すべてのおすすめ
母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛 ....
裂けた木々の{ルビ音=ね}
あふれ 重なる川
虹彩の無い灰紫の眼に
生はかすかにゆらいで見える
原を駆けるものの涙も
草をかきわけるものの血も
円く平たい空気の底に
....
ぐるっと回ったら国道だ
しばらく走れば森がある
色なんか聞くな緑だ
緑に決まってんだろう
緑
緑
緑ばっかだ
なんだっけあれ
あの変な車で行けよ
あの変な車の変な色
な ....
あなたのもとに
つながっているだろうかと
また海に来てしまった
彼方の水平に
上昇気流の痕跡が偏西風に流れて
波間に姿も映さず高く飛ぶ
渡る鳥、それよりもずっと星のそばで
焼かれる今 ....
眠れない夜に羊を数えてみても
ウール100%のheavenly dreamが訪れる事もなく
二万一千頭位まで行った所で
東の方角に朝焼けの予感が貼り付きはじめる
一日中数えても十万頭にも満 ....
ある日
夜、歩いていたら
街灯がやたらと
光って見えた。
何度目をこすっても
光って見えて
どうしても
吸いつけられてしまった。
だから、
もう
帰れないと思った。
秋の中にも秋があり
気がつく時がうれしくて
秋を問わず
季節を愛させる
暦でわかる秋よりも
手に触れる
目に見える
やわらかい秋があることを
自分の中にも自分がいて
気がつく ....
おいどの大きな者が
持てはやされた遠い昔の
おんなは血を繋いだ。
夜毎
亭主とまぐわって
子を産み
子を育てた。
おいどの小さな者が
持てはやされる今どきの
おんなは血を乱す。
し ....
夜の長い季節がめぐって
今年もまた
潤んだ果実の薄皮が
あなたの細い指先ではじけて
枯色の穂の律動
その春のようなくちびるに
すべり込むのです
かわききった大地で
....
あなたとおそろの夫婦箸
いまはもう使う気にもなれない
あの頃は愛の姿を信じていた
同じ季節の同じ日々
それでも、素肌に感じる感触は
あの頃とは確かに違っていて
ひとり台所に立てば
化学の ....
壁に{ルビ掛=か}けられた
一枚の絵の中の蒼い部屋で
涙を流すひとりの女
窓からそそがれる
黄昏の陽射しにうつむいて
耳を澄ましている
姿の無い誰かが
そっと語り ....
気がつくとその{ルビ女=ひと}は
明け方の無人列車に乗り
車窓に広がる桃色の朝焼けを
眠りゆく瞳で見ていた
列車がトンネルに入ると
全ての車窓は真黒の墨に塗られ
闇の空間を ....
象の飼育係をやめて
バスの運転手になった
象の目は悲しげだ
と言うけれど
乗り降りする人たちも
体のどこか一部が悲しげだった
遠くに行きたかったのだろうか
数頭の象が停留所にいた
....
ひとり きりの キッチン
包丁の 手を止めて
ふと
顔を あげた 窓の外
枯れ葉が 一枚
はら はら と 落ちてゆく
まだ 半袖のわたしは
深まり行く 秋 ....
お前の髪
蚕の繭だったらなあ
白くて細くてふわんとしてて
綺麗だろうなあ
俺はお前を紡ぐんだ
糸車を
カラカラ言わせて
それから織って
お前は美しいすべらかな生地になり
....
ゆっくりと少しずつ時計は時を刻んでいく
叶わないとしていながら
行動に移してスグに失敗
悲しみの奥底の小さな穴から見える
希望絶望そのほかの
万華鏡に反射した波 ....
ぼくは詩人
その季節にはその季節でしかなく
その人にはその人でしかない
今日もまた
夜の散歩をしていると
秋風に出会いました
その風は
暑くもなく寒くもない
夏でもなく ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね
小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
東京行きの列車が
一番線のホームに到着する
あれに乗ればトーキョーまで行けるのね
娘は言った
うん、行けるよ
行きたいな、トーキョー
この間の日曜日みんなで行ったじゃないか
....
秋の空気には
透明な金木犀が棲んでいる
陽射しに晒した腕が
すこし頼りなく感じ始める頃
甘く季節を騙す匂いは
思い出の弱いところを突いて
遠くにいるひとの微笑みだとか
風邪気味の ....
深閑とした梨畑で
ひとり 蜂の羽音を聞いていた
風は足音もせず忍び寄り
あれは少女だったろうか
黒い瞳の きらめく星の
かすかにふるえるのは
僕の胸の鼓動なんだ
こんなにもうるさ ....
なびくもののない
丘の斜面に
影はなびき
空へ向かう
影はいつも
空へ向かう
色は草から
外れかける
外れかけたまま
そよぎつづける
陸橋の陰
枯れ川の路 ....
隣を歩いていた君の右手が
隣を歩いていた僕の左手と
ごっつんこしたから
僕らはそのままなんとなく
手を繋いで歩いた
映画を見ていた君の手が
映画を見ていた僕の手と
ごっつんこしたから ....
久方振りの花逍遥
珍く機嫌のあんたから
誘い口説かれ花巡り
両眼遮る石竹時雨
風音ばかりが喧しく
あんたの{ルビ睦言=こえ}も届きやしねぇ
二人そぞろに歩みゆく
外れず違わず迷い ....
桃の産毛がこそばゆいので
黄昏は早くやって来る
桃の実を齧ると
甘い果汁が口なかに広がって
心をほわんと幸福にしてくれる
この愛らしい実のように
私もすこしは
やわらかくなったか ....
あの煙突は窓ではないのか
内に鏡が巣喰っているのではないか
めまぐるしく変わる空の色を
まるで気にもとめずに
昼の昼たる所以を
その内部から投影せしめている
あの灰色
あの煉 ....
コスモス揺らめくかの丘に
置き去りのままに鐘が鳴る
なにも言わず別れた日さえ風に鳴らされ
君は今は誰かと
夜に沈むのでしょう
明日は晴れです
君なしで始めた暮らしが
君な ....
ささやかな快楽と引き換えに
悪魔に魂を売った男がいた
垣間見せる仕草には
気付く人には気付く冷たいベクトル
遠くで
どこか遠くで暮してみたい
街では全ての人が看守 ....
雨で頭も体も重いから
今日は一日眠って過ごそう
ピンクのタオルケットを
頭から全身被ったら
まるでピンク色のさなぎの様
中から見る色もピンク一色
....
地上へ向かう木の葉が見せる
一瞬の華やかさ
揺らぎ
心の根幹は
頑丈にできているけれど
心の枝先は
いつも何かにあおられている
言葉が
木の葉のように舞い落 ....
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