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どのページが
めくられたのか
あまりに細い指先は
忙しさの数だけ
忘れてしまう
それがつまりは
ふたりであることの
やさしさを
難しく
する
純粋であるほど
不確かに ....
なんとなく
わかっていたけれど
夕風は
すっかり
つめたくて
昼間の陽光も
どこかしら寂しげで
緩やかに
届かぬ夏を
受けとめる頃合です
おろそかに出来るくらいなら ....
生きている限り湧き上がってくる
もう駄目だと諦めかけた思いを
励ますかのように
五体のひとつひとつが
出口を求めようとさざめきだすのを知覚し
もうひとつの確かな意思
本能だとか呼ば ....
冷蔵庫を背負う
重くて温かい
海のようなものが
背中から体の中へと
伝わってくる
夏休みを終えて
少したくましくなった
児童たちの声が
外の方から聞こえる
かつてもこうし ....
日の当たる柵の上に座っている
町に何匹ものこがねむしは
踏み潰れて
鉄の車輪の
切りつける音は輪を描いている
灰とか
羽を
風が吹いたらめくり上げて
ひとつ眠って
目を覚ます頃には
....
硝子の風が
きりりと秋の粒子で
二の腕あたりをすり抜け
寂しい、に似た冷たさを残して行く
野原は
囀りをやめて
そうっと十月の衣で包まれている
わたしは
それを秋とは呼べず
....
季節はずれの
つよいひかりに照らされた目抜き通りを
影を焼き付かせて
まばらに人が行き交っている
真っ直ぐ南北に延びた道には
終わりも始まりも無さそうで
くるりくるりと仕掛け時計の太陽が円 ....
排気音が高く
高く空へ昇って
陸橋を走るぼくは
町並みに連なり
息づかいみたいに
浮かされて
白くあからさまな
積乱雲を
水平して
開けていくにつれ
早く
....
木陰で体温の
呼吸する
と、内と外とが入れ替わり
境目に懐かしい
わたしのかたまりがある
施設の人と集配車の運転手が
簡単な口論をしている
近くのベンチで関係のない
小柄な男性が ....
雪に閉ざされた街と
鉛に封じられた空が
防風林の向こうで
混じりあって、深藍に
レールギャップを鉄輪が踏む音
ポイントを焼く篝火の色
私は泊まる宿も決めず
真っ白な駅 ....
切符を握った手が濡れてきたから
てのひらを上に向けて解放してやった
そうしたら切符は川になって
行き先はすっかり見えなくなっていた
川は
僕だけが感じる速度で流れ
薬指、から滝 ....
キレットの真下の残雪で
オレンジ色のジャケットが
タルチョのようだ
鳥たちの羽ばたきの音で
あちらへと招いている
おまえはもはや
ことばだけになった
ど ....
落葉がそぞろに風にふかれ
雲は青く高い空をゆく
うらの{ルビ小径=こみち}の縁石に腰をかけて
杉といっしょにゆれている
夏の{ルビ遺言=いごん}は朽ちることなく
静かに実 ....
声にならなかった
あらん限りの力を込めたはずなのに
例えばそれは
孤島に取り残されたおとこがひとり
遥か水平線に見え隠れする
船影を
蜃気楼だとはなから諦めているかのように
もし ....
冷やし中華が
静かに終わった奥の方
特別なこともなく
人をまたぎ
人にまたがれ
狭い柄模様のシャツが
時々きれいだと感じられた
入口の貼紙には
かつての文字のようなものが書かれ
それ ....
二十歳の黒髪のような、
ブルックリン橋から、曙橋を繋ぐ空が、
未踏の朝焼けを浴びてから、
青く剥落して、雨は降ることを拒絶した。
とりどりの青さを、さらに青く波打って、
空は、傘を持たずに、 ....
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く
九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
寝台車の匂いが
掌にする
腕はまだ
距離を測っている
残されたものを集めると
骨の近く
きしきしして
初めて靴を買ってもらったときの
恥ずかしい喜びしか、もう
いらない
....
比べたくなるものがある
幸せの度合いとか
それぞれの人生のありようとか
ひとと比べることで見いだせるものとは
柱に刻まれた幾筋かの古傷は
生を授かった証であり
輝ける未来への歓声で ....
泥を
振り払おうとする腕こそが
いつまでも拭えない
泥かもしれない
確かめようの無いその有様を
透明である、とは
誰も語らない
そこでまた
ひとつの泥の
可能性が
散る ....
老廃物と手をつなぐ
せつないから
死んでるようだ
見たものが
足元で花になり
ピアスでしたね
初めてのプレゼントは
初めてでしたね
はがれていったのも
見送ることは時々
見送ら ....
かそけき風の香音(かのん)を連れて
秋宵の橋を渡る
あふれる水の数を
わたしはしらない
契る言葉の薄紙
序(ついで)を忘れた指先で鶴を折る ....
{引用=
空を
ただよい
流されていく
やわらかな白を
ばら色に染めながら
闇に墜ちていった日
あなたは秋の夜になった
星座があなたの中をさまよい
....
砂まじりの夕焼けが
河口の水面を鏡にして
車のクラクションまでが
赤方偏移すると
空がどこにあるのか
行方を見失ってしまい
だんだん宇宙になるその正体を
冷たく知ることになる
....
鋭角的な警鐘が
残像する
私の眺めのどこかに いつも
おそらくあの時から
導音を失った私の音階
私はそれを
探しているのか
いないのか
果たして探すことを許されているのか?
....
みどりいろに見えた空は
そりゃ当たり前みたいに青いわさ
そうやって
きかれりゃあ
そりゃあ
なんかいちまい
目に膜が
かかっとる
うすくて
透けとるのが
はがしてみやあ
....
息をひそめて
(葉も揺らさぬように)
焚き火が揺れる
煙の中でも煙草を吸う君は
跡形もない言葉のままで
髪先を星座に投げる
傷跡だけを残すために
遠くの峰でわき上がる
季節 ....
後退する夏の左腕をつかまえて
さみしがる頚動脈にあてがい
しずかな熱をからめる
満たされては退いてゆく
寝息の揺りかご
いちばん弱い部分は
あずけたままで
届かないエアメールの
....
届かない、ところへ
ささやく
あきらめではなく
染め抜くように
静かに
いちばん遠い胸の奥で
月夜をおぼえているかい?
欠けた鏡のまぶしさではなく
影の地平から昇っ ....
青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している
{引用=
手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引き ....
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