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たとえば
水銀の
体温計の
危うさだよ
それは
けだるさの
端っこで
かすかに
午後の授業
先生
砂時計が
ぜんぶ
落ちたら
眠ります
少し
似ている
前髪 ....
「 星のうえで 」
とても静かな星のうえで
いのちを祈るひと ....
{引用=
? コラージュ
通勤電車の空間の歪み
ポリバケツの中をワープしながら
流転する定めの憂鬱な朝
紺碧の地面に近づく
窓外の空気
遠くに ....
音になるまえの おと
歌になるまえの うた
暗く静かな時空の中に
君の居場所は
きっとあった
生まれたばかりの かぜ
一番最初の なみ
弾かれるための弦のように
始まりの場所は
....
暮れた水銀灯アーチを
潜っていた
ざらついた街
妖しい電飾の明滅
時計仕掛けの日々が
万華鏡の筒を
眼に視えぬものにする
きらびやかな銀彩は
濁った表情に果てて
追いかけた微 ....
夜明けが待ち遠しいと思ったら
朝焼けが 綺麗だった
今朝
涙を拭った指が焼けるようで
それは
凍えた指先と
まだ眠たい頬の所為だと知る
高く抜けた空は
放射冷却
それ ....
東京、
その日もひとりで
幡ヶ谷の太陽と
馬鹿みたいに重い、
心細さを背負って
唇を噛んでた
夏の
だれるような湿度と
車の排気ガスと
肌に纏わりつく
人間、の ....
裏庭で流木を見つけました。
流木なので、
どこからか流れて、
どこからかこの庭に、
流れ着いたのでしょう。
流木はぐっしょり濡れていて、
近づくと強い潮 ....
箪笥の奥には
凪いだ海がしまわれている
微かに潮の匂いが漂っている
妻は夕暮れの淡い光に
静かなシルエットとなり
折り目正しく丁寧に
洗濯物を畳む
その姿は僕らの感傷を代弁する
何 ....
長い年月を波に洗われて打ち上げられた
流木のように古びた椅子に座っている
おまえがいるだけだった
正午の青空のした 影もなく
呼吸さえ 受動で
降りかかる陽射しに ....
羽のうしろに光がいて
羽が光を振り向いたとき
ひとつの石の眠りのなかに
数千万年の微笑みがあり
光だけが咲く庭の
短い歴史に埋もれたのだと
....
あなたが通り抜けた改札で
何故か
わたしは置いてけぼり
あなたが買えた切符
何故か
わたしには買えなかった
人生には幾つもの
改札があって
選ばれたひとと
そうでは無いひ ....
ずっと
遠くに
行ってしまった
くじらの
足音
どこに
ずっと
北の方に
どうせなら
満天の夜が
いいね
少しずつ
舵をとりながら
長い旅だね
くじら
しっぽ ....
緑の葉を一枚
唇に{ルビ銜=くわ}え
言葉の無い唄を奏でる
黒い影の姿で空を仰ぐ
わたしのまわりが
ひだまりとなるように
* この詩は「詩遊人たち」 ....
子供の頃
両親のあたたかなまなざしに
まもられて
幸せはいつも
「 そこにあるもの 」
だった
やがて大人になり
自らの手を伸ばし
{ルビ掴=つか}もうとした
....
※いちにちめ
朝起きたら
靴から花が咲いていた
綺麗な花ではなかったが
あんまり堂々と咲いていたので
迷った揚句に仕方なく
会社へは裸足で行くことにした
※ふつかめ
朝起き ....
こえ、
ぼくを剥いてゆく
この
あかぐろい
にんげん、を
剥いてゆく
こえ、
きみの
こえ、
ふたしかな
やさしさ
ぼくの ....
いくら、
書いても、
晒してしまえば、
それで死んでしまう。
次の瞬間には、
なにも書けていない気分。
気が付けば、
また死体を漁って、
屍書き、
....
空と 空のかたちの窓と
空のかたちの音が重なり
幾つもひらくものの内の
悲しいものが言葉だった
小鳥が鴉のうたをついばみ
鴉が小鳥のうたをついばみ
小鳥は鴉に 鴉は小鳥 ....
日が暮れて今日も塩屋に
ナメクジたちが集まる
口々に死にたい死にたいと言いながら
塩を求めにやってくるのだ
けれど感情が昂りすぎて
みな自分の流した涙で溶けてしまう
翌朝塩屋の前は
粘液 ....
ぼくらの夢が一つ消えていった
ずっと空き地だった場所に
高層マンションが建つらしい
みんなでゲームをしたり
自転車で走り回ったり
喧嘩になったりもしたけれど
いつも気軽にみんなが集まって
....
三毛猫は憩う
幻燈の夜
羨望にすました
猫の瞳に膨らむ
ブリキの月
悪戯な黒雲が
月光の尻尾を隠し
この乳白の森を
蒼い舌で塗らしてく
魔法が解けてくようだと
きみは云 ....
君を思う
とき
上と
下に
僕は
引かれて
風も冷たく高く高く上り
落下を予感する
ケラの様に深く僕を隠し
浮揚のしかたを知る
地平からすれば同じこと
君から ....
読まれて落ちる卵には、
きっとわたしの顔は付いていない。
だからどうぞお好きなように、
割って食べてくださいませ。
わたしの伺いしらぬ、
卵でございましょう ....
枠に閉じたら 絵だと
逆らわなかった息づき
飛べたものが 石の中
墜落もできずに
鎮火を待つ間
まだ 蝶でいる
父さんは
今週も仕事で行けなかったが
「きょうはどうぶつえんで
きょうりゅうとおほしさまをみてきたの」
少々想像力を要するユキの報告をききながら
夕暮れ
隣家の妹夫婦 ヨコヤマ家へ
....
ああ 今日は
なんて美しい音色だ
風はすこしばかり強すぎるけれど
これは春なのだから仕方ない
それよりそこかしこで
草も木もみんな楽器みたいに
お互いをこすりあわせている
風が吹 ....
ホームセンターで
子象を買って帰る
前から欲しかったので
お金をコツコツと貯めていたのだ
家族の喜ぶ顔が見られるとも思ったが
案の定こんなもの買ってきて
と妻に叱られる
「詩とは違うんだ ....
硝枝はけぶる
柔らかな朝
ああ
いい匂いだ
熟睡した樹皮は
哀しみを煎て
苦味すら香ばしい風
そんな
朝もやの窓を包み
夜明けの香りを注ぐ
大気のフラスコ
朝焼けは沁 ....
?.
神経質そうに痩せた手を合わせて祈っている
ひざまずいて
教会の中 ステンドグラスを割ってこぼれる夕日に溶けそうな
白金の髪
俺はその斜め後ろに座って
じっと ....
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