの海岸でした
あちらこちらに見える対岸の
私との間は早波で仕切られ
たくさんの潜水艦が行き来しているのだと
おじいちゃんに教わりました
次 ....
旅先で
必ず訪れる旅館があって
其の庭には
花をつけない
見事な桜が佇んでいた
花をつけないのは
私のせいなんですよ
と
其処の女将は笑う
彼女は ....
夏ひらく夢は
空に爆ぜる大輪の花
ほんのり蛍の揺らめき
風孕むびいどろの澄んだ音色
今を鳴ききる蝉の声
儚く琥珀色に透ける抜け殻
明けていく毎日の残像
青銅の扉の
息に合わせて
風はふたつの挨拶をした
返事のないまま
なかへと消えた
粉の光
夜に沿い
まぶされてゆく
錆びた光
消える光
朝になり
窓になる前の窓の ....
花つき言葉 −もとこへ−
一周年の祝いに
なにか書いてみせようと思ったが
気負いのせいかどうもうまく書けず
かといって最初の年に
なんにもなしでは済まないぞと思い
月並みだが ....
あなたが、水かさを増す
「では、また 」
と 言って
あなたが身を反らして
木立から、わたしから
離れていった
その刹那から
あなたが、視界でいっぱいになる
あなたが、
....
父は昔から
美しい曲線の虜で
現代において
正しく電波を飛ばす事に貢献している
パラボラアンテナの白を
見て大きくなった私は
電波はアンテナの大きさに
比例すると信じている
言 ....
月のようでもなかった私は
君にうすぼんやりとした影を
もたらしたり
することもなかった
輪郭を
持ちはじめた気持ち
境界を求めてはいけなかった
あいまいなまま
分針が何度、 ....
豊かなだけの想像力なんか俺はいらない
そう思いながら自転車専用の真っ赤な道を歩いていたら
後ろから
すけぼーで
いかついリーゼントのお姉さんが
ざっ
と通り過ぎた
首筋には漢字で ....
絵はがきみたいな花丸正しい夏休みには
入道雲と蝉の声と蒼い海の三点セット
空と大地をパッキリと分ける入道雲は
どこまでも大きくまっしろで
桃源郷までいける螺旋階段を隠す
蝉はサイレン ....
ショーウィンドウを飾る
真夏のアイテムたちは
誇らしげに季節を謳歌する
けれどそこには灼熱の光線も
砂浜の輝きも届きはしなくて
街の雑踏はただ息苦しくて
日焼けした肌を ....
どんな蝶でも蜜を求める花に
好き嫌いがあるように
あなたの望む花と
わたしのなりたい花には
どうしても相容れないものが
あるのかも知れない
たとえば地味目なおんなのひとがいて
百人のおと ....
夜に、時々の夜に
震えるほどに凍えてしまう私なので
留まるために何度か
君を殺したことがある
深い深い、寝息
子守唄はいつもどこから来て
どこへ行くのだろう
私たちは何が怖くて
寄 ....
一.
潮風が
子らの顔を
歓迎す
優しい匂いは
どこか懐かしく
私の心を
浮き立たす
楽しい思い出は
何年たっても
色あせぬ
わたしも
むかし
子供だった
....
僕は僕それいがいなんでもない
僕の鎖で絡まれた心は矛先は
常に君の方向を示している
君は僕のことなんか一つも知らないけど
僕は君のことならなんでも知ってるつもりだよ
偶然 ....
月の光がさしこんでいる
誰もいない部屋
片隅で
灰色猫が爪を研ぐ
テーブルの上には
開封されることのない手紙
赤い切手の消印は───
窓の外を
遠い汽笛が通り過ぎてゆく
....
ひとたびの雷鳴を合図に
夏は堰を切って
日向にまばゆく流れ込む
其処ここの屋根は銀灰色に眩しく反射して
昨日まで主役だった紫陽花は
向日葵の待ちわびていた陽射しに
少しずつ紫を忘れる
....
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