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俺ぁね、鼻毛をね、抜いたんですよ
そうしたらばさ
なんともまぁ可愛らしくない
小人がぶら下がっていてね
それはもう凄い剣幕で怒るんですよ
お前は何だぁ
何様のつもりだぁ
わしらの住処がぁ ....
1 眠り
朝の眩暈のなかで、
一日の仕事を終えて、疲れ切ってから――、
職場に出かけても、
そこで、わたしにできることは、
只、泥のように眠ることだろう。
(そこには、青い灯台が、 ....
終電が過ぎて真夜中
ひとりきり家路を辿れば
無音ばかりがこだましてやるせない
呼吸をするたびに白い息は空に溶けていくのに
うまく言葉にできない気持ちは
もやがかかったまま解けてはくれない ....
高崎駅のロータリーで
道に迷っているおじさんがいた
丁寧に地図を書いてあげたら
お礼一つ言わず走り去っていった
駒形へ向かう電車の中で
携帯で話すおばさんがいた
勇気を出して注意したら ....
窓のない病室で
地球儀を塗り分ける
水彩絵の具の赤は
少しだけ優しい
冷蔵庫に
入れておいたの
私を生かす電池は
もう使えなく
なっていたから
安心を買うなんて
違反だって ....
{引用=
一、レプリカの四月
たとえばそれは食卓のさかな
二度と泳がない姿はあわれです
しかし言葉はあぶくですから
気付かれずに消える、その
あぶくこそが ....
あなたは今
ある地面に立っています
これからあなたはその地面から
上に行くのか
下に行くのか
二つの中から一つ選ばなくてはなりません
上に行く場合
足元が不安定になりますが
高 ....
具合はどう?
と問い掛けられても
よくわからないのだ
何か喉の奥につかえているようでもあり
ただ疲れているだけのようでもあり
それでいて急に、胸のあたりが苦しくなったりする
こうして
....
たまねぎを刻むと涙が出る
それにかこつけて
少し本気で泣いてみる
そうして
矢張りわたしは
要らない子かも知れないと思う
だけど午前の台所は
悲劇ごっこをするには明るすぎるし
誰かを想 ....
アダムとイブが
神様の庭を追われた一週間後
アダムにもしものことがあったとき用に造られた
もう一人の落ちこぼれのアダムは
目を覚ました
神様には
目覚めたときに
優秀な方のアダムがい ....
隠すことはできても嘘はつけない
たとえばインターネット
自分ことは隠せても
相手から聞かれたら
嘘はつけない
うまく隠せても
嘘はいずれわかってしまう
隠すことはできても嘘はつけ ....
貴女が居るから私がいる
私が居るから貴女が居る
貴女が愛してくれるから私も貴女を愛する
私が愛するから貴女も愛してくれる
貴女が生きているから私も生きる
....
17歳の春を覚えている
高校二年の春休みの夜
死に気づいた
いつか死ぬんだ
そう思って
胸が締まって
吐きそうになった
生きたいと思った
僕の意識が
僕のカタチが ....
男は我ら女を侵略する
二つの山あいを 猛々しい手と舌で闊歩しながら
歯向かうものなら 優しいその抱擁を武器に沈めてしまう
……その腕の海に
我ら女のか細い理性を切り取ってしまう
……細い糸を ....
切断された こ、と、ば
断面から折れこぼれ
中途までしかあなたに届かない
だから背を向けたのですか
断ち切られた視線
くちびるのあかぎれ
私は し よ を横に並べて
は に見立てようとし ....
こどものころ
よく聞かれました
大きくなったらなんになりたい?
わたしはいつでも
お菓子屋さんと答えたけれど
ほんとうは
ちがうの
わたしは
大きくなっても
なんにもなり ....
貴方ともう一度だけ
最後に
ワルツを
『最後にワルツを』
教師生活で
一番長く努めた
其の学校の廃校が決まったのは
年の瀬を過ぎてすぐだった
....
耳が
さっと
貝の形に
閉じ
て
夜が来た
黒目の
まんなか
星
星を
待って
い、る
さらさらさら
砂の
粒
耳
そっと開いて
花のように
....
髪の香りが永遠ならば
わたしはいつでも夜を待ちましょう。
ささやきの苦さがひとときならば
わたしは今でも夜になりましょう。
ルルリリ メルリ
いとおしいのは あな ....
{引用=
一、擬人法
かなしむこころではなくて
かなしみという言葉を覚えなさい
よろこぶこころではなくて
よろこびの色彩に詳しくなりなさい
問うことはよそ ....
*‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥¢‥‥‥★‥‥‥‥‥‥★
全ての光を呑み込み、その美しい味を咀嚼する
*‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥£‥‥‥‥‥‥★‥¢‥★‥
真っ黒の恍惚、ヴェルヴェットのジャケッ ....
ちらちら舞う舞う
ゆきのこそのこ
あすふく風の そよぐ黒髪
かえるまい
いや
かえろうか
真白な空の
冷たい熱の 鳴く結晶
あやす涙を
すくいとり
手紙にそえて
あすへ飛 ....
おおきなカバンはいらない
なるべくなら
手ぶらが
いい
気の向くままに街を
ゆかいなものに
流れるものに
みじかく綺麗にあいさつをして
気の向くままにときを
....
灰色の隙間から注ぐ
陽射しに手を翳すたびに
目を細め見やるだけ
温もりだけが降りてくる
北風が強く吹いているから
漏れ落ちた微かな光でさえも
永く待ち焦がれた春のようで
それは小 ....
午後から
雪がすると言って
ハツコは眠った
ハツコ
はつこ
はつ、子
ああそれは
どこまでも
降りしきる降りしきる
降りしきる降りしきる
向こうはもう見えないよ ....
二年前のあした
あの日もたしか、雪が舞っていました
鳴り止まない鈴のように
ただ、こんなふうに
降りはじめに気づいたのが どちらだったか
あなたはいまでも
覚えているでしょ ....
広がりを天に
透明な輝き 陽光を受けて
例えば台所、テーブルの上
飽きもしないで 口をあけて
満たされるのを待つ
透明感をまとって
海の青 空の青も
細長く切り取って、私は立つ
....
グスタフ・クリムト作 『接吻』には、
恋人の頬に背後から口づける男と
その愛撫に恍惚の表情を浮かべて応える
女の姿が描かれています。
他者を愛することのできないわたくしは、
これまで自 ....
赤い糸が見えるなら 黙って斬って
脈が打つままに 起こして狙って
眼鏡はずしたほうが 視界がぼやけて
あのひとのこと 想像しやすいでしょう
誰かの代わりでも あなたがいる ....
女子校育ちは気がつよくて
と、眉を顰(ひそめ)る父の
たしなめる手にエスコートされ
日曜はショッピングに行く
青白いガラス窓の
温室に咲く花でさえ
その身を愛らしく
あざとく子種を残 ....
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