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平日の夕暮れ
みすぼらしい服を着た中年の男は
公園のベンチに座り
モネ展の「日傘の女」のポスターを手に
喰い入るようにじっと見ていた
それを横目に歩いていると
前から乳母車を ....
今まで空だったところに
建物がどんどんつくられて
空が狭くなってゆく
青くてやわらかい空が
暗くてかたいものに
覆われてゆく
辛いときに空を見上げても
もっと悲しくなるだけで
この弱さ ....
水の匂いが燃えてゆく
漆黒は
うるおいのいろ
こぼれてはじまる
灯りにけむる、
波のいろ
疎遠になれない花の名に
ひれ伏すともなく
かしづく儀礼は、 ....
思い出の隙間からあの人は消えて
荒涼たる未来には誰も待ってはいない
吹きすさぶ風は淋しさを歌うけれど
何も聞こえないよりはいい
何のために誰のためにそんなことわからない
嫉妬で顔を洗い嘆きで ....
頭の中につまっているよ
つららのように出来たんだろうねこの
目にうつるものたち
首の後ろがちりちりしてるんだ
太陽にあきらかにされた
急勾配の斜面の野原を
こわれかけているしずくがたくさん ....
ひとりひとりを抱いて放して
そしてひとりも戻ってはこない
雨のなかの羽
ぬくもりとまぶしさ
ひたいの上の
羽の柱をまわしながら
空に立つ不確かで巨きな
ひとつの羽を見 ....
ひとが
ゆめを
みているの
それとも
ゆめが
ひとを
みているの
ふるい
ひょうしき
のようなものがあって
おとがしている
あのさきに
うみがあるの
ひのあたる
....
波が編む細やかなレースが
爪先の向こうで結ばれてはほどけ
刻と陽射しは
翡翠や白の模様をすこし深くに施す
水平線、と呼ぶには平らな
空と海の境界を見ながら
こうして言葉を探す自分を思う ....
その本を開くと
一遍の詩が終わる{ルビ頁=ページ}の余白に
{ルビ紐=ひも}で結んだ「空の鏡」を首からかけて
両腕をひろげた小人が
立っていた
その本を手にした読者の
誰も知 ....
時計は歌いたくなった
毎日あまりにも同じリズムなので
いつもとは違う
もっと波打つような
そんなメロディーを求めた
いろいろな楽譜を見ながら
自分に似合う曲を選び始めた
秒を刻む歌よりも ....
べらんだでは
せんたくものが
かぜになびいていた
にわのしきいしを
あるけば
かげがおちた
さいごのひ
しらないおじさんが
ちちとはなしをしながら
いえをのあちらこちらをみて
しき ....
何もかもがいやになって
下を向いて歩くのだ
メールを
打つふりなんかして
詩を書いたりしちゃうのだ
幸せな人は詩を書かない
というのは本当です
だけど
私の不幸など
ありふれ ....
泣きたい
を
こらえて
袖を惹いた
仕合せ
が
霞んでゆくから
千切れる想い
影に溶かして
あとどれくらい
幻の傍で
一人になって
ふと疲れを感じる昼下がり
もう数えていないのと
ぽつり呟くあなたを
抱きしめたら壊してしまいそうです
指先で宙に描く願い事
それが何だかわかりませ ....
掛け違えた光だとしても
あふれかえることに
消えてはゆけない
肩だから
底に、四月はいつもある
泥をかきわけて
そのなかを親しむような
見上げることの
はじまりに ....
十字架のネックレスをした女は
今日も「通りゃんせ」の鳴る交差点を
紅いハイヒールで夜へと歩く
人知れぬ部屋で
男に{ルビ接吻=くちづけ}られる
濡れた首すじに
垂らした十字 ....
入学
クラスメイト
友達
着席
教室
机
鉛筆
・・・
月日
一人立ち
チャイム
難しい授業
うるさい先 ....
鶯が
桜に色を
わたしています
今日は雨
あなたは
静かに
そういいます
書きかけの手紙
まだ、
ポストへ
出せずにいます
花びらは
雨を乗せて ....
こうやって一つずつ年が離れていくんやね
来年になったら
また一つ年が離れて
うちが十年たっておばさんに近くなっても
あんたはあの頃のままのあんたで
うちらの年だけがどんどん離れてい ....
南から風が強く吹いて
あ、
もうそんな季節なんだ
と静かに笑った
はなびらが
はなびらでいられなくなるように
静かに笑った
カレーライス!
って言う ....
エレベーターの中は
どこまでもお花畑でした
見たことのあるような花ばかりだったけれど
すべての名前を言い当てることは出来ませんでした
ああこんなところまで来てしまったのだなあ
と感じて
中 ....
あなたに似ている
と。言われたくありませんでした
わたしはわたしに過ぎず
あなたのクローンではないのだから
あなたがいなければ
生を授かることはありませんでした
それだけは否定でき ....
とりが
わたしをねむり
わたしが
とりをねむる
しんや
ばすか
とらっくか
おおきなくるま
のようなものが
いえのまえを
はしっていった
とりや
わたしが
めをさましたりゆう ....
特別な時が終わり
あなたは宴を胸にしまった
遠のくのではなくはじめから遠く
その遠さの上を行き来していた
うたや笑顔や踊りが過ぎ
原や道や水たまりが
火と響きを片目にしまった
....
あなたが
この頃やさしいのは
何か企みがあるのかと
首を傾げていましたが
いま、この橋にたたずんで
ようやく気がつきました
もう
春なのですね
欄干にもたれて
あなたの
い ....
人間になったときに
長いしっぽは捨てたはずだったが
ゆうべまた失くしたので
蜥蜴になろうと決心した
体が楽になったのは
まっすぐで生きられるからだろう
背中が陽に染 ....
写真では思い出せる
ものがたりは忘れてしまった
楽しかったことの記憶だけ
振り返ることもなく
通過電車のあとを追う
錆びた風であれば
印画紙を風の色に染めて
完成する思い出
岩 ....
幾多の苦難を
一つ一つ思い出に変えながら
今日も夜空には過去が浮かび
月影は淋しさをなぞるように
きれいな円を描いている
たとえば
「さよなら」の四文字を
どの星にあてはめれ ....
ただそらだけがある
ひとも
たてものも
どうしょくぶつも
わすれて
すみずみまで
ひろがっている
きおくのそとがわから
ことりがいちわきて
はばたこうとすると
そらはきように
み ....
花薫じる風
春の果肉は発する
ぬくみの芳香は
顔を撫でる
揺れる山肌の草色
白いかげろうは延び
青い遊戯は列をなす
この涅槃の奥底まで
ワルツの舞いは膨らみ
太陽にほ ....
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