すべてのおすすめ
おでんを
初めて食べたのは
あなたの家の
ばんごはん
半透明の大根に
皮のやわやわなちくわ
味のしみた卵
だしを二種類とるのがコツなのよ
と
あなたは言ったっけ ....
身のまわりのひとところが
なんだか前よりも
がらんとあかるくなった気がするのは
そこに虚無がひとつ
生まれていたためだった
私はいまだその大きさも輪郭もつかめず
いつかつかめる日がくるかど ....
どうやら先日から
天井裏に
ねずみよりも大きくて
鳥よりも小さい何かの動物が住みついたらしい
夜になるとばたばたと走り回って
うるさいことこの上ない
ただ不思議なのは
わたしの真上で必ず ....
まあるい卵にうさぎの眠り
たゆたう袖から
虎のまなざし
いつかは還る最果ての灯へ
のぼる姿を
手から
手に
浮かべた舟は遠ざけて
くれない川面に
こもりうた
幾 ....
世界が希薄になっていく
高い高い、高い場所で
不純な核にとらわれて連れ戻された
綺麗なだけの名前で呼ばれるもの
海は無限のやさしさでとかして
吹き抜ける音や打ち寄せる色だけが ....
やさしいけもの
おんなじ日に生まれて
いつでも一緒
やさしいけものは
決して箱の中から出してはいけない
それが母親との
唯一の約束であったし
幼いわたしは
約束の文字が
なんだか ....
どこから こぼれてきたのですか
雨の かがみ込んだ内で
抜けられない 靴ずれに
しみる痛み
知らないうちに 紛れ込んだ
砂の汚した 靴下
脱いで 素足になりたいけど ....
ネイキッドビーチの坂を降りたら
一組の男女が全裸で歩いていた
それはアダムとイブのようで
神秘的な何かを感じた
嬉しいとか楽しいとか
満ち溢れていたはずの感情
知恵の林檎を食べる前まで ....
左手しかポッケットに入れられないのは
右手で傘を持っているためで
少し泣きそうな顔をしているのは
暗くなると君を思い出すからである
急ぎ足なのにけして駆け出さないのは
帰り道の途中に墓場 ....
瞳がかすむように
この両手がこごえるように
なぜ 淋しくなってゆくのだろ
*
雪よ 降るのでない
悲しいわけじゃないけれど
彼方で
白い夜が{ルビ蹲=うずくま}る
....
{引用=
一、漆黒
かりそめをながく着て
寝所のすみに
けがれを
灯して
目をつぶるから
ほこりがつもる
目だけを頼れば
いしにつまずく
なぞるだけでは ....
H
「十万投稿記念企画参加作品」
いつの間にか暗くなり
手暗がりでは捗らない
行灯の火をともし
目をこらして
仕上げを急ぐ仕立屋が
ふと窓の外に目をやる ....
パピヨン
七色の翅を震わせ
夢から夢へ
月の花園で白百合の露を吸い
ひらと空の彼方へ
星になる
夢の欠片を残して
パピヨン
私の夢に舞い降りて
花から花へ
星の野原でやさしい{ ....
振り向かない力が
勇気となって
道のない前を
歩いてゆける
淋しくはない
振り向かない力が
翼となって
果てのない空を
飛んでゆける
悲しくはない
振り向かない力が
光と ....
離れまたたく
雨に近いもの
光を結び
ひとつ雨になる
まるい夜が
まるい夜をすぎてゆく
音は森の上に残り
枝を伝い 土を照らす
点かなくなった灯の下で
握 ....
沖の青が濃くなる辺りで
ポカリと浮かんだ独り言が
夜更けの時計を探している
月は夢と同位置で微笑みながら
人知れず密かな指切りを交わす
波のない水面に映る
過去と{ルビ瞬間=いま} ....
透明な硝子の向こうで
君が生み出した
緩やかな憂鬱
透明な硝子に当たって
白く砕けた
ちかちかと世界が明転するのは
まばたきのせいだろうか
睫毛が捕まえた蝶のせいだろうか
プレ ....
自ら逝く勇気など始めから無いもので。
だったらいっそ。
あなたが逝ってくれねーかなぁと思ったりして。
でももし逝かれたらすごい勢いで崩れるの分ってるし。
忘れた泣き方なんて思い出しておもい ....
少年は遠い空を眺めて
何を書きたいのか
何を描きたいのか
考えていた
空は高いまま
少年は青年になり
広い空を見渡して
何を書くべきなのか
何を描くべきなのか
決めていた
空は ....
「あ」と声に出そうとして
うまく発音できなかったそんな目覚め
冬はもうすぐ終わるというのに
まだ春は土の中であたたかな夢を見ている
喉が掠れて泣いているみたいだ
裏返って仕方ない。
空はな ....
こつんこつんと人にぶつかりながら
下町の商店街を通り抜け
神社の境内に入ると空気が変わる
人々から顔の険がとれ
階段をおとなしく上り
順番を待ち賽銭を投げる
大人は子供の前では見せた事のな ....
{引用=
一、そそり上手
謎めいた言葉の
ひとつや
ふたつ
もどかしい仕草の
みっつや
よっつ
わたしは恋に不慣れなもので
五万の毒を盛るかも
知れませ ....
信号機が故障したので
シマウマがやってきて
代わりの信号になった
白と黒しかない縞模様で
シマウマは精一杯頑張った
多少の混乱はあったものの
車も歩行者もそれに従った
強いものは ....
あなたの その 透き通った瞳の奥の
けっして揺らぐことのない 美しい信念の
まっさらで 汚れのない 鏡のような水面に
しずかに落ちる 一滴のしずくから 広がってゆく
ていねいに 塗り重ねられた ....
風が強いから
真っ白な兎のロングマフラァを
首の後ろで
きゅっと結びましたわ
まるでわたくし
絞殺されたがっているみたいだった
兎に殺されるんだわと思うと
それもいいかしらと笑いましたの
清らかな冬の夜の大空
月があくびして
星がウィンクして
犬は遠吠え
猫は狂い鳴き
どうでもいいけど
ちっぽけな世界を守るため
僕達は額に汗して
下げたくもな ....
まみれてしまった
人知れず汚れていく生き様
心凍えてもう戻れないと
君は言うけれど
凍える世界にいればこそ
私たちの吐息は白く輝く
だから大丈夫
まだ君は
歩いてゆける
いつの間にかキミが心から消えそうになっていたので
輪郭を鉛筆でなぞって練りゴムで影をつけました
光が差し込んでいる風景が描きたくて
キミがあの時ずっと居た処に灯りはなかったけれどね
....
夜がほの蒼いのは
雪が舞っているから
すこし窓を開けて
吐息が白く夜気に放たれ
雪と交わるのをながめる
手を延ばせば舞いおりて
けれどその冷たさは
触れるまもなく掌に溶け ....
どこにでもありそうな道端に
どこにでもありそうな大きな石が一つ
座っていた
ある人は
何の関心も示さずに通り過ぎていった
ある人は
怒りを感じて棒で叩いた
ある人は
その美 ....
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