すべてのおすすめ
胸は
すぐに
いっぱいになります
それゆえわたしは
多くを連れて
行けません
あなたを
はじめて呼んだ日に
こころの底から呼んだ日に
海は向こうになりました
永 ....
過保護な獣は病みやすく
保護なき獣は
{ルビ傷=いた}みやすい
野に{ルビ棲=す}む者よ
たがいの{ルビ荒=すさ}びが
見えないか
涼しさ寒さは紙一重
闇夜も夢も
紙一重
....
{ルビ海鳥=うみどり}は
{ルビ淋=さみ}しくないて いますよと
波間のふねを
そよ風が
帰っていって 透きとおり
なき声ひくく羽ばたいて
夕べの斜陽が今朝方に
燃え映ってしゃらしゃ ....
手でも叩こうよ
しあわせであっても
そうじゃなくても
しあわせなら
よりしあわせになるように
そうじゃないのなら
少しでもしあわせに近付けるように
できることなら
あなたの ....
予感する、
みどりの枝葉は
たわわなきんを孕み
ひとときの甘い溜息や戸惑いを
その足元に散りばめる
枇杷色の、
おぼろなる気配は
風の匂いに神無月の宵闇を語り
遠くなった声の記 ....
黒髪を 風にすいては色もなく
岸辺に咲いた 白い花
ひんやりうずく 視線に限られ
カラスアゲハは はねを日に焼き 沈黙を舞い千切る
きみの
笑顔の理由を
そっと教えてくれないか
ぼくらはそれを
上手に広げてゆける
知らないうちに
新しくする
ささいな物を
拾い集めてゆくことが
ぼくらを作り
....
そこはいつも
清潔な湿度と
せつないじゅうりょくの
香りにみちている
身ごもったおんなたち
髪を横に束ね
しずかにもたれている
雑誌をうつくしく取りだし
うつくしくめくる
とろと ....
無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる
それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けら ....
プール前の花壇に
コスモスを見つけて喜んでいた そのくせ
君は、緑色のため池に沈んだ季節を
あまりに切なげに指す
わかってる
君も、僕と同じ色が好きなんだろう
空のいろ、でもなく ....
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける
十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう
それらの
秋という色や匂いに混 ....
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで ....
湿ったソファーに沈みこんだ
少女の
くちびるからもれる
母音の
やさしいかたちを
泡にして
水槽のふちに
浮かべている
*
贈られた模型を
にこやかに受け取り
持ち帰って ....
瓦礫に腰かけて
悩んでいる天使がいた
天使でも悩むんだ
と僕は云った
天使だから悩むんだろう
と君は云った
そうかもしれない
どうして悩んでるんだろう
と僕
翼が汚れているか ....
あいの里
しのつく秋の{ルビ雑木=ぞうもく}
湯ぎりのしずく
かじかむむねのめぐみよ
髪を結い
知らぬみちをぬけて
はにかむ街へ
いつか人とはぐれて
ふちにたたずむ
銀のあかりあ ....
どんな町にお{ルビ囃子=はやし}が鳴り響いて
どんな町で葬列が連なってんのさ
僕は家へ帰る
青と黄色と黄緑のガラス窓が
なにかしらハンマーで叩き割られて
キリキリ、と
破片が落ちてゆく床に ....
いさり火の あかく燃えたつ 秋の暮れ
いっぴきの蜘蛛は、
自分の領分をわきまえて
一心に一糸の糸を張りめぐらす。
それはそれは正確で絶妙に
果して、
わたしはどう ....
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
曇る窓の先は雨
バスの湿り気に汗ばむ
ポケットのハンカチ
フロントガラスをぬぐうワイパーの往復が
息苦しさをリズムにのせようとする
雨の降るしくみは
学校で教わった ....
うそは泥棒のはじまり
だったはずなのに
ひとは誰でもうそをつく
愛するが故のうそだからと
あのひとは
目も合さずにつぶやいた
その場しのぎのうそを重ねて
針千本の〜ま〜す
....
練習船
黒い尖塔
木馬の何頭かを失ったまま
メリーゴーラウンドは廻転している
空はいつでも鋭角
時折少年が墜落してくる
旗竿の上で
燃え尽きる旗
その下でそれでも昏い宴はつづく ....
街に日が射して
コンクリートの
続く壁面が白く発光しているのを
たよりにつたって
あるいて
その擦り傷のようなざらつきの
わずかな影のさき
壁の尽きるところの
晴れや ....
暑さがまだ
襟元にも残ってる
汗との少し
間違いがあって
葉をかきながら
歩くあなたの足元
側溝の蓋が
少女の口のように
開いて
ふとある日から
そのままの感じがする
ひき ....
だまされることばかり
気にかけて
誰かを
だますことには
疎いものです
それなりに
気に病むのだと
難しい顔を見せるのも
大人のたしなみです
使いこなすべき
道具です
....
水面はしずかに
うそをつく
その
うちがわに包む
かすかな声を
時間の
呼吸
を
ひとに
こころに
えがかせて
完全なる傍観者として
何ひとつ
あばかれない
....
北風が公園の遊具を
カラカラと転経するかのようで
あわてて耳をふさぐと
もう名前も忘れたあのひとが
私を呼んでいるのに
声は私を忘れて
名前はだれにも届かない
やっとちぎり取った ....
夜明け前
神々の気配が
冷えた大地をわたり
静かな{ルビ洞=うろ}に届けられると
指さした方角から
蒼い鼓動が、はじまる
やがて
優しい鋭さをもって
崇高な感謝があふれだすと
う ....
手紙を書くときの始まりは
どうしてもこうなってしまう
「お久しぶりです」
大変便利な世の中で
携帯やら電子メールやら(「電子」って古臭い)
いろんな意味で距離が縮まって
僕なん ....
口ぐせになっている
おとなも
こどもでさえも
何かと言えば口にする
死ぬほど頑張ったのか
どれだけ努力したと言うのか
口にすればするだけ
逃げていってしまうものがある
それ ....
あのひとのまちは
晴れるだろうか
あのひとのまちは
曇りだろうか
あのひとのまちは
雨だろうか
………
あのひとの季節には
どんな花が
咲いているのだろう か
....
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